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第1章 世界の半分をやろう
第10話 「君は痴漢という言葉を知っているかい?」
しおりを挟む「え…。ひ、被害者…?」
浦安さんの口から出た言葉に僕は思わず呟いた。
「そう、被害者…だよ」
僕の前の席に座る浦安さんがまっすぐにこちらを見ながら言葉を続けた。
「君は痴漢という言葉を知っているかい?」
「は、はい。例えば…、よくある話だと電車内で男が女の人を触ったりする事です」
僕の返答に浦安さんは頷いた。
「そうだね、君は平成生まれだと言う…。だから、その言葉を知っていても何の不思議もない」
「アタシも以前は痴漢被害者の調書とかはよく取ったわよー。若い頃だけどね。だけど、ある時からプッツリとそれが無くなったの。どうしてか分かる?」
浦安さんが話題を起こし、崎田さんがそれを受けて質問してくる。
「お、男が…いなくなったから…ですか?」
「そう、正解よ。日本だけじゃない、世界中から男がいなくなっちゃった。だから男が加害者、女が被害者になるタイプの犯罪がググッと無くなったわね。でも反対に…」
「反対に?」
「男が…、とりわけ『天然』の男が性犯罪被害者になる事案が増えたのさ」
向かい側に座る多賀山さんがコーヒーを飲みながら低く甘い声で言う。大信田さんがそれに言葉を続かせる。
「そうそう、今年になってからだと中学校の用務員をしている五十代の男性が被害に遭ったってあったな。女子生徒十数人が無理矢理っ…て新聞誌上を賑わせあ」
女子中学生が?集団で?五十代の男性を?えっ、男性数人が女の子一人を…とかじゃなくて?戸惑っている僕の肩にポンと浦安さんの手が乗った。
「信じられないかも知れないが、これが今の常識なんだ。私はね、君にはこういった事も知ってもらいたかったんだよ。そうでないとちょっとした弾みで君が被害者になるような事があるかも知れない。だが、知っていれば未然に防げる可能性も生まれる。だから伝えておきたかったんだよ」
そうか、僕の為に…。
「ありがとうございます、浦安さん」
僕は浦安さんに頭を下げた。
「うーん。さすがやっさん、良い場面だ。あれ?でも、肩に手を置くってそれってセクハラじゃね?」
「えっ?」
僕の肩に置かれた手を見ながら大信田さんがそんな事を言った。
□
「セクハラは被害だと主張しなければセーフですから」
そう言って浦安さんが僕の肩に手を置いた事は大丈夫と言っておいた。その後、デカ盛り定食をなんとか食べ終えた。いわゆる『腹の中がパンパンだぜ』状態だ。
お腹が苦しいけどふうふう言いながら立ち上がって浦安さん達に続いて食器返却口に食器を返した。
「ご馳走様でした」
「あー、お兄ちゃん食べ切ったねえ。さすが男の子だ!胃袋も元気さね!」
食券受け取り口にいたおばちゃんが今は洗い物をしながら声をかけてくる。
「いやー、さすがに一人では完食するのは無理でした」
「あっ、そうなのかい?じゃあ次からは少し加減しようかね。また食べに来ておくれよ」
「ありがとうございます、またよろしくお願いします」
そう受け答えをしながら僕は受け取り口に使った食器類を箸なら箸、器なら器と所定の位置に置こうとする。
「あっ、こちらで受け取りますッ!」
するとタタタタッと足音を立てて若い食堂スタッフの女性二人がやってきて食器を受け取ってくれるようだ。
「ありがとうございます、じゃあコレをお願いします」
そう言って僕は使用し終わった食器をトレイごとスタッフの方に渡した。
「はい!ご使用ありがとうございましたー!!」
ん!?『ご使用』?『ご利用』じゃなくて?。ま、まあ良いか。凄く素敵な笑顔で食器を受け取ってくれたし。言い間違えただけなのかも知れない。
「じゃあまずは部屋に戻ろうか。二時からは午後の検査もあるからね」
浦安さんの言葉に従い、僕達は僕の病室に戻った。
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