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act10:手にしたものは幸か不幸か
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チケットを探し始めて、数十分が過ぎた。が、未だチケットらしき物は見つからず、ヴェルディアナとルチアーノは一時休戦とソファに座り込んでいた。
「こんなに探してもないなんて……」
「メイド長の思いつきにも困ったものです」
ルチアーノは懐中時計に目をやる。そろそろ仕事に戻らなくては、エリアスに怒られてしまいそうだ。
「そういえば、イヴァンくんとルキアちゃんが付いていないけど、シャナイアちゃんは大丈夫なの?」
「あぁ、シャナイア様なら大丈夫ですよ。知り合いの頼もしい方々とお会いになっているので」
「頼もしい方々?」
今日来客があるとバジルは言っていたかと首を傾げるヴェルディアナ。そんなヴェルディアナの様子にルチアーノは「後で紹介されるはずですよ」と返した。
「さて、再開しましょうか」
「え、えぇ」
立ち上がるルチアーノに連られて、ヴェルディアナもソファから立ち上がる。雰囲気から察するにあまり話したくない話題のようだ。
「お待たせしてしまってすまない」
不意に部屋のドアが開く。声からして、相手はエリアスだ。ヴェルディアナは慌てて、ドアの死角へ回るとキョロキョロとしているルチアーノをそこへ引き込んだ。
「いえ、こちらこそ突然お邪魔してしまって申し訳ないです」
死角からコッソリと顔を出すヴェルディアナ。すると、そこにはエリアスと見た事のない男性2人組みが部屋に入って来る所だった。
「ルチアーノくん、あのお2人は……?」
「さっき言っていた方々です。あちらにいらっしゃる方が賢者のアンリ様、控えている方は弟子のニコラスさんです」
ルチアーノがヴェルディアナの耳元で囁く。なるほど、それでどことなく貴族っぽいのか。
「彼女は大丈夫ですか?この時期になると師匠が心配でいてもたってもいられないという感じで」
「仕方ないでしょう。大事な娘なんですから」
「娘……?」
アンリの言葉にヴェルディアナは小さく呟く。ニコラスの発言から導かれる人物は1人しかいない。しかし、彼女には父親がいないと聞いた覚えがある。ヴェルディアナはそろりと傍にいるルチアーノに目をやる。
「アンリ様はあいつ……じゃなく、彼女の師匠なんです。と言っても、彼女の錬金術は独学のものでアンリ様から教えてもらったものではないのですが」
「愛弟子の比喩的なものだと思ってもらえれば」とルチアーノが付け足す。その説明で納得のいったヴェルディアナはルチアーノから目を離すと、3人の方に向き直った。
「親馬鹿も大概にしてくださいよ。貴方だって、論文まとめないといけないのですから」
控えているニコラスは呆れ気味に言った。彼も弟子であるなら、ルキアの兄弟子という事になるのだろうか。
「ルキアなら大丈夫です。今は覇気がありませんが、論文も後少しで終わると」
エリアスの返しにアンリは少しばかり、口元を緩ませる。娘の成長を喜ぶ父親のような、優しい笑みにヴェルディアナは本当に心配していたのだなと感じる。
「それはよかった。では、顔を合わせたらすぐにおいとまさせていただきます」
「ニック」
「約束しましたよね?顔を見たら、すぐに帰るって」
「しかし……」
アンリが粘ろうとするも、ニコラスは黒笑を浮かべ、腕を組んでいる。どう言われようが、首を縦には振ってくれそうにないニコラスにアンリは捨てられた子犬のような目で懇願し続ける。力関係が逆転した様にエリアスは苦笑いを浮かべるしかない。
________________
「エリアス~、連れて来たよ」
そこへやって来たのは、エヴァルトとエヴァルトに抱きかかえられているルキアだった。エヴァルト、今日は大活躍だな。
「あぁ、すまない」
「ん?また駄々こねてんの、アンリ」
ルキアをソファに下ろしながら、エヴァルトが言った。どうやら、ここは面識があるらしい。
「ニコラス……だっけ?あんたも大変だな」
「堕天使程ではありませんよ」
「……何でこうも人に仕えてる奴って性格悪いんだろう」
気のせいか、ルチアーノがエヴァルトを睨んでいるような気配がする。その殺気混じりな視線を注いでいては、エヴァルトに気付かれてしまうとヴェルディアナは静かにルチアーノの目を手で覆う。
「ルキア、貴方また徹夜して……。ちゃんと寝なさいと前にも言ったでしょう」
ルキアに近寄ったニコラスは、ルキアのくまのある目にそっと指を這わす。
「ルキア」
「………ん」
ニコラスの声にルキアの目がゆっくりと開く。それに合わせ、ニコラスはルキアから距離を取る。
「……ここ、エリアスの?」
「おはようございます、ルキア」
焦点の合わない目がアンリに向けられる。ルキアは数秒キョトンとした後、「アンリ?」と言った。すると、待ってましたとばかりにアンリがルキアに抱きつく。
「師匠、エリアスさんの前で愛弟子襲わないでください」
「襲ってないです。抱きついているだけです」
ギューっとぬいぐるみでも抱きしめるかのような可愛らしい仕草に、これで賢者とは嘘ではないのかと頬を抓る。何なんだ、この不思議っ子は。
「ルチアーノくん、今の内に」
「はい」
アンリとルキアに目がいっている事を確認し、2人は素早く死角から飛び出すと、音を立てずにドアから脱出した。仄暗い事をしていた時のスキルが今役に立つとは。
「はぁ~……。エリアスさんに見つからなくて、よかった」
「結局、チケットも見つかりませんでしたけどね」
ルチアーノに言われ、ヴェルディアナはそうだったとがっくりと膝を落とす。では、チケットは一体どこに?
「……!ルチアーノくん、こっち」
「え、うわっ!?」
再びドアの死角へと隠れるヴェルディアナ。それと同時にドアが開き、中から少し疲れた表情のエリアスが出てくる。中にいる3人はまだ話し中のようだ。
「……あ」
去っていくエリアスの背中に視線を向け、そこではたと気付く。エリアスの背中に1枚の封筒が引っ付いている事に。もしかして、アレがチケットでは……。
「……あ」
少し遅れて、隣から声が漏れる。どうやら、ルチアーノも気付いたらしい。ヴェルディアナとルチアーノは互いの顔を見やると、抜けがけはなしだとばかりに走り出した。
「くっ……!走りにくい!!」
シックなメイド服はエマニュエルの趣味らしく、ロングスカートだ。走る度に長い裾を踏みそうになり、なかなか上手く走れない。一方のルチアーノはさっさとエリアスへと迫っていく。
「エリアスさん!!」
そうはさせまいとヴェルディアナがエリアスの名を呼ぶ。
「げっ……!?」
「ん?」
振り返るエリアス。ルチアーノは軽く舌打ちをすると、何事もないとばかりに足を止めた。妙な距離感にエリアスは首を傾げながら、ルチアーノを見ている。
「し、執事長……」
「ルチアーノ、どうかしたのか?」
「ヴェルディアナの声がした気がしたが」。エリアスの言葉にルチアーノは慌てて辺りを見渡す。
「っと……!」
素早くエリアスの背後に回ったヴェルディアナは、封筒を難なくゲットする。
「ヴェルディアナ?」
「すいません、肩にゴミがついていたので」
封筒を後ろ手に隠し、エリアスに微笑むヴェルディアナ。エリアスの肩越しに悔しそうな表情のルチアーノが見える。普段冷静なルチアーノだが、こういう所を見ると年相応であるなとヴェルディアナは思う。
「そうだ、イヴァンとフェルディナントを見ていないか?」
「そいつら……いえ、彼らならその辺でかけっこしていると思いますよ」
「亜人種はそういう時期があるので」。どんな時期だ、それは。
「捕まえるの、手伝いますよ」
「悪いな。ヴェルディアナも見かけたら、教えてくれ」
「は、はい!」
エリアスとルチアーノはお騒がせ2人組を捕まえるべく、その場を後にした。残されたヴェルディアナは早速封筒の中身を確認する。すると、そこにはクルージングのペアチケットがちゃんと入っていた。
「や……やったーーー!!!」
嬉しさのあまり、声を上げてしまうヴェルディアナ。エリアスとクルージングの夢が叶うなど、夢にも思っていなかった。
「はっ……!エマニュエルさんに報告しておかないと」
あの人の事だ。今もせっせとハズレの箱を置きまくっているかもしれない。
「エマニュエルさ~ん!!」
足取り軽く、ヴェルディアナはエマニュエルを探しに走り出す。かくして、エマニュエルの暇つぶし企画・デート争奪戦は幕をおろした。
「こんなに探してもないなんて……」
「メイド長の思いつきにも困ったものです」
ルチアーノは懐中時計に目をやる。そろそろ仕事に戻らなくては、エリアスに怒られてしまいそうだ。
「そういえば、イヴァンくんとルキアちゃんが付いていないけど、シャナイアちゃんは大丈夫なの?」
「あぁ、シャナイア様なら大丈夫ですよ。知り合いの頼もしい方々とお会いになっているので」
「頼もしい方々?」
今日来客があるとバジルは言っていたかと首を傾げるヴェルディアナ。そんなヴェルディアナの様子にルチアーノは「後で紹介されるはずですよ」と返した。
「さて、再開しましょうか」
「え、えぇ」
立ち上がるルチアーノに連られて、ヴェルディアナもソファから立ち上がる。雰囲気から察するにあまり話したくない話題のようだ。
「お待たせしてしまってすまない」
不意に部屋のドアが開く。声からして、相手はエリアスだ。ヴェルディアナは慌てて、ドアの死角へ回るとキョロキョロとしているルチアーノをそこへ引き込んだ。
「いえ、こちらこそ突然お邪魔してしまって申し訳ないです」
死角からコッソリと顔を出すヴェルディアナ。すると、そこにはエリアスと見た事のない男性2人組みが部屋に入って来る所だった。
「ルチアーノくん、あのお2人は……?」
「さっき言っていた方々です。あちらにいらっしゃる方が賢者のアンリ様、控えている方は弟子のニコラスさんです」
ルチアーノがヴェルディアナの耳元で囁く。なるほど、それでどことなく貴族っぽいのか。
「彼女は大丈夫ですか?この時期になると師匠が心配でいてもたってもいられないという感じで」
「仕方ないでしょう。大事な娘なんですから」
「娘……?」
アンリの言葉にヴェルディアナは小さく呟く。ニコラスの発言から導かれる人物は1人しかいない。しかし、彼女には父親がいないと聞いた覚えがある。ヴェルディアナはそろりと傍にいるルチアーノに目をやる。
「アンリ様はあいつ……じゃなく、彼女の師匠なんです。と言っても、彼女の錬金術は独学のものでアンリ様から教えてもらったものではないのですが」
「愛弟子の比喩的なものだと思ってもらえれば」とルチアーノが付け足す。その説明で納得のいったヴェルディアナはルチアーノから目を離すと、3人の方に向き直った。
「親馬鹿も大概にしてくださいよ。貴方だって、論文まとめないといけないのですから」
控えているニコラスは呆れ気味に言った。彼も弟子であるなら、ルキアの兄弟子という事になるのだろうか。
「ルキアなら大丈夫です。今は覇気がありませんが、論文も後少しで終わると」
エリアスの返しにアンリは少しばかり、口元を緩ませる。娘の成長を喜ぶ父親のような、優しい笑みにヴェルディアナは本当に心配していたのだなと感じる。
「それはよかった。では、顔を合わせたらすぐにおいとまさせていただきます」
「ニック」
「約束しましたよね?顔を見たら、すぐに帰るって」
「しかし……」
アンリが粘ろうとするも、ニコラスは黒笑を浮かべ、腕を組んでいる。どう言われようが、首を縦には振ってくれそうにないニコラスにアンリは捨てられた子犬のような目で懇願し続ける。力関係が逆転した様にエリアスは苦笑いを浮かべるしかない。
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「エリアス~、連れて来たよ」
そこへやって来たのは、エヴァルトとエヴァルトに抱きかかえられているルキアだった。エヴァルト、今日は大活躍だな。
「あぁ、すまない」
「ん?また駄々こねてんの、アンリ」
ルキアをソファに下ろしながら、エヴァルトが言った。どうやら、ここは面識があるらしい。
「ニコラス……だっけ?あんたも大変だな」
「堕天使程ではありませんよ」
「……何でこうも人に仕えてる奴って性格悪いんだろう」
気のせいか、ルチアーノがエヴァルトを睨んでいるような気配がする。その殺気混じりな視線を注いでいては、エヴァルトに気付かれてしまうとヴェルディアナは静かにルチアーノの目を手で覆う。
「ルキア、貴方また徹夜して……。ちゃんと寝なさいと前にも言ったでしょう」
ルキアに近寄ったニコラスは、ルキアのくまのある目にそっと指を這わす。
「ルキア」
「………ん」
ニコラスの声にルキアの目がゆっくりと開く。それに合わせ、ニコラスはルキアから距離を取る。
「……ここ、エリアスの?」
「おはようございます、ルキア」
焦点の合わない目がアンリに向けられる。ルキアは数秒キョトンとした後、「アンリ?」と言った。すると、待ってましたとばかりにアンリがルキアに抱きつく。
「師匠、エリアスさんの前で愛弟子襲わないでください」
「襲ってないです。抱きついているだけです」
ギューっとぬいぐるみでも抱きしめるかのような可愛らしい仕草に、これで賢者とは嘘ではないのかと頬を抓る。何なんだ、この不思議っ子は。
「ルチアーノくん、今の内に」
「はい」
アンリとルキアに目がいっている事を確認し、2人は素早く死角から飛び出すと、音を立てずにドアから脱出した。仄暗い事をしていた時のスキルが今役に立つとは。
「はぁ~……。エリアスさんに見つからなくて、よかった」
「結局、チケットも見つかりませんでしたけどね」
ルチアーノに言われ、ヴェルディアナはそうだったとがっくりと膝を落とす。では、チケットは一体どこに?
「……!ルチアーノくん、こっち」
「え、うわっ!?」
再びドアの死角へと隠れるヴェルディアナ。それと同時にドアが開き、中から少し疲れた表情のエリアスが出てくる。中にいる3人はまだ話し中のようだ。
「……あ」
去っていくエリアスの背中に視線を向け、そこではたと気付く。エリアスの背中に1枚の封筒が引っ付いている事に。もしかして、アレがチケットでは……。
「……あ」
少し遅れて、隣から声が漏れる。どうやら、ルチアーノも気付いたらしい。ヴェルディアナとルチアーノは互いの顔を見やると、抜けがけはなしだとばかりに走り出した。
「くっ……!走りにくい!!」
シックなメイド服はエマニュエルの趣味らしく、ロングスカートだ。走る度に長い裾を踏みそうになり、なかなか上手く走れない。一方のルチアーノはさっさとエリアスへと迫っていく。
「エリアスさん!!」
そうはさせまいとヴェルディアナがエリアスの名を呼ぶ。
「げっ……!?」
「ん?」
振り返るエリアス。ルチアーノは軽く舌打ちをすると、何事もないとばかりに足を止めた。妙な距離感にエリアスは首を傾げながら、ルチアーノを見ている。
「し、執事長……」
「ルチアーノ、どうかしたのか?」
「ヴェルディアナの声がした気がしたが」。エリアスの言葉にルチアーノは慌てて辺りを見渡す。
「っと……!」
素早くエリアスの背後に回ったヴェルディアナは、封筒を難なくゲットする。
「ヴェルディアナ?」
「すいません、肩にゴミがついていたので」
封筒を後ろ手に隠し、エリアスに微笑むヴェルディアナ。エリアスの肩越しに悔しそうな表情のルチアーノが見える。普段冷静なルチアーノだが、こういう所を見ると年相応であるなとヴェルディアナは思う。
「そうだ、イヴァンとフェルディナントを見ていないか?」
「そいつら……いえ、彼らならその辺でかけっこしていると思いますよ」
「亜人種はそういう時期があるので」。どんな時期だ、それは。
「捕まえるの、手伝いますよ」
「悪いな。ヴェルディアナも見かけたら、教えてくれ」
「は、はい!」
エリアスとルチアーノはお騒がせ2人組を捕まえるべく、その場を後にした。残されたヴェルディアナは早速封筒の中身を確認する。すると、そこにはクルージングのペアチケットがちゃんと入っていた。
「や……やったーーー!!!」
嬉しさのあまり、声を上げてしまうヴェルディアナ。エリアスとクルージングの夢が叶うなど、夢にも思っていなかった。
「はっ……!エマニュエルさんに報告しておかないと」
あの人の事だ。今もせっせとハズレの箱を置きまくっているかもしれない。
「エマニュエルさ~ん!!」
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