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第36回『ライトアップ 場所 胃もたれ』
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YouTubeで行った
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第36回『ライトアップ 場所 胃もたれ』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約1時間でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=y_ks358qrrY
↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/
~・~・~・~・~
今日は私の誕生日だった。
その一か月前、彼氏から夜は空いているかとデートのお誘いを受けた。
誕生日のことなど一言も言ってこなかったが、この日を指定した以上彼氏はサプライズのお祝いをするつもりなのだろう。
もっとも彼氏が本当に私の誕生日を忘れている可能性はある。
去年も一昨年もお祝いしてくれたので、私の誕生日がいつなのか知らないわけではない。
ただ最近仕事が忙しく疲れていた様子なので、彼氏が忘れている可能性は十分に高いのだ。
その場合は仕方ないし、私だっていい年なのだから今更誕生日をお祝いしてほしいという気持ちなどなかったが、やはり彼氏にはロマンティックな気遣いを期待してしまうのが女というものだ。
何にせよ、サプライズのつもりなのかもしれないので私から言い出すのはやめようと心に決めていた。
夜7時。
期待と不安を胸にちょっと気合の入ったおしゃれをした私が待ち合わせ場所に立っていると、雑踏の中から彼氏が現れた。
彼氏は仕事帰りでスーツ姿だった。
ネクタイも普段から締めているものだ。
そして笑顔の裏にはまだ疲れが見えた。
肌の色がよくなく、体の線も細くなったように見える。
これなら私の誕生日に気が回らなかったとしても不思議ではない。
予定を決めるのが早かっただけで今日は普通のデートなのかな、と私は思った。
だが彼氏が私の手を引き案内してくれたのは高層ビルの上階にあるレストランだった。
壁いっぱいに広がる窓にはさっきまで私たちがあくせくと働いていた街が一望でき、いわゆる夜景のきれいなレストランというやつだった。
こんなレストランは初めてなので私があっけに取られているのもかまわずに、彼氏が店員に一言伝えると即座に窓際のテーブルへと案内された。
どうやら予約もしていたらしい。
私の中の天秤は彼氏のサプライズへと大きく傾いた。
これは上手にびっくりしてあげなきゃいけないな、と今度はプレッシャーによる緊張感の方が私を襲い始めてくるくらいだった。
そんな私の心配をよそに次々と運ばれる料理やワインはとてもおいしかった。
だが、どの料理が運ばれてきても彼氏はお箸をあまりつけず──もっとも洋食なのでフォークとナイフだったが──そわそわしたり窓の外をちらちら見るばかりだった。
誕生日のことを言い出さずにまごまごしているだけなので、言いやすいように私の方から今日のデートの理由などを聞いた方がいいかなと思った矢先、彼氏は腕時計で時間を確認すると突如口を開いた。
「忙しいのに今日は来てくれてありがとう。」
「いいのよ。忙しいのはあなたの方でしょ。」
「今日、この日に、この場所に、君を呼んだのはほかでもなくて……。」
どうやらサプライズが始まったらしい。
私はなにも気付いてないふりをしながら、食事をする手を止めた。
「それはずっと前から君に言いたいことがあって……。ただ、それは僕一人の力じゃとても言い出せそうになくて……。」
彼氏一人というのはどういう意味だろうと思ったとき、彼氏は私に窓の外を見るように促した。
そこには海外からの要人も迎えるような巨大なホテルが立っていて、いくつもの窓が並んでいた。
私がきれいな夜景ねと言って窓から彼氏に目を移すと、彼氏は目線を下に落として腕時計をさっと確認して指をパチンと鳴らした。
するとさっきまでライトアップされていたホテルの光がいっせいに消えた。
さらにライトアップだけでなくホテル全室の窓の灯りも消えたので、窓の外にはまるで巨大な長方形のブラックホールが現れたかのようだった。
彼氏がまさかここまでしたことに私は驚く演技をする必要などなかった。
「僕が君に言いたかったことは、これさ。」
するとホテルの、やや下の方の階の、やや右に位置する部屋の窓が灯った。
そう、灯ったのはこの一室だけだった。
失敗かなと思って彼氏を見ると、彼氏の目つきは真剣だった。
「あのホテルを俺の体だとすると、今灯りがついてるあの部屋。あの部屋らへんのところが最近痛いんだよ。」
胃もたれの報告だった。
~・~・~・~・~
~感想~
ライトアップでデートのおしゃれな演出を連想してそれを胃もたれにつなげる話にしました。
ただ直前で灯りで文字を描くのとライトアップが違うものだと気付き、無理やりホテルをライトアップさせました。
もともとお題の場所は痛い場所の説明の中で使う予定だったのですが、待ち合わせ場所として使ったのでどうでもよくなりました。
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第36回『ライトアップ 場所 胃もたれ』
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今日は私の誕生日だった。
その一か月前、彼氏から夜は空いているかとデートのお誘いを受けた。
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もっとも彼氏が本当に私の誕生日を忘れている可能性はある。
去年も一昨年もお祝いしてくれたので、私の誕生日がいつなのか知らないわけではない。
ただ最近仕事が忙しく疲れていた様子なので、彼氏が忘れている可能性は十分に高いのだ。
その場合は仕方ないし、私だっていい年なのだから今更誕生日をお祝いしてほしいという気持ちなどなかったが、やはり彼氏にはロマンティックな気遣いを期待してしまうのが女というものだ。
何にせよ、サプライズのつもりなのかもしれないので私から言い出すのはやめようと心に決めていた。
夜7時。
期待と不安を胸にちょっと気合の入ったおしゃれをした私が待ち合わせ場所に立っていると、雑踏の中から彼氏が現れた。
彼氏は仕事帰りでスーツ姿だった。
ネクタイも普段から締めているものだ。
そして笑顔の裏にはまだ疲れが見えた。
肌の色がよくなく、体の線も細くなったように見える。
これなら私の誕生日に気が回らなかったとしても不思議ではない。
予定を決めるのが早かっただけで今日は普通のデートなのかな、と私は思った。
だが彼氏が私の手を引き案内してくれたのは高層ビルの上階にあるレストランだった。
壁いっぱいに広がる窓にはさっきまで私たちがあくせくと働いていた街が一望でき、いわゆる夜景のきれいなレストランというやつだった。
こんなレストランは初めてなので私があっけに取られているのもかまわずに、彼氏が店員に一言伝えると即座に窓際のテーブルへと案内された。
どうやら予約もしていたらしい。
私の中の天秤は彼氏のサプライズへと大きく傾いた。
これは上手にびっくりしてあげなきゃいけないな、と今度はプレッシャーによる緊張感の方が私を襲い始めてくるくらいだった。
そんな私の心配をよそに次々と運ばれる料理やワインはとてもおいしかった。
だが、どの料理が運ばれてきても彼氏はお箸をあまりつけず──もっとも洋食なのでフォークとナイフだったが──そわそわしたり窓の外をちらちら見るばかりだった。
誕生日のことを言い出さずにまごまごしているだけなので、言いやすいように私の方から今日のデートの理由などを聞いた方がいいかなと思った矢先、彼氏は腕時計で時間を確認すると突如口を開いた。
「忙しいのに今日は来てくれてありがとう。」
「いいのよ。忙しいのはあなたの方でしょ。」
「今日、この日に、この場所に、君を呼んだのはほかでもなくて……。」
どうやらサプライズが始まったらしい。
私はなにも気付いてないふりをしながら、食事をする手を止めた。
「それはずっと前から君に言いたいことがあって……。ただ、それは僕一人の力じゃとても言い出せそうになくて……。」
彼氏一人というのはどういう意味だろうと思ったとき、彼氏は私に窓の外を見るように促した。
そこには海外からの要人も迎えるような巨大なホテルが立っていて、いくつもの窓が並んでいた。
私がきれいな夜景ねと言って窓から彼氏に目を移すと、彼氏は目線を下に落として腕時計をさっと確認して指をパチンと鳴らした。
するとさっきまでライトアップされていたホテルの光がいっせいに消えた。
さらにライトアップだけでなくホテル全室の窓の灯りも消えたので、窓の外にはまるで巨大な長方形のブラックホールが現れたかのようだった。
彼氏がまさかここまでしたことに私は驚く演技をする必要などなかった。
「僕が君に言いたかったことは、これさ。」
するとホテルの、やや下の方の階の、やや右に位置する部屋の窓が灯った。
そう、灯ったのはこの一室だけだった。
失敗かなと思って彼氏を見ると、彼氏の目つきは真剣だった。
「あのホテルを俺の体だとすると、今灯りがついてるあの部屋。あの部屋らへんのところが最近痛いんだよ。」
胃もたれの報告だった。
~・~・~・~・~
~感想~
ライトアップでデートのおしゃれな演出を連想してそれを胃もたれにつなげる話にしました。
ただ直前で灯りで文字を描くのとライトアップが違うものだと気付き、無理やりホテルをライトアップさせました。
もともとお題の場所は痛い場所の説明の中で使う予定だったのですが、待ち合わせ場所として使ったのでどうでもよくなりました。
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