初めに戻って繰り返す

都山光

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1章

1章-⑩:エルドラ…呪い解いて成長したら『○○した!』

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眠っていた為少し遅い昼食を摂った後、惶真はある実験を始める為、ベッドに腰かけて、満足そうにしているマナとカナに声を掛けるとこれからについて説明を始めた。

「「えぇーーっ!?」」

その内容を聞いたマナとカナは驚きの声を上げた。説明された内容が直ぐには流石に信じられなかったのである。
惶真の説明した内容とは、今まで自分達を蝕んでいた“呪い”の“封印”と、2人の姿を惶真と同じくらいまで“変化”させる事だった。
この内、前者は今いるこの大陸でなく、別の大陸にある聖地ネクロバレーと呼ばれる場所でしか解除できないと、教会跡地で出会った、同類であるルカ・レヴェリーが言っていたのだから。
驚いているそんな二人を無視して惶真は詳しく説明し始める。

まず、惶真は2人に自分の“恩恵”の真の能力を説明した。
“恩恵・固有魔法【変性・変成】”これは自身の周辺にいる人間のステータスや技能を自分のモノとしてコピー付加が出来、またクロノカード等の情報の改変を行う事も出来る。そして魔物の構造を変質させる事が出来るという能力だ。
惶真はこの能力の恩恵で、チート級の能力を得たのである。

そして、更にこれから行う事について説明した。

今回、惶真が試そうとしているのは、まず“変成”を用いて2人の身体構造を変質させることだ。これから生きていくにあたって子供の姿では不憫であると考えたからだ。もっとも、惶真的に善意だけでなく試すのに丁度いいかと言う感じだ。
惶真の“変成”は魔物を対象とした魔法の様だが、魔物との混血種である魔人なら効果があるのではと考えたのだ。
そして、先のギルドで会ったエルフの女性(名前は、エルフェリアだったか)が所有していた技能の中に今回使えそうな技能が多々あったのだ。無論その場で“変性”を使いステータスと技能をコピーする事が出来たのである。

エルフェリアが所有しコピーした技能は、“封印”、“空間魔法”、“能力付加”、“精霊魔法“、”能力拡張“である。
今回の実験に使うのは“封印”と、“能力拡張”と、“能力付加”の3つだ。

惶真の考えたプランはこうだ。
まず、2人に付いている“呪い”を、惶真の“変成”を用いる事で、“呪い”を2人から変質させ分離させるのと同時に、能力を他の物に付加させる事が出来る“能力付加”を使い、分離させた"呪い“を別のモノに付加させる。そしてその付加定着させた物を、対象の能力やスキルを封じることが出来る“封印”で封じ込めるのが今回の概要である。そして、これらを行うにあたって惶真の能力を1ランク上げる為に“能力拡張”を使うのだ。
これの一連の行為を行うには膨大な魔力が必要なのだが、惶真には“変性”を使い得た膨大と言える魔力量があったのでなんとか実行できる目途がついたのだ。
この考えは入浴しながら考えたことだ。

説明を受けたマナとカナは半信半疑だったが、これまでの惶真の規格外なチート能力を見ているので取り敢えず惶真に任せようと結論に至った。

2人の了承を得た惶真は、早速準備を始めた。と言っても準備物は分離させた”呪い”を封印する為に使う魔物の魔石を2つ用意するのみだ。あとは、風呂と睡眠の効果で回復した自身の魔力のみだ。
そして、惶真は目の前に立っている緊張の面持ちをしているマナとカナに向けて詠唱を始めた。
固有魔法である”恩恵・変成“は詠唱無しでも発動できる。だが、今回は、より"変成”の効能を上げる為、完全詠唱しよりイメージしやすいようにする為だった。

「”魔の頂を見るモノ。我、言霊と魔力を汝に捧げ、魔の血を新たな理に染め上げよ!『変成』!!“」

詠唱を終えると惶真の体が微かに黒の光を纏う。
惶真はその状態のまま、まず、マナの身長に合わせて膝立ちになり目線をマナに合わせた。
マナは、間近にある惶真の顔に、頬を赤く染める。

「な、なに、ち、近いよ(何、なんで顔を寄せてくるの!?このままじゃ…)…んっ!?(な、なに!?なんで!?えっ、なんで私…オウマにキスされて…!?何だろ身体が熱くなる!)」

惶真は戸惑っているマナの頬に右手を翳すと同時に、マナの唇を奪った。ただ重ねるだけの子供ぽいキス。
マナは突然の出来事、惶真からのキスに訳も分からず放心していると、何だか体と言うか、心が軽くなったように感じた。そして己の体が熱く変化する感覚に支配されていく。

惶真はマナとの口付けを終えると、今のマナとのキスを、ボーと頬を染めて見詰めていたカナに視線を向ける。
カナはその惶真の向けられた視線から自分も!と思い、目を閉じその時を待った。
惶真は目を瞑るカナに少し苦笑すると、カナに近づくと先のマナと同じようにカナの唇も奪った。

「(御主人様…)んっ、…(ふわぁ…御主人様にキスして貰ってる。私の、初めての…!?あ、熱い感じなの!)」

やはりカナも、マナと同様の感じを得ていた。

口付けキスを終えた惶真は膝立ちから、立ち上がった。
2人に口付けキスをしたのは、惶真の“変成”の効果を確実に相手の内に送り込む為だった。

そして惶真は成功を実感した。
惶真の左手には封印による刻印がされた2つの魔石が握られていた。
そして2人のステータスをそれぞれのクロノカードで確認すると間違いなく“呪い”が消えていたのだった。

「どうやら、うまく成功したか…」

そんな風に呟くと惶真は魔力を多く使用した影響で、フラッとなったが直ぐにバックから精神回復薬を取り出し飲む事で、倒れるという醜態を見せる事はなかった。
それに倒れるとしても、まだ早かった。
何故なら、今回の実験は、呪いの封印の結果と、魔人を対象にした“変成”の魔法が上手くいったかを知る為のものだったからだ。

惶真は2人のクロノカードから、マナとカナの方に視線を戻す。そこには、先程とは違い幼女の姿ではなく、2人の成長した姿があった。
しかしと惶真はなんだか2人の異なる感情を秘めた姿が気になっていた。
変化したその姿は、2人共身長は150㎝くらいに成長しているが、髪の長さ等は変りなかった。
あと、着ていた衣服も成長した体に合わせて変化していた。どうやらもう一着大人用に購入する必要はなかったようだ。
あと変わったと言えば、マナの目元はきりっとしているのに対して、カナはおっとりとした目元をしていた。
なんだか2人の顔は、と言うか目線は下を向いていた。何故かマナは物凄く暗く、逆にカナは物凄くいい笑顔をそれぞれ浮かべていた。
2人の視線は自分達のある一点を見ていた。
それは、成長した己が胸であった。

不思議そうに惶真は2人に声を掛けようとすると、2人は全く逆の感情を顕わにし声にする。

「絶望した!未来の自分に絶望した!!」
「感謝です!未来の自分に感激なの♪」
「……あぁ」

叫ぶ2人。真逆な思いを。
マナは成長した未来の可能性の自分に絶望し、カナは成長した未来の可能性の自分に歓喜した。
そんな2人(特にマナ)を、惶真はなんと言うか居た堪れない気持ちと、心の奥底にある何かが言い表せない気持ちを抱きつつ見詰めていた。



マナの胸は正直小さいと言えるサイズだった。赤いドレスでもほんの少し膨らんでいると分かるくらいかな。絶壁とまでは言わないが…
それに比べて、カナの胸はメイド風の服がメロンか何か果物が入っているかのように膨らんでいるサイズだった。

自分の胸をポンポンと手にするマナはポヨンポヨンと擬音が聴こえそうなカナの胸を恨めしそうに見つめる。そして再び自分の胸に視線を向ける。その眼尻に若干涙が浮かんでいた。
そんな不条理な現実と言う事実にマナは世界の、神に対して不満をぶつける。そして、惶真にもぶつけようとした。

「うぅ~、神は無慈悲だよ! どうして双子なのにここまで違うの?……オウマ!あなたが何かしたわけじゃ-」

マナが若干の涙目のまま睨むように“変成”を用いて成長させた本人である惶真に文句を言おうとしたその時だった。
マナは惶真に攫われたのだった。



惶真は涙目で睨み文句を発しようとしているマナを抱きしめると、

「カナ。ここで少し待て」

と、カナに向けて一言告げた後、右手を前に翳すと”空間魔法”を発動した。
“空間魔法” エルフェリアから得た魔法技能で、その力はその者の周囲を対象にした異空間を作り出す事が出来る魔法である。空間の大きさと維持力は使用者の魔力量で変わる。また“能力付加”を利用すれば物に付加させる事で物によるが小さい異空間を作る事が出来る。もっともこの空間内には物を収納する事が出来るのみで生物の類を入れることは出来ない。
今回の惶真の場合、魔力量が膨大にある為、一部屋分くらいの空間を作る事が出来る。

そして、惶真と、惶真にいきなり抱きしめられ「えっ?えっ?なに!?」と真っ赤になりながら混乱しているマナは、その空間に入る事で姿が消えた。



残されたカナは突然の出来事に混乱し唖然となった。
いきなり2人が消えたのだ。
混乱しない方が不思議だ。
困惑した表情のカナは一先ず惶真に「待っていろ」と言われた通りにする。

「…えっ!?なんなの?」

そんなカナに突如不思議な感覚が伝わってきた。
それは今まで感じたことのない妖艶な気持ちが流れ込んできた。

「なに…これ?うぅ…変な感じなの…体が熱くなるの(これ、マナの感覚、なの?)」

今まで感じた事のない気持ちに体が、火照ってくる。
カナはなんとなく、この感じがマナのものの様に感じ取っていた。
その感じが10分ほど続き身悶える様な感覚が続いていたが、急に火照りが冷めてきた様に感じた。
それと同時に、何もない空間から、先程消えた惶真と、顔を真っ赤にし、どこか朦朧とした、惶真に両腕で抱えられている幼女の姿に戻っていたマナが現れた。

「ご主人さま!?どうしたの、マナ!?」
「はふぅ~おとなって、凄いんだぁ~」
「えぇ!?おと、なって!?」
「気にするな、カナ。次はお前の番だからな」

惶真はそう言うと真っ赤にどこか幸せそうに朦朧としているマナをベッドに横にすると、カナに近づいた。
そして、カナを抱きしめると、先程同様に、“空間魔法”を発動し、カナを連れ入った。



マナは先程惶真の作り出した”空間”内で受けて感じたモノを再び感じ、ベッドで身悶えた。

「はふぅ~この感じって~(今頃、カナもおとなに…)」

それからやはり10分程でその感覚が収まった。
そして、空間から出てきたカナは幼女の姿の戻っており、マナ同様に真っ赤に身悶えた様に惶真に抱き抱えられて出てきた。
惶真は抱えているカナを、マナのいるベッドに寝かせた。

空間内で起きた事はそれぞれの秘密である。如いて言うなら、おとなになったという事くらいだろうか…

どこか惶真も疲れたのか自分のベッドにふらふらっとしながら行くとそのまま眠りに付くのだった。

惶真は疲れているが満足そうな様子で、マナとカナはおとなになった事に身悶えながら夢の中に入るのだった。
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