24時間後に花束を(パラレルワールド)

第１章

町のお花屋さん

ここは、小さな町。この町には、「Ｓｕｎｓｅｖｅｒｙ」というお花屋さんがあった。

特に基幹産業もなく、需要と供給が町内だけで回っている、のどかで穏やかに時を刻む町。その中で、町で唯一のお花屋さんを営むこのお店は、地域の人々にとても愛されていた。

勿論、お客さんはみんな顔なじみの常連さん。収入は決して多くはないが、毎日幸せに、夫婦でお花を売っていた。

その中で、夫のフランソワは力仕事。主に、仕入れてきた数々のお花をミニトラックから下ろし、店内に配置。お店の掃除もフランソワの役目だった。

一方、妻で看板娘のマリーは、お花の水やり。そして、販売を担当していた。

誰もが知り合いで、この町が好きだった。事件など、物騒なことは一件も起きず、誰もが穏やかに、町の歯車の一つとして、それぞれの「アイデンティティー」を活かして、仕事をしていた。

このまま、この町で穏やかに生きて、生涯、この安寧を享受する。誰もがそう確信し、信じて疑わなかった。

しかし、ある強盗事件をきっかけに、運命の歯車は、崩れていく。これは、そんな運命に翻弄される、お花屋さん夫婦に起きた物語である。