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第3章 ひとつ屋根の…下?
第35話 速戦即決
しおりを挟む「シュッ、シュウ!!」
「佐久間君~ッ!!」
僕が県警宿舎…、いわゆる婦警さん達が利用している女子寮の敷地にある食堂に入った時、美晴さんをはじめとして中にいる人達が一斉にこちらを振り向いた。
何やら緊迫した場面のように思える。
「ど、どうしてここに?」
尚子さんが驚いたような顔をしている。
「それは…」
僕が理由を言おうとした時、後ろからついて来ていた多賀山さんと大信田さんも入ってきた。
「プリティがな、自分が寝泊りするのかも知れないのに、美晴達だけに頼み込ませる訳にはいかない…ってな」
「多賀山の言う通りだぜ。だから車に乗って通用口からこっそり出てきたんだ。表はマスコミが張ってたらな、来るまでにちょっと余計に時間がかかっちまったぜ」
二人の説明に補足する感じで僕は続ける。
「もっとも僕はこの場所を知らなかったんでお二人に連れて来てもらった…、そんな感じでして」
照れながら僕が伝えると時が止まっていたかのようにシーンとしていた場が動き出した。鼻をすするような音がすると、
「さ、佐久間君!マジ天使!」
「あたし達が勝手にやってるだけなのに!」
「佐久間君来た、これで勝つる!!」
何やら婦警さん達が感激している。中にはうっすら涙ぐんている人もいる。
「シュ、シュウ…。オレ…」
そこにふらふらと美晴さんがこちらにやってくる。普段の元気で少しやんちゃ…、そんな雰囲気が微塵もない。
「も、もうダメかとか思って…」
「すいません。泊めてもらう僕がお願いに来るのがスジでしたでしょうに」
「修さん…。これは|私(わたくし)達がしたくてした事ですのに…」
尚子さんもやってくる。
「いえ、尚子さんも…。それに皆さんも…、遅くなってすみません」
僕が頭を下げると二人はうっすらと涙ぐみながらも嬉しそうな顔をした。
「お、男…」
そう呟く声に振り返ると、そこには食堂で働く女性がよく頭にかぶっている白い布と平成…いや昭和と呼ばれた時代から女の子に親しまれているリンゴ4個分の体重の猫のキャラクターがプリントされたエプロンをした背が低めの女性がいた。この人が寮母さんだろうか?
「ア、アンタ…。ま、毎日テレビに映ってる署内に泊まってるって男の子かい?」
何やらプルプルと震えながら僕に問いかけてくる寮母さんに僕はなるべく友好的な雰囲気になる事を願って朗らかに挨拶をした。
「はい、今は河越警察署内でお世話になっております佐久間修です。はじめまして」
□
「まったく!この子達はッ!男の子が来るなら…、それならそうと早く言ってくれれば良いじゃないのさ」
そう言っているのはこの寮の寮母である和泉一子さん。先程、僕を見たらすぐに『ちょっと失礼』とばかりにダダダッとどこかに走って行ってしまった。
僕の入寮を頼む相手がいなくなってしまった。仕方がないので取り残された僕達は食堂で皿洗いをする事にした。
慣れてない水仕事だがこれだけ頭数がいればすぐ終わる。その後、食堂の椅子に座って僕の日課でもある夕方のニュースを見ていると和泉さんが帰ってきた。なぜその必要があるのか分からないが頭巾やエプロンなどを取り、フリルが付いた服に着替えて化粧までしている。
皿洗いが終わっている厨房を見て寮母さんは驚いている様子だ。
「ア、アンタ達が洗ってくれたのかい?」
そう言って驚いていた。
「私達だけじゃないよー。佐久間君もだよー」
「お、男の子が皿を洗ってくれたのかい?」
「洗うって程の事は…。警察署の食堂にあった食器洗い機と同じような機械もありましたし乾燥機もありました。機械で洗いにくい小鉢とかくらいしか手洗いした訳ではありません。そもそも皆さんと手分けしてやった事なので…」
僕がそう返事すると和泉さんは椅子から立ち上がると、ビシッと僕を指差して叫ぶ。
「君、合格ッ!!」
「えっ!?」
「良いじゃないの、君ッ!こーいうのが良いオトコってモンさね」
何やら嬉しそうな表情で寮母さんが話し始める、凄まじい早口で次々と言葉が出てくる、出てくる。誰もそのマシンガントークに口を挟めない。
「だいたい男ってのはさァ、家事とか何にもしないでふんぞりかえって座ってるだけ。たまに口を開いたと思ったら『フロ』、『メシ』、『寝る』しか言わないんだよォ。そのアンタが入って食ってる風呂に飯、誰が世話してやってると思ってるんだい!アタシが昼間パートしてクタクタだってのに疲れた体にムチ打って用意してやってるんじゃないか。それを礼の一つもなく当たり前のように流れ作業みたいに食って寝て。同じ流れ作業ならこの食器洗い機のベルトコンベアの方が何倍もマシさ、文句ひとつ言わずやってくれるんだから!あー、やだねやだね!メシもフロも何もかもかま当たり前だと思っている男、苦労知らずでメシ食って。用意してるこっちの身にもなれってんだい。あー、やだやだ。15年前の事件の後からは特別意識みたいなの持っちゃってより一層態度が悪くなってるみたいじゃないのさ!男とくれば最優先、まったくロクなもんじゃないよ!アタシの二十歳ぐらいの頃なんざ『草食系男子』なんて言葉が言われ始めてねえ…、まだそういうのなら文句も言わずに控えめな男子ってだけで……………」
突如始まった和泉さんのやさぐれトークかま延々と続く。男に何か嫌な思い出でもあるのだろうか。しかし、そこは触れちゃいけないような気がしたので寮母さんの気が済むまでスルーを決め込む。
「………だからね、こうやって一緒に皿を洗ってくれる男なんて天然記念物…、いや世界遺産モノだよ。佐久間君だったね、ぜひウチで暮らすと良いよ」
「あ、はい。ありがとうございます」
長かった…、本当に長かった…。結論だけで言えば『合格、入寮を許可する』で終わる話だが、和泉さんの愚痴に巻き込まれ僕も含め聞いていたみんなはゲッソリ。
「それで?いつこっちに来るんだい?」
「金曜日の夕方にお願い出来れば…と。荷物もバッグ一つで足りますし…」
「そりゃラクだね。よし、じゃあ部屋割りを決めようじゃないのさ。バッグひとつか…うん、その荷物の量ならアタシの部屋に増えたって問題ない。だからアタシの部屋に居候しても…」
さりげなく自分の部屋に誘導しようとするが、即座に周りの婦警さん達が反応した。
「空き部屋の101が良いと思いまーす!」
「.あっ、それ良い!あそこなら寮の入り口から最寄りで必ずみんなが前通るし…」
「そうだよ!佐久間君!そうしなよ、それならみんなで送り迎えしながら警護も出来るよ!」
「それしかない!他は四階の端っことかだし101にしなよ」
「シュウ!来ちゃいなYO!寮の101に来ちゃいなYO!!」
和泉さんが何か言おうとしていたが、婦警さん達一丸となった101号室推しの声にかき消された。そんな訳で僕の入寮は許可された訳で…。
「皆さん良いですわね、私は自宅通勤ですから修さんとご一緒できませんわ…。あら、たしかそう言えば102号室は空き部屋でしたわよね?なら、私あの部屋に入りたいのですが…?」
「「「隣ッ!?」」」
ちなみに僕の101号室入寮が決まった後、102号室に入りたいという希望が殺到したという。
しかし、どんな抽選方法を採用したとしても婦警さん達の間に遺恨が残るとして結局102号室への転入は誰にもさせないという事になり、僕のプライベートを守る為の緩衝地帯とする事に決まった。
「では、金曜日の夜からよろしくお願いします」
僕はそう言って集まっている人達に挨拶した。
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