【完結！】田舎暮らしの神殺し、二度目の神殺しに挑む〜余生は静かに暮らしたいのに弟子達がさせてくれない件〜

第三章 人神代理戦争 勃発

三十二話 剣聖の凱旋 其の壱

　真紅の髪を靡かせながら、少女は一人敵地に赴く。探すことなくその場所を知っており、誰にも明かされていなかったのにも関わらず、彼女はそこに辿り着いた。

「いよいよか、帰還者リターナー」

　そう呟くと少女は大剣を携え、野を駆けるとその城門を叩き切ると大きな声を上げる。

「帰還者リターナー！　ここに居るんだろう！　出て来いよ！」

　城門を破壊した音と少女の声を聞き、そこに住まう者達が一斉に少女の囲う。一人が手に握る兵器を操り少女の体を糸の様な物で締め上げると彼女を囲う四人の刺客は得物を向けた。

「おうおう、手荒い歓迎だな！　はじめましてだ！　廃棄孔アクタール面々諸君！　俺の名前はジークフリート！　剣聖ジークフリートだ！」

　ジークフリートと名乗る少女を縛り上げていた糸を更に強くし、胴体を切り裂こうとしたが幾ら力を入れてもある程度以上は強く出来ない様になっており、その事実に糸使いであるレイルは驚いた。

(このガキ、俺の糸が通用しない？　ダイヤモンドすらも切り裂く糸だぞ？　それを生身で)

　レイルが力を入れ続けるも糸は締め付けは食い込まず、それに気付いたジークフリートは笑顔でその糸を持っていた邪竜失墜混沌大剣バルムンクを振るい一撃で千切った。

「なっ！？」

　普段無口であるレイルが出した驚嘆の声に周りの視線がジークフリートから外れると彼女は嬉しそうに彼に喋りかけた。

「そんな驚くことねえだろ～。なんたって俺は剣聖。この世界で一番強いんだぜ？　それが本気で剣を振るったくらいだ、誇って良いぞ？」

　ジークフリートの自信満々な表情と立ち振る舞い、それにレイルは苛立ちを覚え、彼女を切り裂こうとその場で最初に踏み込んだ。

「五色の糸パラダイス・ガイド・蜘蛛の糸スパイダーネット」

　放たれた糸での攻撃、ジークフリートはそれを見て、邪竜失墜混沌大剣バルムンクを振るい切り裂くもそれを合図に彼女を囲っていた面々が動き出す。

「爆ぜろボーン」

「第三階層十字解除、裂け、中級悪魔重撃デーモンズインパクト」

「馘無侍くびなし流、 品々物之比礼くさぐさのもののひれ」

　逃げ場など無く、彼らの攻撃が同時にジークフリートに襲いかかると彼女はそれらを嬉しそうに見ながら得物を構えた。

「行くぞ、邪竜失墜混沌大剣バルムンク」

　ジークフリートに呼ばれた途端、邪竜失墜混沌大剣バルムンクが赤く輝き、自身に向けられた攻撃を撃ち落とすためにその力を解き放つ。邪竜失墜混沌大剣バルムンクは赤い糸の様なモノを作り出すとそれをジークフリートは振るった。そして、それと同時に自身に迫っていた爆発を赤い糸で防ぎ、金次とカラスの体をそれが拘束した。

　仲間達の攻撃が弾かれる中、ジークフリートに迫るレイルは糸を腕に纏わせ、彼女の体に突きを放った。

　ジークフリートはその突きを自身の拳で防ぐも彼女の腕に切り傷が生まれ、勢いよく血が溢れた。

「うお！？　いったいな！」

　ジークフリートにダメージが入ること、それをレイルは彼女を殺せると確信し、続けて蹴りを入れる。それもまた糸を纏わせており、食らえばまたしても切り傷が生まれるものであった。

(やるねえ～、帰還者リターナー、いい手札を揃えたな。なら、俺も本気で行くぞ)

　レイルの蹴り、それにジークフリートは再び傷ついた拳をぶつける。レイルはその拳を使い物にならなくする自信があるもののジークフリートの腕から流れる血が凝固しはじめたのを見て、自分が相手しているものが人間ではない者であることを理解した。

　蹴りが弾かれ、レイルは距離を取るとその腕からは溢れた血を邪竜失墜混沌大剣バルムンクが吸っていていた。血を吸えば吸うほど刀身は赤く輝き、ジークフリートはそれを空に向けて構えた。

「名前知りたかったな、坊主。切り裂け、邪竜失墜混沌大剣バルムンク」

　その一言を残し、レイルに向けて邪竜失墜混沌大剣バルムンクを振り下ろす。