シン・三毛猫現象 〜自然出産される男が3万人に1人の割合になった世界に帰還した僕はとんでもなくモテモテになったようです〜

ミコガミヒデカズ

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第4章 不意打ちから始まる高校生活

第61話 僕と真唯ちゃんの前進

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 昼休みも終わりに近づき、僕たちは寮から教室棟へ戻った。一年生の教室は校舎の三階にあるので階段を上った。

「じゃあ、午後も頑張ろうね」

「そうだね。真唯ちゃ…、じゃなかった真唯」

「うん…、えへへ…。お兄ちゃん」

 はにかむ姿がとんでもなく可愛い我が妹。

「むぅ、駄目だよ真唯。お兄ちゃん…、じゃなくて…」

「あ…、しゅ…しゅう…おにい…ちゃん」

「あっ、またお兄ちゃんを付けた」

「だ、だって…恥ずかしいよ…。お兄ちゃんは…お兄ちゃんだもん」

 昼食の時間を終えて僕達ふたり、そんなやりとりをしながら自分達の教室に向かっていた。そんな僕達の距離感というか関係に一つの変化が起こっていた、それというのも…。

……………。

………。

…。

「あ、あのね、お兄ちゃん。私の事…真唯…って呼んで欲しい…」

 お弁当を食べ終わって少し話していた時、不意に彼女からそんな申し出があったのだ。

「ん…?それは良いけど…、どうして?」

「う、うん…。私ね、お兄ちゃんが優しいのは分かってるんだ。でも、私の事…真唯ちゃんって呼ばれるとなんか距離があるかな…、気を使わせてるのかなって…」

 少し言いにくそうにおずおずと彼女が理由を話した。

「そんな事ないよ。家族だし、こんな風に過ごすのだって…」

「お兄ちゃん、お願い」

「え?」

 真唯ちゃんは恥ずかしそうにしながらもこちらを見ている。

「私、もっと心もお兄ちゃんの近くにいたいよ。だから…真唯って呼んで…」

 それはまっすぐなまなざしだった。大人しい彼女の決意のようなものを感じる瞳…。それを見て僕の心も決まった、彼女の気持ちに応えようと…。

「分かったよ、真唯ちゃん…。…じゃないね、…コホンッ!…ま、真唯」

「お兄ちゃん…」

 僕が名前を呼ぶと彼女はとても嬉しそうな顔をした。それを見て僕もひとつ思い付いた事があった。

「それならさ、真唯も…僕の事を名前で呼んでほしい…かな」

「えっ!名前で!?わ、私が…お兄ちゃん…を…?」

 急にアタフタとした様子になった真唯、そんな彼女を見ていると何やら僕の心も温まってくる。

「そうだよ。だって僕だけが名前で呼ぶのはちょっと…ねえ?」

 そう言うと彼女は顔を真っ赤にする。

「な、名前で呼ぶなんて…は、恥ずかしいよ。そ、そんなの…お話にしか出てこない…こ、恋人とか…」

「えっ、お話にしか出てこない…?」

「う、うん。だ、だって男の人がいないから…。男の人と付き合った事があるとか結婚した事があるのは男性消失現象が起こる前…、旧時代の人にしか出来ない事だから…」

「あ…」

 そうだ、男性がいないんだから付き合えない。今日初めて会ったクラスメイトも男性と初めてしゃべったと言う子がほとんどだった。それこそ男性を生で見るのも先日の入学式の時が初めてというくらいに僕はレアな存在であるらしい。

「うーん、じゃあ少しずつ慣れていこうか?いつか僕を普通に呼んでくれたら…その、嬉しい…かな。それだけ距離が近づけた…みたいな気がするから」

「うん…」

「じゃあ…、行こっか?午後の授業、始まるからね」

 そう言って僕達は教室へ戻る事にしたのだった。

……………。

………。

…。

 階段を上って正面に位置する一年B組の教室の前でそんな言葉を交わし真唯はB組へ、僕はA組の教室へと分かれる。

 終わり間近だけどまだ休み時間とだけあって校舎の中は活気がある。あちこちからおしゃべりの声が聞こえてくる。さすがにそこは女子校、僕が今まで見てきた学校内の昼休みの光景とはちょっと違う。

 その光景とはおしゃべりをボクシングに例えればまさに足を止めての打ち合い、じっくりその場にとどまってのおしゃべりをしている。廊下や教室、その好きな所で立って話すのか…。教室内で座って話すのかの差はあるが、僕がかつて学校生活で見てきたものと比べればはるかに賑やかなものだった。

 そんな賑やかなおしゃべりを廊下でしていた女子生徒の一人が戻ってきた僕達に気づいて声を上げた。

「あっ!佐久間君だっ!!」

 声を上げた子の顔に見覚えはない、少なくとも同じA組の生徒ではないようだ。

「えっ!?佐久間君ッ?」

 つついた巣から蜂が飛び出して来るようにB組の教室から女子生徒達がと出てくる。

「えっ!?佐久間君ッ!?」
「も、戻ってきたんだっ!」
「多目的の中じゃなかったんだ!」
「さすがに長すぎるもんね」

 一年A組とは反対の方向から声を上げながらやってくる集団には見覚えがある、同じクラスの女子生徒達だ。なぜか体育の授業が終わった時と同じ格好、彼女達が言うところの『陸戦型戦闘服』こと体操着である。

 ちなみにその体操着にも大きく分けて現行型と旧型の二種類が存在する。現行型はいわゆるハーフパンツ、旧型はいわゆるブルマーだ。

あれ?みんな教室に戻ってなかったの?

「き、着替え終わってる…」
「そ、そんな…。まさか…」

 学生服に着替えた僕の格好を見てクラスの女子達はあからさまに落胆している。中にはガックリと崩れ落ちている子もいる、まるでサヨナラホームランを打たれた敗戦投手のようだ。

「そ、それよりも…」
「さ、佐久間君。多目的トイレで着替えなかったの?」

「あ、うん。別の場所で…」

「………ッ!!」
「ち、違う…場所…」
「くっ…。着替え…」
「の…残り香なんてなかった…」

 ウチのクラスの女子達が完全に魂を抜かれたような表情になっている。なんだろう、なんだか燃え尽きてしまったように…。

「ところでさ、ところでさ!」

 一人の女子生徒が声をかけてきた。立っている位置と見覚えのないところから考えてB組の女子生徒だろう。

「さ、佐久間君…。今、佐久間さんと一緒に教室に来なかった?…ん、あれ…?…」

 何かに気付いたかのように話しかけてきた女子生徒の言葉の勢いが鈍る。

「あ、はい。一緒に来ましたよ。一緒にお昼を食べてたんで」

「「「「お、お昼をッ!?」」」」

 ざわざわっ!!周囲が一気にざわめく。

「そ、そんな。いきなり初日から二人でお昼とか…」

「ふ、二人はどういう関係なの?」

 ぐぐっ!周囲の女子生徒達が身を前に乗り出すようにして僕の返答こたえを待っている。

「えっと…。真唯ちゃ…、いや…真唯は…」

「「「「「真唯ッ!!!?」」」」」

「な、名前でっ!?」

「うらやまっ!!」

 僕の話し始めると過敏なまでに女子生徒達の反応がある。ど、どうしたっ!皆、そんなに身を乗り出して…。

 でも、まあしっかり返答しないと…そう思った時の事だった。

 きゅっ…。

 僕の制服の背中側、その裾のあたりを掴まれたような感覚…。そこにいるのは当然真唯の手…。

「真唯は…」

 ぐぐぐっ…!!

 女子生徒達がさらに身を前に乗り出してくる。その様子には妙な迫力があった。一瞬、ひるみそうになるが僕はここでお腹にグッと力を入れるのと同時に制服の裾に触れている真唯の手に触れながら口を開く。

「僕の…、大切な人です」

 
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