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第95回『地下空間 世論調査 コシヒカリ』
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YouTubeで行った
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第95回『地下空間 世論調査 コシヒカリ』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約45分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=kiMkdjMvdSs
↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/
~・~・~・~・~
ごくり。
男はつばを飲み込んだ。
彼が握っているのはちびた鉛筆。
見つめているのは小さな紙。
どのお米が好きかを問う世論調査の紙だ。
コシヒカリ、ひとめぼれ、ヒノヒカリ、あきたこまち……。
銘柄を思い出しているだけでよだれが止まらない。
すると横から男の友人が肩を叩いた。
「よっ。なんて書くか決まったかい。」
男はあわてて体を伏せて紙を隠した。
「ば、ばかやろうっ。のぞき見しようとしてんじゃねえよっ。」
男のあわてる様子とはうらはらに、友人は冷ややかだった。
「悪かったよ。でもこんな通りの真ん中で堂々と見ているお前さんも悪いんだぜ。」
だが通りと言っても労働の開始時間でも終了時間でもないので、通りを歩く人はほとんどいなかった。
だから男も安心しきって紙を見ていたのだ。
「ちっ。で、お前はもう書いたのか?」
男は世論調査の紙を鉛筆の先で叩いた。
「いや、まだだ。二つ三つに候補は絞ってるんだけどな。お前は?」
「まだ全然決まってない。コシヒカリはもちろん大好きだが、ひとめぼれも捨てがたい。ていうか今もちろんなんて言ったらもち米まで気になってきた。」
「大丈夫かよ。提出は今週の日曜日だぜ。」
男は鉛筆を持った手で頭を掻いた。
「わかってるよ。そうだ。お前候補絞ってんだろ。それだけ教えてくれよ。」
「やだよ。」
友人はかぶりを振った。
しかし男はなおも食い下がり、横目でちらと周囲に人がいないことを素早く確認すると、友人に顔を近づけて小声で言った。
「俺はお前が候補に選んだものの中から必ず書く。」
「なんだと?」
「どうせ俺はこれだけ迷っている口だ。お前の候補でも文句はねえ。」
「…………。」
「ドンピシャだったらお前に損はねえだろう?」
友人は男から顔を離した。
男は一瞬断られるのかと思ったが、友人が顔を離したのは男の目を見るためだった。
男がじっと友人の目を見つめ返すと、友人も男の本気を見たらしかった。
友人は男の胸倉をつかんで自分の方に寄せた。
「コシヒカリ。」
小声でそう言い残すと、友人はポケットに手を突っ込みその場を去っていった。
見ていないことを知りながら男は友人の背中に向かって軽く手を振った。
手を下ろしたときにちょうど消灯時間となりガシャンという音とともに辺りの灯りが消えると、男は小走りで家路を急いだ。
日曜日の夜、集計結果が出た。
厳正なるアンケートの結果一位は見事コシヒカリとなった。
よって地下空間の労働者に配給される今年の米はコシヒカリに決定された。
「よし、大量に用意しておかなくてはな。」
「ああ。あいつらは米さえ食わせておけば黙って俺たちのために働き続けてくれるから本当に便利だ。」
「もう地下の生活に根付いてるんだよ。」
支配者たちは集計結果を茶飲み話にしながら、日向ぼっこをしていた。
~・~・~・~・~
~感想~
米の世論調査というバカバカしさと地下空間の労働者のディストピアを混ぜてみました。
オチは決まっていたので、人にいない通りや消灯される通りなど、少しずつ地下空間を暗示する描写を入れていくことが出来ました。
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第95回『地下空間 世論調査 コシヒカリ』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約45分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=kiMkdjMvdSs
↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
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~・~・~・~・~
ごくり。
男はつばを飲み込んだ。
彼が握っているのはちびた鉛筆。
見つめているのは小さな紙。
どのお米が好きかを問う世論調査の紙だ。
コシヒカリ、ひとめぼれ、ヒノヒカリ、あきたこまち……。
銘柄を思い出しているだけでよだれが止まらない。
すると横から男の友人が肩を叩いた。
「よっ。なんて書くか決まったかい。」
男はあわてて体を伏せて紙を隠した。
「ば、ばかやろうっ。のぞき見しようとしてんじゃねえよっ。」
男のあわてる様子とはうらはらに、友人は冷ややかだった。
「悪かったよ。でもこんな通りの真ん中で堂々と見ているお前さんも悪いんだぜ。」
だが通りと言っても労働の開始時間でも終了時間でもないので、通りを歩く人はほとんどいなかった。
だから男も安心しきって紙を見ていたのだ。
「ちっ。で、お前はもう書いたのか?」
男は世論調査の紙を鉛筆の先で叩いた。
「いや、まだだ。二つ三つに候補は絞ってるんだけどな。お前は?」
「まだ全然決まってない。コシヒカリはもちろん大好きだが、ひとめぼれも捨てがたい。ていうか今もちろんなんて言ったらもち米まで気になってきた。」
「大丈夫かよ。提出は今週の日曜日だぜ。」
男は鉛筆を持った手で頭を掻いた。
「わかってるよ。そうだ。お前候補絞ってんだろ。それだけ教えてくれよ。」
「やだよ。」
友人はかぶりを振った。
しかし男はなおも食い下がり、横目でちらと周囲に人がいないことを素早く確認すると、友人に顔を近づけて小声で言った。
「俺はお前が候補に選んだものの中から必ず書く。」
「なんだと?」
「どうせ俺はこれだけ迷っている口だ。お前の候補でも文句はねえ。」
「…………。」
「ドンピシャだったらお前に損はねえだろう?」
友人は男から顔を離した。
男は一瞬断られるのかと思ったが、友人が顔を離したのは男の目を見るためだった。
男がじっと友人の目を見つめ返すと、友人も男の本気を見たらしかった。
友人は男の胸倉をつかんで自分の方に寄せた。
「コシヒカリ。」
小声でそう言い残すと、友人はポケットに手を突っ込みその場を去っていった。
見ていないことを知りながら男は友人の背中に向かって軽く手を振った。
手を下ろしたときにちょうど消灯時間となりガシャンという音とともに辺りの灯りが消えると、男は小走りで家路を急いだ。
日曜日の夜、集計結果が出た。
厳正なるアンケートの結果一位は見事コシヒカリとなった。
よって地下空間の労働者に配給される今年の米はコシヒカリに決定された。
「よし、大量に用意しておかなくてはな。」
「ああ。あいつらは米さえ食わせておけば黙って俺たちのために働き続けてくれるから本当に便利だ。」
「もう地下の生活に根付いてるんだよ。」
支配者たちは集計結果を茶飲み話にしながら、日向ぼっこをしていた。
~・~・~・~・~
~感想~
米の世論調査というバカバカしさと地下空間の労働者のディストピアを混ぜてみました。
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