天啓の雲

古寂湧水 こじゃくゆうすい

文字の大きさ
13 / 303

K国に盗まれた対馬の仏像は交渉がまとまり、対馬に返却されました。

しおりを挟む
321
[人員は足りているかな、不足ならどんどん応援を頼むぞ。]すず[お線香は大きなビジネスになりますので専門チームができるように手配するべきです。][それじゃあまた福丸から頼むかな。]
[サスケさん、隣地の買い付けをお願いします。次郎長さんは遠州さんと相談して刀の撤去と茶道具の展示をお願いします。]

ゴン太とユリがソワソワして落ち着かない。大事なお客さんが来るのを予知しているようである。高級車から老紳士と30代の女性が降り立った。入口で名前を告げ社長に会いに来た旨を話した。[あ、こんにちはお久しぶりです。まあ、どうぞ奥にお入りください、会長とお嬢さんが来られるだろうとは予想しておりました。][お父さん、ワンちゃんに彼女ができたみたいよ。][こちらもかしこそうだ。]

[仏像の件ですね。会長とお嬢さんでしたら素直に従いますよ。][はっはっはっ、話が早いな、大統領の反省文とわび状は無理だけど犯人と置いていたお寺からは取るよ。]
322
[ただ賠償金がしわいんだわな。][ふ、ふ、ふ、会長の目論見に添うように努力しますんでおっしゃってください。]

[K国は日本以上にメンツにこだわる。その関係で基準以上に払うことは負けを意味するので、まあ、しみったれた額でしか出ないということだな賠償金が5,000万円にあなたへの手数料が2,000万円というところだ。これでやってくれないか。][私は無償でやっていますんでいりませんよ。][私が払うのではなく向こうが払うというのでもらっておきなさい。]

[では会長の顔をつぶすわけにはいきませんので、そのようにさせていただきます。これは物の売り買いではありませんので書類と賠償金は先に送ってください。いただけるのでしたら私にもその時にお願いします。確認したらすぐに仏像は戻ると思います。][は・は・はこれで交渉は終了だ。仏像の次はどんなことで驚かしてくれるのかな。]
323
[まあ、その前に抹茶をどうぞ。これは小堀遠州が自ら立てたものです。][小政、遠州さんを呼んでくれるかな。][ヘィ。][小堀遠州と申します。お見知りおきを願います。][遠州さんと言ったら、茶道界の大スターだ読んだら来てくれるかな。][はい、どこでも伺います。][お茶碗を2個、娘の分と見立ててくれるかな。][はい、すぐにお持ちいたします。]

娘、[ずいぶんおいしくて初めての抹茶です。これはどこのものですか。][はい、分身はここにもいますが、清水次郎長が明日香国で造っているものです。][ここに次郎長がいるのか。][はい、さっきいたのは子分の小政です。][はっはっはっ、これはおもしろいな。]

遠州が2点を見立てて持ってきた。呉器に古井戸である。[お嬢さんには古井戸を見たてました。][呉器も古井戸も名物クラスだなこれはいいものだ。][はい、私もそう思います。][支払いは税込みで1憶1千万円でいいのかな。]
324
[会長、よくお分かりで。][な~に四越で買ったのを思い出して言ったまでだ。すぐに支払うので名義と口座を教えてくれるかな。][すずさ~ん、ネット支払いなので、すぐに来て。][ありがとうございました。][1週間で書類と金を送るんで、あとはよろしくな。]ゴン太とユリの頭をなでながら帰っていった。

明日香王国には王様にサスケ、すずの1セットが王宮にいるので玉蘭市の各門主とのお線香の交渉はすんなりと進んでいる。現次元に接続することが近いと聞くと、興味津々で盛り上がってきている。

応援要員は調理人が2人、福丸からの線香の販売と事務員の1チーム8人を選抜した。分身して給料が1.8倍になるのですごい人気である。ちょうど1週間後に書類と金銭が対馬に届いたと連絡があった。こちらにも振り込まれたのを確認したので、仏像を戻すことにした。それと対馬の仏像のもう一体の指の欠損を、超能力で元に戻したので仏像が到着後に住職と檀家代表が挨拶に来た。
325
[どうも何から何までお世話をいただきまして、感謝のしようがありません。]信徒から渡されたという海産物の加工品をたくさん持ってきた。[これはこれは遠路重い荷物をありがとございます。すべて仏様のご意志でやったことです。]ワンワンワンワン。ゴン太とユリは得意げに胸を張って答えている。住職と檀家代表は犬達にも深々と頭を下げた。

[サスケさんまた送っていってくれますか。][はい、わかりました。][では失礼します。]隣の敷地の買収が完了したので、周りを柵で囲うとともに犬がいつでも遊びに行けるようにした。新しく入った調理の2人と茶畑からの梱包要員2人の若い衆が、小堀遠州の指導で野菜作りをしている。その周りを犬2匹が駆け回っているのどかな風景を、王様と志野が目を細めて眺めていた。

玉蘭市では宗祖の写真やビデオの撮影を終えるとともに、各宗派ごとに2・3種類のお線香を集めた。これは江戸時代に主に大本山で使用されていた本物である。
326
チベットのお香だけは現次元でサンダルウッドなどの原料が買い占められて高騰し、お線香自体も質が悪くなり価格も上がっている。したがって質が良く値段も手頃なものを揃えれば世界や日本のチベット香ファンにアピールできる。200年前の大寺のガンデン寺やタシルンポ寺にサキャ寺や他の良品を作っているお寺や民間から30種類を集めた。

目玉として法隆寺に収納保管されている有名な伽羅の蘭奢待を分身し、粉やお線香にして販売することにした。それとともに香道で使用されていて、現在材料集めが困難な昔のインド各地の伽羅を集め手頃な価格で販売するようにした。

蘭奢待はご存じ天下第一の名香であるが、それが無料で他の伽羅とともに試香もできるようにした。全体的にかなりのインパクトになるので販路をいろいろと考えるまでもない感じである。お香要員とお線香とお香各種類に宗祖の写真にビデオが送られてきた。
327
お香スタッフは3人が事務室ですずと一緒に働き、4人が仏像が居た3階の倉庫で販売にあたる。陳列が終わって準備万端である。

[それではマスコミに各宗祖の写真とビデオに説明文とお線香の写真、特に蘭奢待製品と中世期のインド各地の香道で使用される伽羅の説明文と写真を詳しく載せたものを送ります。問い合わせがたくさん来るので専門スタッフとともに、すずさんのスタッフも協力をしてください。次郎長さんは大勢の来場者だと思うので総指揮をお願いします。]

電話がたくさんなりだした。事務室の9本で対応をしているが引っ切り無し状態である。ただ、送った内容の通りだと言ってすぐ切ってしまうので本数はかなりこなしている。問題は知らせていない各宗派の小寺院からの問い合わせである。これはお線香の販売もあるので、ポイントをまとめて要領よくやらなければならない。早くも近辺のお客様が情報を聞きつけて来店してきた。
328
チベットのお香マニアは宗派に関係がなく、お香そのものの品定めをするので試験管を並べるように3分の1に短くしたお線香を5本立てて、お手軽に試香できるようになっている。

マスコミはすぐに飛んできた。日蓮さんや弘法大師空海が復活しているのはビッグニュースなのである。店内に入ってお線香や伽羅沈香製品を撮影させろと言ってきたが、早い時間でまだお客さんが多くないので許可を出した。

蘭奢待が何でここにあるのか、本物かなどの説明にあたった王様は[すべて本物で仏様のご意志で分身しました。]それからなんで各宗派のお線香がここにあるのかという問いには[各宗祖のビデオメッセージにあるとおりに、現在のお線香はケミカルまみれの質の悪いものです。正当なものを使うようにということです。]
いろいろなお寺からお線香の試供品を送ってくれと言ってきたが、店内では試香できるようになっているが試供品は送っていないので、購入されて試すようにと徹底をしている。
329
わざわざ売り上げにならないことに手間暇をかける必要はないのである。タダで蘭奢待が聞香できるということがSNSで流れてから一気に来店者が増えてきた。そりゃあそうだろう正倉院の秘宝として祀られてきたものが、無料で試せるのである。価格も手頃とあって粉末とお線香の蘭奢待はよく売れている。

そして宗門の熱心な信者は宗祖のビデオメッセージを見て正式な調合のお線香をまとめて買っていく。大寺の担当者が来て聞香後にまとめ買いするので卸価格で仕入れられないかと言ってきた。3階の一般のお客さんがいるところでは話せないので1階の応接コーナーで商談を始めた。

どんなに大量でも基準の6掛けで対応した。いきなり数千箱のオーダーの時にも前払いで数日後の発送で基準通りに収まった。まさにてんやわんや状態である。日本香は海外への卸もするが、チベット香はやっていない。なぜならネパールの偽物専門業者がラベルだけまねた粗悪品を作っているからである。
330
王様に取材をさせてくれとの要望が多いので、まとめてインタビューに応じることにした。


[つい先日の対馬の件です、めでたく決着しましたが仏像たちはどうして貴方のところにやってきたのですか。][仏像の意思というよりも、天の意思だと思います。][普通ではない世界ですが、事前に仏像が来るというのがわかっていたのですか。][夢の中にあらわれて倉庫をかたずけておけ、ということでしたのでそのようにしたのです。]

[各宗派の宗祖様のビデオメッセージがありましたが、具体的にどこにおられるのですか。][異次元で小さな寺を構えています。][行ったことがありますか。][ございます。すみませんまだ聞きたいことがあると思うのですが、仕事がご覧のように立て込んでいますので、この辺で失礼をさせていただきます。]と言ってさっさと中に引っ込んでしまった。興味のあることはいっぺんではなく小出しにした方が続くのである。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

鎮魂の絵師 ー長喜と写楽ー

霞花怜
歴史・時代
【第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞】 絵師・栄松斎長喜は、蔦屋重三郎が営む耕書堂に居住する絵師だ。ある春の日に、斎藤十郎兵衛と名乗る男が連れてきた「喜乃」という名の少女とで出会う。五歳の娘とは思えぬ美貌を持ちながら、周囲の人間に異常な敵愾心を抱く喜乃に興味を引かれる。耕書堂に居住で丁稚を始めた喜乃に懐かれ、共に過ごすようになる。長喜の真似をして絵を描き始めた喜乃に、自分の師匠である鳥山石燕を紹介する長喜。石燕の暮らす吾柳庵には、二人の妖怪が居住し、石燕の世話をしていた。妖怪とも仲良くなり、石燕の指導の下、絵の才覚を現していく喜乃。「絵師にはしてやれねぇ」という蔦重の真意がわからぬまま、喜乃を見守り続ける。ある日、喜乃にずっとついて回る黒い影に気が付いて、嫌な予感を覚える長喜。どう考えても訳ありな身の上である喜乃を気に掛ける長喜に「深入りするな」と忠言する京伝。様々な人々に囲まれながらも、どこか独りぼっちな喜乃を長喜は放っておけなかった。娘を育てるような気持で喜乃に接する長喜だが、師匠の石燕もまた、孫に接するように喜乃に接する。そんなある日、石燕から「俺の似絵を描いてくれ」と頼まれる。長喜が書いた似絵は、魂を冥府に誘う道標になる。それを知る石燕からの依頼であった。 【カクヨム・小説家になろう・アルファポリスに同作品掲載中】 ※各話の最後に小噺を載せているのはアルファポリスさんだけです。(カクヨムは第1章だけ載ってますが需要ないのでやめました)

アブナイお殿様-月野家江戸屋敷騒動顛末-(R15版)

三矢由巳
歴史・時代
時は江戸、老中水野忠邦が失脚した頃のこと。 佳穂(かほ)は江戸の望月藩月野家上屋敷の奥方様に仕える中臈。 幼い頃に会った千代という少女に憧れ、奥での一生奉公を望んでいた。 ところが、若殿様が急死し事態は一変、分家から養子に入った慶温(よしはる)こと又四郎に侍ることに。 又四郎はずっと前にも会ったことがあると言うが、佳穂には心当たりがない。 海外の事情や英吉利語を教える又四郎に翻弄されるも、惹かれていく佳穂。 一方、二人の周辺では次々に不可解な事件が起きる。 事件の真相を追うのは又四郎や屋敷の人々、そしてスタンダードプードルのシロ。 果たして、佳穂は又四郎と結ばれるのか。 シロの鼻が真実を追い詰める! 別サイトで発表した作品のR15版です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

別れし夫婦の御定書(おさだめがき)

佐倉 蘭
歴史・時代
★第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★ 嫡男を産めぬがゆえに、姑の策略で南町奉行所の例繰方与力・進藤 又十蔵と離縁させられた与岐(よき)。 離縁後、生家の父の猛反対を押し切って生まれ育った八丁堀の組屋敷を出ると、小伝馬町の仕舞屋に居を定めて一人暮らしを始めた。 月日は流れ、姑の思惑どおり後妻が嫡男を産み、婚家に置いてきた娘は二人とも無事与力の御家に嫁いだ。 おのれに起こったことは綺麗さっぱり水に流した与岐は、今では女だてらに離縁を望む町家の女房たちの代わりに亭主どもから去り状(三行半)をもぎ取るなどをする「公事師(くじし)」の生業(なりわい)をして生計を立てていた。 されどもある日突然、与岐の仕舞屋にとっくの昔に離縁したはずの元夫・又十蔵が転がり込んできて—— ※「今宵は遣らずの雨」「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」「大江戸の番人 〜吉原髪切り捕物帖〜」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...