積雪のKiss

幸人-Yukihito

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第10章 冷たい殺意

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「うぅ…」
「目を覚ましたわね?」
「あんたは…幸人の母さん…」
 凛七は病院に運ばれた翌日、幸人が決戦の地へ向かった1時間後に目を覚ました。だが目の前にいる千絵の目は穏やかではなくどこか怒りを宿している。息子を殺そうとして無理もないが、今生きている事実に絶望している。何故なら、このまま幸人だけ死ぬことを意味するからだ。
「幸人は…?」
「あの子なら戦いに行ったわ…それより、何で幸人を刺した?」
「……」
「ねぇ!答えなきゃわからないじゃん…?早く!?」
 胸ぐらを掴むのを堪えて顔面を至近距離に詰める。凛七は怒鳴られることに慣れているのか動揺こそしていないが、それ以上に手が震えている。
「だって…幸人だけ死ぬなんて嫌だったんだよ!あんたは奴の強さを知らないからわかんないだろうけど、いくら幸人が強くたって…生きて帰れるわけない…!だから幸人を楽に殺して、私も死ねばよかったの…!」
 大声を張り上げて訴える。しかし返ってきたのは
「それは幸人を舐めすぎ…あの子が、どれだけあんたのために命を賭けたと思ってるの?今まで何を見てきたの!?」
「…!?」
「私は、ママとしてあの子を信じる。私が一番強さを知ってるから…それはあんただってわかるでしょ?」
 必死の訴えが響いたのか、凛七は幸人を刺したことを今更ながら後悔した。殺人未遂にはならないかもしれないが、それでも幸人を刺した罪からは逃れられない。退院後は逮捕されるだろう。
「私…捕まるよね?少年院じゃなくて今度は刑務所に…」
「いや、私たちはあなたを許す。だから、幸人を愛しなさい」
「幸人…うぅ…」
「息子を過大評価するつもりじゃないけど、幸人なら、きっと幸せにしてくれるわ。何せ名付け親で生みの親は私だし。由来はね、幸せになる人であって、そして誰かに幸せを与える人でもあるの」
 どうやら幸人本人含め、母親もなかったことにしてくれるようだ。それなのに一方的に幸人のキスが欲しいなんてワガママすぎるよね?過大評価するつもりじゃないとは言っても明らかに過大評価しすぎだ。結局親バカじゃん?幸人も親バカ…そんなことを考えていたら涙も引いてきた。少し散歩に出ようとしたら急にお腹がズキズキと痛む。
「イテテテ…?」
「まだ動かない方がいい…それにしばらくは点滴で生活よ」
 そうか。あのとき死にそうな威力のパンチを喰らって生きている方がおかしい。やはり無傷ではなかったか。
「(生きてる方が奇跡って…私の耐久性どうなってんのよ?もうすぐ誕生日だってのに点滴だなんて最悪…)」
 実際死ななかったのは凛七の身体にあり、元々柔らかい身体のお陰でお腹を引っ込めることができ、内臓破裂をギリギリ免れていた。
「(幸人は腹筋バキバキで私は柔らかい…何て奇跡?)」
「ちょっと家に帰るから。また少ししたら来る」
「(あの強い目…やっぱり幸人と同じ目だ。あの人から幸人と奏人に遺伝したんだ?それに面倒見も良い)」
 凛七は点滴を見ながら考えていた。それといつになったら食べれるようになるのかも考えていた。それと同時に、ただ幸人が生きて帰ってくることだけを信じて待つことにした。

 12月16日の18時。華理州ヒルズの前に幸人はいた。いざ決戦の地へと入っていくが、やはり余興が用意されていた。それに見た目はスーツ姿や犯罪組織のような類ではなく、どうやら特殊警察のような戦闘服を着た男が数人。
「お前らは桐野の差し金か?」
「……」
 問いかけても反応がない。桐野は特殊警察すら手懐けて仲間にしたのか…
「答えねぇなら、死んでも文句ねぇよな!?」
 圧のある号令を受けて襲い掛かる差し金たち。いくら鍛えていようが、幸人に敵うはずもない。
「遅い…」
 持っていたナイフを一瞬で奪い去り、そのまま
「アキレス腱終了だ…」
「ガァーァ…!?」
 まるで光のようなスピードでアキレス腱を切断。そして流れるようにもう一人のアキレス腱も切断する。しかし同じ戦い方では飽きてきて仕方がない…幸人はナイフを捨てると、何故か両手を広げてまるで攻撃のチャンスを与えるような格好で構える。そうなれば一斉にナイフを持って心臓目掛け突っ走る。しかしそれも全て腕と脚でガードすると、次の迎撃は掴んだ勢いでそのまま全員の腕をへし折る!
 バキッ!
 豪快な音を立てて折られる腕。そうなればもうナイフを握る力はない。そして、必殺の名波流殺人拳の餌食となる…
「おいっ…桐野は上にいるな?」
「テメェ…何者…?」
「さあな…桐野が上にいるのか答えろ。答えたら殺さずに生かしといてやる…」
「あぁ!城倉さんは30階にいる…けどよ、辿り着く前に死ぬけどな…」
 それ以上何か言おうとしていたが、殺人拳の威力を諸に喰らって体力が限界を迎える。しかし30階か…このままエレベーターに乗ってすんなり辿り着けるのだろうか?やっぱり
 ズドン!
 上から突然大きな音が。何とエレベーターの天井を破壊して2人の襲撃者が現れる。狭い場所なら倒しやすいとでも思ったのか…?だがそれも甘い…
「狭い分距離が近すぎるんだよ」
 何と幸人は狭い場所を利用してまるで一人テニスのように敵をバウンドさせたのだ!そして強烈なパンチがヘルメットをも破壊する。こんなもの直で喰らったら間違いなく頭蓋骨が粉砕だ。もう一人も同様の攻撃で撃破し、エレベーターの扉をこじ開けるとまだ14階だった。14階は百貨店が並ぶ階。別のエレベーターかもしくは階段を目指して入っていると、突然銃弾の嵐が幸人を襲う!どこで調達したんであろうサブマシンガン。本来なら避けてしまうが、流石に3人の一斉射撃には物陰に隠れてリロードをする瞬間を狙う。素人ならリロードにテンパるはずだが、どうやら相当な手慣れなのか隙が見えない。この状況なら隙を見て突っ込むのは打開策ではない。だが今いる場所は百貨店が並んでいる。それに隠れている物陰だけに一斉射撃しているのなら、別の物陰に隠れたらこっちのもんだ。そのまま見えないようなスピードで場所を移し、一気に背後に回り込むと一瞬で後頭部をチョップして意識を奪う。勿論背後に回られたら焦り、仕方ないが肉盾を利用して流れ弾を防御。そのまま片手で敵目掛けてぶん投げる。
「あと一人か?」
「何なんだこの化け物…!」
 動揺のあまり銃を持つ腕が下がる。戦意がないならこれ以上痛めつける必要はないだろう。
「なぁ、君たちは犯罪組織大空と癒着あるのか?」
 すっかり忘れていたが、大空のリーダーや部隊構成などまだ明かされていなかった。
「大空は、決まったリーダーがいないんだ…一般の人で成り立ったネットの集まりでしかない…城倉さん以外は大空だ…」
「そうか。つまり雇われた闇バイト集団みたいなもんか…普通逆だろ?」
「まだ俺らは末端なんだ。最強戦力の赤峰さんは城倉さんに次ぐ強さだ。お前なんか立ち向かっても、犬死だぞ…?」
 ラスボスの前に中ボス的な奴まで用意するとは…それだけ桐野は幸人を殺すことに焦っているのか?だが幸人はどんな相手にも負けたことがない。ずっと勝ち続けてきた。
「どんな敵が相手でも、俺は勝つ。俺は負けたことなんてねぇ…」
 そう言い残すと再び走り出す。しかし世間を騒がせた犯罪組織大空は一般人で構成されていたとは思いもしなかった。この流れならてっきり桐野がリーダーかもしれないと考えていたが、むしろ奴は組織を雇ってラジコンのように操作していたに等しい。しかしちょうどいい…この際組織だろうがぶっ潰す。

 カチッ
 病院の外で煙草に火を点ける千絵。禁煙して数年経っていたが、息子と凛七のことが心配になるあまり煙草で気を紛らわす。しかし煙草を吸っても不味いとしか感じない。3口吸った程度で消した。時刻は20時。ふと夜空を見上げると、綺麗な星の他にこれまでの記憶が次々と目に映る。
「幸人は大人になったら何になりたいの?」
「ママを守る強い大人になりたい!」
 母親からしたら素晴らしい夢に思えるかもしれないが、当時は申し訳なく思っていた。何故なら元夫の虐待から息子を守ってやれず、散々痛い思いをさせてしまい、最終的に自分自身に力と強さを求めていたからだ。幼少期からヤクザと絡んで鍛えていたこと、力を求めさせてしまったことに今でも責任を感じている。幸人が高校生の頃には
「おい!お前母さんに何してんだ!?」
「幸人…!これは違って…」
「うわっ…まさか子持ちかよ?」
「離れろこの野郎が!」
「うわっ!?やめろ…やめてくれ!」
 男性は母親をナンパしていただけなのだが、困った顔をしていたため連れ去ろうとしていると思い込み、逆上して何と全治1ヶ月の大怪我を負わせてしまったのだ。抵抗する気力すらないのに馬乗りで殴り続け、あまりにもやりすぎた結果逮捕されてしまう。幸人も凛七と同じ罪を犯したことがあったのだ。初めての逮捕であって大きい罪にはならなかったが、当時息子に伝えたことがある。
「お前は弱い者イジメをするなの約束を破った。今後もし弱い者イジメをしたら息子と認めない」
 この伝えは相当心に効いたのか、暴力に頼ることを一切しなくなった。それでも幸人は誰かを守るために警察官を志し、もし母親の教えがなかったら本当にヤクザになっていたかもしれない。
「頼んでもねぇのに学校来んじゃねぇよ!おかげで笑われたじゃねぇか」
「あのまま忘れてる方があれない?で笑われたよ!せっかく届けたのに…それに親に向かって言う言葉じゃないでしょ!?」
「うるせぇよもう!とにかく頼んでないものは頼んでないんだよ!」
 高校生の頃家庭科の授業で調理実習があった際、うっかり必須のエプロンを家に忘れてしまったことがあった。それに気付いた母がわざわざ学校にまで来て届けたのだが、「お前忘れたのか?」と笑われたことに苛立ち、つい母に当たり散らしてしまう。だがその翌日、いつものように弁当の蓋を開けると、なんとそこには
「バカ!」
 と書かれた海苔がデカデカとご飯の上に乗せられており、さらにお供になるおかずが全くない弁当を入れられ、余計笑われてしまったこともあった。何とも母の子供らしいようなイタズラだ。
「母さん早く!早くしないと遅れちゃうよ?」
「今行くからちょっと待って!早いよ…」
 この記憶は高校生の幸人がアルバイトで貯めたお金で夢の国に行った記憶だ。その日まで自分の欲しい物を全部我慢して成し遂げた親孝行だった。
「カチューシャ似合うよ!」
「似合う?」
 当時母は36歳。17歳の息子にカチューシャをプレゼントされて似合うなんて言葉は照れるどころじゃなかった。今になって思い出す記憶は喧嘩した記憶もそうだが、親子2人で壁を乗り越えた記憶など、数え切れない。それだけで母のお腹がいっぱいになる。
 そして警察官になったことで幸人は力、同時に誰よりも強い優しさを持ってくれた。幸人は母親のことを偉大な存在として尊敬しているが、逆に自分自身息子を偉大な存在として尊敬している。母親自身に戦える力などない。本来自分が守るはずの存在に守られ続け、命を救われた回数はもう数えられない。
「守るって約束しただろ?」
 力強い目で初めて言われたとき、元夫に全く似ていない優しい目を感じ、あのときから名波幸人という男が完成する瞬間を感じたという。自身は元夫に暴力を振るわれて家族が離散し、幸人は息子と妻に先立たれ、思い返すと今唯一残っている家族は千絵と幸人の親子のみ。
「幸人の…バカ…」
 自然と涙が溢れてぼそっと独り言を漏らす。凛七の病室に戻ると、トイレに行っているのか彼女の姿が見えない。しかしどうも違う。明らかに点滴が抜かれているからだ。21時には完全に病室は消灯されるが、時間が近くなると消灯されることもある。まさか!
「凛七!?」
 慌てて出てみると脚を引き摺って這っているのだ!
「凛七!まだ動いちゃダメでしょ!死ぬ気!?」
「私なんていいの…!誰が止めても幸人のとこへ行く!お願いだから止めないで…」
 そんな無茶な…脚を切られた傷は包帯だけでは止血することができず、まるで蛇が去ったかのように血が続いている。このまま止めないのなら失血死を待つだけだ…
「(このまま行かせたら凛七は幸人に会えない…)凛七!待ちなさい…」
「あんただってママのくせに見届けないの!?幸人を信じるなら…何で見守ろうって思わないの!?」
「…!?」
 確かに母として信じると凛七に語ったが、今までこの目で見届けたようなことはなかったかもしれない。つい何も言い返せなくなった千絵は、不思議と凛七の腕を肩にかける。
「わかったわ…本当嫌な奴ね凛七は…」
「お互い…様よ…あんたなんてあんなイケメンな息子なん生みやがって…!(正確には奏人似のイケメンだけど…)」
「私の子なんだからイケメンになるわよ!」

 華理州ヒルズに突入して約2時間後。幾多の敵を撃破し続けていると、ようやく30階のすぐ下、28階にまで辿り着いた。既に50人以上の特殊警察を蹴散らしているのにも関わらず、傷どころかダメージすら負っていない。これで犯罪組織大空は壊滅させたと思われたが、桐野に辿り着く前の最後の余興として用意されていたのは、リーダー格のような男が現れた。
「待てコラ!お前の相手は俺だ」
 見るからに相当な殺戮者だ。身体だけじゃなく雰囲気からも血の匂いが鼻を突く。それに手に持っているのは青龍刀。中国武術の達人か?
「雑魚に用はねぇんだ…通らせてくれないか」
「大した自信じゃねぇか?その口塞いでやろうか!?」
 いきなり繰り出される青龍刀の一振り。まるで落雷のようなスピードで襲い掛かるが…
「この攻撃誰が当たるんだ…?雑魚が」
「何!?」
 攻撃を回避して手に取ったのは何とコンビニで購入できるような雨用の傘。確かに殴られたら痛いかもしれないが、そんなもので青龍刀相手に戦うのだろうか?
「傘…だと?舐めてんのか!?」
「お前が中国武術の達人なら、傘持ってる俺相手なら楽勝だろ?」
「言うじゃねぇか?なら真っ二つになって死ねやぁー!」
 幸人は何故か微笑みの表情を浮かべる。
「えっ…?」
 今何が起きた?残像どころか動いた影すら見られなかった。
 バキバキバキ…!
「うわぁーーー!?何なんだこれはァ…!?」
 何と男の両腕が粉砕骨折しているのだ!幸人は青龍刀の一撃を傘で横振りにガードするかのように薙ぎ払い、青龍刀を防御。しかしただの防御ではない。何と守るはずのガードが奴の両腕を青龍刀越しに粉々にしたのだ!
「ぐわぁー…!痛え…イテェよ!」
「雑魚が…」
 うろたえる奴にお見舞いしたのはエルボー!襲ってきた奴らを殺しはしないが、しばらく動けないように封じておくのがいいだろう。桐野との決着は2人だけでつけたいからだ。最後の敵を蹴散らした幸人は、遂に決着をつけるべき宿敵と対峙する…

「桐野!」
 息を切らして30階に辿り着くと、やはり桐野は待っていた。夜景が美しいはずなのに纏う雰囲気は殺気に満ち溢れている。
「ようやく来たか…名波幸人君」
「君付けはやめろ!お前…何で奏人、男の子を何人も殺したんだ…それに、何で女の子を誘拐して赤ちゃんを生ませたんだ…?」
 孝之介からのメッセージで事件の全てを教えられているが、どうしても確かめなきゃならないことがある。それは愛する息子を殺害した動機。
「お前、凛七ちゃんと奏人の遺伝子を使って代替品を生ませようと考えたのか?」
「フン…」
「何がおかしい…?」
「私がそんな単純な理由でガキなん殺すと思うか…?ハッハハハ…!私はな、ガキの頃から人なんて信用してないんだよ…!」
「どういうことだ?」
「そういうお前は良いよなぁ!家族に恵まれて、おまけに子供までいて…私なんて子供なんかできなかったんだ!」
「あんたが不妊体質だったからか?」
「あぁそうだよ!」
 桐野の目は哀しみに満ち溢れている。確かに心境を考えれば可哀想としか思えないが、それでも人を殺していい理由にはならない。
「お前は私のことを何も知らないだろうが、私は子供の頃から親に褒められない…いや、まるで存在しない者のように邪険にしやがったんだ…!朝起きる度にビクビク怯える毎日…私が生きてる理由は下衆親の機嫌取りでしかないのかとずっと考えてた…親に愛されない、そして必要とされない苦しみがお前にわかるか!?」
「桐野…」
 幼少期、幸人と同じく暴力を受けていたようだ。幸人は父親のみだが、桐野は両親から…同じ境遇でも桐野には親がいないに等しかった。人は親の背中を見て育つものなのに、それすらできなかったのは無念でしかない。幸人の心も痛んでくる。
「今日まで桐野賢一として生きてきたが、それももう終わりだ…私は城倉利充だ!」
「その前に聞かせろ…何で本物の桐野賢一を殺したんだ?」
「あの男はな…殺し屋の私に対して心を開く男だった。麻美が死んでから、私は次の生き甲斐が欲しかったんだ…だが、殺人鬼の私を雇いたいとこなんてない。そこで私は閃いたんだ。あの男を殺して桐野賢一として生きていけばいいってな…」
「確かに殺した…だがあんたは警察官として誇りを持ってただろ!?なのに何で殺しをやめなかったんだ…?」
「所詮警察も正義と語っておきながら、正体はただの偽善者だ。いくら犯人を逮捕しても犯人の家族からは冤罪野郎だの警察側を叩く。それのどこが正義の味方なんだ…?」
 あの城倉も一度は警察官として生きようと確かに決意していた。だがこの男はあまりにも運が悪すぎたのだ。親に必要とされず、そして妻を亡くしてから警察官になっても世間から叩かれる。狂ってしまうのも無理ない…おまけに自分は男性不妊症。そして自分より優秀に思われる名波幸人を陰で憎しみを抱き、心を破壊する理由もあって奏人を殺害したのだ。
「私は決めたんだ…私は殺し屋として生きていく!」
 城倉は上半身裸になると、胸には殺し屋組織revadoの紋章、六芒星の中に潜むナイフのタトゥーを露わにする。
「これはrevadoで生きた証だ…名波幸人、お前をここで殺す…!」
「それはこっちの台詞だ…俺もお前のような殺し屋を世に放ってはならない…そして、奏人と凛七ちゃんの分の怒りをお前に与える…!」
「あんなガキすぐに会えるさ…だがその前に、あいつのように睾丸切ってやるよぉ!」
「ウォー!」
 2人が一斉に走り出す!幸人は勢い良く飛んでハイキック…そして城倉は鋭いニーキックでガード!

 殺し屋組織revado元最強幹部 城倉利充
 お互いのキックは胴体を捉えない。そのまま着地すると、遂に因縁の決着への火蓋が切られる!幸人は凛七に腹を刺されたハンデを背負っている。相手はこれまで戦ったことのない強敵中の強敵。
「(クソが…脛に鋼鉄でもあるみたいだ)」
 城倉の脛がとんでもないくらいに硬い。そもそも幸人のハイキックを喰らったら最低でも痺れが出るはず…しかし奴にそんな素振りなどなかった。だがそんなんで怯んでなどいられない。まず肘打ちで顔面を目掛け喰らわす。だが
「フッ…!」
 当然奴は避けることを選んだ。横に避けることなど想定内。そして肘打ちから腕を伸ばして横振りのチョップで奴の首元を狙う!
「見え見えなんだよ…」
「何!?」
 何とチョップを喰らわせるはずが勢いを逆に利用されて掴まれる。そして
「グゥゥ…!?(何が起きたんだ…?)」
 奴は幸人の腕を鷲掴みにすると、腕を真っ赤にする威力の握力で握り潰される!
「ヌゥ…!(鉄パイプで殴られたみたいだ…)」
 何とか完全に潰される前に脱出したものの、あのまま喰らっていれば骨折は間違いない。どの武術にも属さない技。掴まれたら終わりだ…
「どうした?お前も最強を語るなら、本気出せよ」
「フン…ハァッ!」
「バカめ…同じ技が通用するとでも…?」
 何故か次に仕掛ける攻撃も横振りのチョップ。掴まれたら終わりなのに何故…?
「掴んだな…!?そらッ!」
「ヌゥ!?」
 何と腕を掴まれてすぐ仕掛けた次の攻撃は爪先を狙った踏みつけ攻撃!しかし
 ドーン!
「よっと…!」
 間一髪避けられた。流石伝説の殺し屋…反射神経も尋常じゃない。まだ痛むのは右腕と腹部。これくらい無傷と同じだ!
「(早いがここは泥試合か…)」
 このままじゃ埒が明かないと考えて仕掛けたのは殴り込み!高速攻撃を当てるなど難しいが、それはこっちも同じだ…
「(関節技に持ち越されたら、悔しいが対抗する術が見当たらない…こうなったら逆に奴の関節を狙うか?それとも殺人拳の出番か?)」
 こうなったら掴まれる前に打撃を一発でも当てる。そして一瞬の隙が生まれたら見逃すはずがない。
「喰らえやぁ!」
 勢い良くお見舞いしたのは腹部へのハイキック!
「ブウォーー…!?」
 ハイキックを喰らった奴は衝撃でカフェエリアのカウンターまで飛ばされる!この一撃で吐血している。相当効いているようだが、奴は至って冷静だった。厨房には包丁やフライパンなど武器になりそうな物が並んでいるが、奴は拾わずに素手の体勢で構え、そのまま幸人も厨房へ走って殴り合いを続ける。
 殴り合いは壮絶を極め、既にボロボロに近い状況でも手を緩めない。だが2人が気付いていない内に危険が迫っていた。このカフェはガスコンロではなく自動IHが使われているのだが、電源が点いただけでは加熱されない。しかし加熱の対象になる物が上に乗っかれば別だ…だが2人は気付いていない。さらに…
「そろそろお前もガキのとこに行きたいだろう…?喰らっとけ…」
 奴が仕掛けたのは強烈な金的!これはガードすることができず、諸に高威力の金的が直撃する!
「ガァーーー…!!」
 これは激痛どころじゃない。潰れたか…!?しかしそれでも立とうとする。痛みで意識が薄れそうになる中、奴が今度こそ睾丸を破壊すべく蹴り上げようとしたその瞬間!
 ドカーン!
「うわぁ!?」
「何!?うわっ!?」
 突然IHが大爆発!爆発に巻き込まれた2人は勢い良く飛ばされてしまう。幸人は飛ばされた勢いでガラスに直撃。奴も頭を強打した。爆発が起きた理由は自動IHがフライパンを加熱し、近くにサーモンを炙る用のバーナーが置かれていたことにあった。それによりバーナーも加熱され、熱が限界を越えて爆発したのだ。睾丸を蹴られた痛みと爆風による痛みで既に満身創痍。奴も限界なのか立とうにも立てない。
「クゥ…(マズイ…傷が開いた…!)」
 爆風により腹の傷が開き、足元にベトベトと血が止まらない。何とか満身創痍の状態でも立ち、奴も立ったが酷い脳震盪を起こしている。
「まだ潰れてないか…なら今度こそ潰してやるよ」
 痛みを振り切って幸人に突っ走り、そのまま全体重を込めた金的を喰らわせようとしたその瞬間!
「ブゥーー!」
「何…!?クソッ目が…」
 何と幸人は吐血を我慢していた!そして奴が攻撃する瞬間を待ち、顔面を目掛け溜まっていた分の血を吐き出したのだ!幸人の吐血が奴の目に直撃!そして
「テメェも喰らっとけよ…!」
「…!?」
「オラァーー!」
「グゥオォォーー…!」
 幸人の金的が奴の股間にめり込んだ!一切躊躇のない金的に奴の両睾丸は一撃で破裂。だが両睾丸が潰れた程度で奴の力は弱まらなかった。
「ハァ…ハァ…!城倉…これで終わりだ…」
「あぁ…決着をつけるぞ…!」
 幸人は腹部から血を流し、爆風で叩きつけられた衝撃で背骨の一部が折れている。城倉は両睾丸が破裂し、頭部から相当な血を流している。このまま戦わなくても確実にどちらかが死ぬ。
 果たしてこの勝敗の行方はどうなるのだろうか?そして今決着のとき!名波幸人と城倉利充の決着は意外な結末を迎えることになる。
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