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第167回『ゴール トラブル 方向転換』
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YouTubeで行った
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第167回『ゴール トラブル 方向転換』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約56分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=FADYOi1dvDY
↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/
~・~・~・~・~
杉並デリンジャーズと練馬リベレーターズという日本の2大サッカーチームが国立競技場で因縁の試合をしていた。
妻と私はテレビの前のソファに座り、試合の展開に一喜一憂していた。
妻は昔からデリンジャーズの大ファンで、デリンジャーズが活躍すれば声を上げて喜び──マンションなのでやめてほしいのだが──、失態を犯せば画面の向こうの選手に向って叱咤激励した。
私はというとおとなしいもので、心の中でガッツポーズをしたり絶望的な気分になったりと、静かにデリンジャーズの勝利を祈っていた。
試合は延長戦に入っていた。
1対1、残り時間は1分。
ゴールを決めたチームの勝利と言っていい。
ボールが里中というデリンジャーズの選手の手に渡った──サッカーなので正確に言えば足だが──。
妻は「うしっ」と、体育会系の男子高校生のような声を上げた。
私も拳を握った。
このまま行け。
スタジアムのボルテージも一気に上がった。
いい位置に味方がいないことを悟った里中はドリブルで相手ゴールを目指した。
スタジアムはさらに盛り上がり、妻も歓声を上げた。
なぜなら里山はドリブルからのシュートに定評のある選手だったからだ。
私も声にこそ出さなかったが、握る拳にいっそう力が入った。
デリンジャーズの選手たちもリベレーターズの選手たちも一斉に動いた。
とたんにピッチの中は複雑な様相を呈し、リベレーターズはマークしつつも里中のドリブルの阻止にかかった。
里中の華麗なドリブルは一人目をするりとかわした。
よし、いいぞ!
すぐさま二人目のリベレーターズの選手が里中からボールを奪おうとしたが、味方の援護もあって難なく抜いた。
妻は大喜びで手を叩いた。
私も体が熱くなっていくのを感じた。
ゴールが見えてきた。
もう少しでシュートが入る距離だ。
私は神様に祈った。
彼のシュートが決まりますように、と。
しかし、ここで里中選手が前のめりになって崩れた。
「あーっと、トラブル発生! 怪我かっ?」
テレビの実況も興奮を抑えられずに里中の様子を伝えた。
「うっそー!待って待って待って。」
絶望の声を上げる妻はとても早口だった。
妻の方をちらりと見ると、彼女の唇は小刻みに震えていた。
私もまた絶望的な気分になった。
ここまでなのか?
しかしテレビからは再び、いやさっきよりも大きい歓声が沸いた。
里中が体勢を立て直し、ドリブルを再開したからである。
私と妻は同時に「やったー!」と叫んだ。
今、私と妻の心はサッカーを通して一つになっていた。
里中はリベレーターズの選手をあとにして、ボールを勢いよく転がし、よりゴールを狙いやすいように方向転換をして、とうとう里中一人でゴールの前に陣取る形になった。
目の前にいるのはキーパーだけ。
キーパーは体をかがめ、全神経を里中とボールの動きに集中していた。
しかし、この条件では無理だろう。
やはり、里中のシュートがリベレーターズのゴールネットを揺らした。
2対1。
試合残り時間は10秒。
デリンジャーズの勝利は確定だ。
私と妻は顔を見合わせて喜んだ。
「やったやった!」
「勝った勝った!」
妻は満面の笑顔を浮かべているが、私は目に涙をためていた。
よかった。
仕事のない日曜日の夜に試合開始前からテレビの前に座り、約2時間妻とともに応援してきて、本当に良かった。
なにせ私はサッカーにはまったく興味がないからだ。
杉並デリンジャーズのことも心底どうでもよかった。
というか、よく知らない。
私はデリンジャーズが勝利し、ゴキゲンの妻に向かっておめでとうと言った。
「あ、お小遣いアップはだめだからね。」
妻はさながら里中選手のドリブルのようにくるりと背を向けて、鼻歌を歌いながら台所へと向かって行った。
どうやら私の魂胆はばれていたようである。
テーブルに置かれたコップの中のビールはとっくに泡もなくなり、気も抜けていた。
~・~・~・~・~
~感想~
ゴールというお題で、他の使い方もわからなかったので、サッカーの話になりました。
ただサッカーはまったく詳しくないので、試合を応援している人をメインにしようと思って話を考えました。
チームの名前とかサッカーの描写はテキトーきわまりないですが、オチが明確に決まっていたためか、書いていてわりと楽しかったです。
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第167回『ゴール トラブル 方向転換』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約56分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
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杉並デリンジャーズと練馬リベレーターズという日本の2大サッカーチームが国立競技場で因縁の試合をしていた。
妻と私はテレビの前のソファに座り、試合の展開に一喜一憂していた。
妻は昔からデリンジャーズの大ファンで、デリンジャーズが活躍すれば声を上げて喜び──マンションなのでやめてほしいのだが──、失態を犯せば画面の向こうの選手に向って叱咤激励した。
私はというとおとなしいもので、心の中でガッツポーズをしたり絶望的な気分になったりと、静かにデリンジャーズの勝利を祈っていた。
試合は延長戦に入っていた。
1対1、残り時間は1分。
ゴールを決めたチームの勝利と言っていい。
ボールが里中というデリンジャーズの選手の手に渡った──サッカーなので正確に言えば足だが──。
妻は「うしっ」と、体育会系の男子高校生のような声を上げた。
私も拳を握った。
このまま行け。
スタジアムのボルテージも一気に上がった。
いい位置に味方がいないことを悟った里中はドリブルで相手ゴールを目指した。
スタジアムはさらに盛り上がり、妻も歓声を上げた。
なぜなら里山はドリブルからのシュートに定評のある選手だったからだ。
私も声にこそ出さなかったが、握る拳にいっそう力が入った。
デリンジャーズの選手たちもリベレーターズの選手たちも一斉に動いた。
とたんにピッチの中は複雑な様相を呈し、リベレーターズはマークしつつも里中のドリブルの阻止にかかった。
里中の華麗なドリブルは一人目をするりとかわした。
よし、いいぞ!
すぐさま二人目のリベレーターズの選手が里中からボールを奪おうとしたが、味方の援護もあって難なく抜いた。
妻は大喜びで手を叩いた。
私も体が熱くなっていくのを感じた。
ゴールが見えてきた。
もう少しでシュートが入る距離だ。
私は神様に祈った。
彼のシュートが決まりますように、と。
しかし、ここで里中選手が前のめりになって崩れた。
「あーっと、トラブル発生! 怪我かっ?」
テレビの実況も興奮を抑えられずに里中の様子を伝えた。
「うっそー!待って待って待って。」
絶望の声を上げる妻はとても早口だった。
妻の方をちらりと見ると、彼女の唇は小刻みに震えていた。
私もまた絶望的な気分になった。
ここまでなのか?
しかしテレビからは再び、いやさっきよりも大きい歓声が沸いた。
里中が体勢を立て直し、ドリブルを再開したからである。
私と妻は同時に「やったー!」と叫んだ。
今、私と妻の心はサッカーを通して一つになっていた。
里中はリベレーターズの選手をあとにして、ボールを勢いよく転がし、よりゴールを狙いやすいように方向転換をして、とうとう里中一人でゴールの前に陣取る形になった。
目の前にいるのはキーパーだけ。
キーパーは体をかがめ、全神経を里中とボールの動きに集中していた。
しかし、この条件では無理だろう。
やはり、里中のシュートがリベレーターズのゴールネットを揺らした。
2対1。
試合残り時間は10秒。
デリンジャーズの勝利は確定だ。
私と妻は顔を見合わせて喜んだ。
「やったやった!」
「勝った勝った!」
妻は満面の笑顔を浮かべているが、私は目に涙をためていた。
よかった。
仕事のない日曜日の夜に試合開始前からテレビの前に座り、約2時間妻とともに応援してきて、本当に良かった。
なにせ私はサッカーにはまったく興味がないからだ。
杉並デリンジャーズのことも心底どうでもよかった。
というか、よく知らない。
私はデリンジャーズが勝利し、ゴキゲンの妻に向かっておめでとうと言った。
「あ、お小遣いアップはだめだからね。」
妻はさながら里中選手のドリブルのようにくるりと背を向けて、鼻歌を歌いながら台所へと向かって行った。
どうやら私の魂胆はばれていたようである。
テーブルに置かれたコップの中のビールはとっくに泡もなくなり、気も抜けていた。
~・~・~・~・~
~感想~
ゴールというお題で、他の使い方もわからなかったので、サッカーの話になりました。
ただサッカーはまったく詳しくないので、試合を応援している人をメインにしようと思って話を考えました。
チームの名前とかサッカーの描写はテキトーきわまりないですが、オチが明確に決まっていたためか、書いていてわりと楽しかったです。
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