【完結!】田舎暮らしの神殺し、二度目の神殺しに挑む〜余生は静かに暮らしたいのに弟子達がさせてくれない件〜

文字の大きさ
127 / 311
第三章 人神代理戦争 勃発

五話 誰を英雄と讃えるのか 其の伍

しおりを挟む
 戯神ロキは退屈していた。生まれてから1000年が経ち、ただ人の運命を狂わせるのに飽きており、何か無いのか? この退屈を破壊してくれる、そんなワクワクは無いのかとぼんやりと考えていた。

 そして、何となく過ったのが自分達を殺すことが出来る人間を自らの手で作り出すことであった。

 最初は一人だけを残し、その地域の人間全員を殺した。強くなってみせてよとだけ残し、その場を去ると数年かして青年はとある神を一人殺し、自分の下に現れた。

 片腕を失いながらと振るう剣には鬼気迫るものがあり、ロキは悪戯以外で使わなかった神技グランスキルを初めて戦いで用いて青年を殺した。

 ロキはそこで900年ぶりの興奮と100年ぶりの新鮮さを感じる。そして、ロキは考えた。

 人を最も強くするのは憎悪であり、それが重ければ重いほど自身を楽しませてくれるエンターテイメントとなることを。

 その後、500年間を英雄殺しを繰り返し、楽しくはあるが新鮮味に欠けてきたと感じたある日、ロキは自分の手で幸福を二度奪われればどうなるかを試した。

 三年後に神技グランスキルが解ける様に自身に幻術をかけて、限りなく人に近い存在に身を堕とす。

 そして、それらが現在、バサラの目の前で行われた悲劇の答えであった。親友だったものは全てを奪い取った神であり、それにより再び家族を失う。

 アイリスに突き刺さった剣と地面に滴る彼女の血。背後には炎により、全てが真っ赤に映る。

 その姿を見ているバサラをロキはどんな顔をしているのだろうか? どんな絶望を見せるのだろうか? 彼は自分の首に至る存在になるだろうか? そんなことを考えながら彼の目を見た。

 怒り、悲しみ、憎しみ、そのどれにも当てはまらない。

 しかし、バサラが見せたのは虚空。

 全てを奪われた者が見せた無であり、彼は二度の日常を奪われたことによる限界を迎えた。

「殺す」

「無理だろう?」

「殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、ぶっ殺してやる!」

 次の瞬間、ロキの顔に拳が突き刺さる。少年の齢十二、彼の動きが突然見えなくなり、ロキは再び地面に転がった。

(なん、だ?! 神だぞ? 僕は? その僕に何か起きてる!?)

 自身の身を人間に堕としていたツケが回って来たのか、はたまた、それ以外の要因、カツラギ・バサラという少年の何かが外れてしまったからなのか。それは不明であるがロキは生まれて初めて血を流した。

 2000年の時を経て、初めての出血、それはかつてない程に屈辱的で許せざる物であった。だが、そんなことをバサラは気にしない。

 相手にとって屈辱的であろうが、相手に取って嫌がることであろうが関係ない。際限なく広がる喪失感による激情。

 少年はここで自分の肉体の限界を自らの加減で壊す術を知ると倒れていたロキの上に跨り、力一杯、彼の顔目掛けて再び拳を振り下ろした。

 それをギリギリのところでロキは避けるもその一撃は家の床を破壊し、彼は何とか振り解こうと自身の腕に生み出した剣をバサラの足目掛けて切りつけた。

 ロキは足を切り裂く勢いで振るったもののそれはバサラの足の薄皮を切った程度で、今目の前に立っていた少年がものの数分で別人の人ならざる者へとなったことを理解する。少年はその一撃を持ってロキを素手で殺そうと再び拳を振り下ろそうとするもとある音を聞き、彼の動きが止まった。

「け、ほっ」

 それは動かなくなっていたアイリスの声であり、バサラはその音を聞いた瞬間、ロキから離れた直ぐに彼女の下に駆けた。

「アイリス?! アイリス、生きてるのか?! 良かった! 逃げよう! 今すぐ逃げれば、まだ、間に合うかも知れない! だから!」

 バサラは自分が先ほどまで抱えられる側であったにも関わらず、アイリスを抱き抱え、ロキに目を向けずにその場から立ち去った。

 そんな中、一人残されたロキはバサラという存在が初めて自分に傷をつけ、死という感覚、恐怖という感情を植え付けたことにひどく、興奮していた。

「バサラ、バサラ! 君だったのか! 僕の退屈を真に終わらせてくれる英雄は! あはは! さっき覚えたのが恐怖! さっき覚えたのが死! あれは物凄く嫌だな! それは人間だって嫌だろうな! あはは! あははははははははは! 今、僕は最高の気分だ! 神が理解出来なかった感情を唯一理解し得た! これから面白くなるぞ!」

 エルフ達は互いに互いの命を削り、森は燃え尽きていく。戯神ロキが起こしたエルフ虐殺の事件。それは神々にとって目障りなエルフ達に自らの強さを強調させたとし賞賛され、人類には大きな恐怖を抱かせた。

 ただ、たった一人の男を除いて。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

処理中です...