【完結!】田舎暮らしの神殺し、二度目の神殺しに挑む〜余生は静かに暮らしたいのに弟子達がさせてくれない件〜

文字の大きさ
197 / 311
第四章 人神代理戦争 霹靂

三話 High voltage! 其の弐

しおりを挟む
 ヴォルガはそう言うと地面を叩くと様々な得物が彼らを囲うように現れた。

神技グランスキル真偽の狭間インターフェイカー

 神技グランスキル、その発動とともに自身にかけていた神隠しの呪いが解かれる。最後の神として、異界ゴルドバレーに降臨するとヴォルガはヴォルカヌスとして目の前の創造主であるナナシと対峙した。

 現れた様々な得物の中から一本の斧を手に取るとそれをナナシ目掛けて殴り飛ばす。先ほど同様に真っ直ぐにナナシに放たれ、彼女はそれを手に握る救世真愛セイヴァーで弾こうとした。

 だが、打つかる直前、その得物は突然地面に刺さるといつの間にかヴォルカヌスはもう一つ、今度は剣が放たれた。

「フェイントなんて小賢しいな!」

 剣はバチバチと雷を纏いながらナナシに向かうもそれを彼女は気にすることなく避けるとヴォルカヌスとの距離を詰める。

(私が知ってる限りの彼の神技グランスキルは自分で作り出した武器をストック出来る。そして、その武器の能力を自分が使うことで引き出す! 強力だけど、今の彼はどうかな! 久々の神技グランスキルの使用、を、いや、を見ればハッキリと分かる! 体が追いついていない!!)

 一瞬にしてナナシはヴォルカヌスを自身の間合いに入れると、救世真愛セイヴァーを振おうとした。

 ナナシの肉体、それは自身が選んだエルフの少女の物。そして、かつて少年バサラが埋葬した大切な者。

 アイリスの物である。

 彼女の体には強化の魔術が施されており、普通の人間などでは目で追えぬ速度で動いていた。

 ナナシの腰程よりも長い刀身の救世真愛セイヴァーを握り締め、一太刀で終わらせようと振るった。

 その時、ヴォルカヌスも同様に迎撃の準備が完了しており、得物を手に取る。

偽技フェイクスキル偉大な太陽グレイテスト・ショー

 握った得物、それは太陽神アポロン、彼が握っていたグローブであり、救世真愛セイヴァーの刃とその拳がぶつかった瞬間、爆発音と共にその場を包む。

「防御魔術、体系は理解していても私でなければ燃え切っていたな」

 ナナシは呟くと自身の体はついた埃をはたき落とした。

 辺りはドロドロと溶け、その場にあった山の一部が無くなっているものの、ヴォルカヌスが出した武器はあり、彼もまた健在であった。

「やっぱり、創造主様は違うな」

 ヴォルカヌスはそう言いながら使ったグローブを捨て、今度は角笛を持ち上げると勢いよく鳴らす。

偽技フェイクスキル神々の戦いクラッシュ・オブ・ザ・ゴッド

 黒い布の様なものがヴォルカヌスとナナシを包み込むと彼は斧を手に取った。

偽技フェイクスキル嵐禍災雷ジオストーム

 かつて雷神が手にしていた神器、そして、その技の再現。光の速度の一撃がナナシに放たれると彼女はそれを防ぐも威力を凝らし切ることはできず、吹き飛ばされた。

「あははは! 素晴らしいな! 最後の神! 君の肉体は神ではない期間、三百年も人間として腑抜けて来たと思いきや、なんだいなんだい! その神技グランスキルは! 私が知ってる限り、君は作った武器に込めた能力を引き出すが、能力はそこまでの幅は無く、ちょっとした雷や爆発、それくらいだったはずなのにな! それがどうした! 他の神々、彼、彼女らの物を完全に再現してる! やはり、正解だった! 私の掌の上で転がせる様な物では世界は面白くならない! 作り出した物を自ら溢し、観測する! そこから生まれる混沌こそ、私が見たい物語だ!」

 ナナシは光速の一撃を受けたのにも関わらず、一つたりとも傷がついていない。それどころか自分の想像を超えるヴォルカヌスに心を躍らせていた。

「なら、あんたが見たい物語は人間が紡いだだろう。なのに何故、また神の時代を齎そうとしてる?」

 ヴォルカヌスは嬉しそうにしているナナシに対して抱いた疑問をぶつけると彼女は恍惚とした表情でそれに答える。

「私の作った舞台を想定外な人物キャストが破綻させた。許せるかい? 私はね、私の掌で作り出した物が見せる混沌が好きだ、大好きだ。だけど、カツラギ・バサラ、彼は私が作り出した物ではない。ただのモブ、名前の無い存在。それが、整えた舞台を破壊して! 挙句に作り上げた世界を変えた! 本来であればそこにハマるはずの人物キャストは私が選ぶ筈なのに! 人の生み出す世界など極めてつまらん。他の世界も見てきたが、それは決まっている。だからこそ、神が支配する世界から生まれる混沌が見たいんだよ、ヴォルカヌス!」

 狂気、それは圧倒的なまでに漂い、気圧される様な澱み。

 だが、それに対して、ヴォルカヌスは嘲る事はない。

「そうか、なら、あんたとは相入れないな、創造主。俺は人が好きだ。人が持つ可能性が好きだ。そして、自身を人に押した結果、自分もまた成長出来た。見せてやるよ、ナナシ、お前に人の可能性をな」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~

こげ丸
ファンタジー
『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』 公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル! 書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。 旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください! ===あらすじ=== 異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。 しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。 だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに! 神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、 双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。 トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる! ※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい ※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております ※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております

【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
 異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。  億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。  彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。  四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?  道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!  気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?    ※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。

外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜

KeyBow
ファンタジー
 この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。  人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。  運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。  ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

処理中です...