最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル

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第118話

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「あ、そうだ。モルガの事を紹介したい人が居るというか、たまに訓練を見てあげて欲しい人が居て」
「今のぼくは何だってやるよ!」
「いや、それは大丈夫。たぶん大変なことになるから」

 一応モルガは有名な魔術師なはずだし、簡単に色々教えてもらっちゃあんまり良くない気がする。

「これまでは鍛冶師とサポーターをしてて、これからはサポーターじゃなくて冒険者をしたいって友達がいるんだけど、たまに教えてあげて欲しいなって」
「そんなことならお安い御用だね」
「なら多分そこにあと1人今後追加されるかも」
「ちなみに今からその人に会える?」
「そうだな。多分今の時間はお店もそんなに忙しくないだろうし」

 ということでキプロの店にやって来た。

「キプロー」
「ユーマさん! どうされました?」
「ハティにはまだキプロと一緒に冒険者をするか聞けてないんだけど、その前にこれから冒険者としてのキプロ達を導いてくれる素敵な師匠を連れてきた」
「え、ユーマさん以外にも教えてくれる方が居るんですか!」
「では冒険者の師匠、モルガさんです」
「魔術師モルガとはこのぼく、モルガだよ!」
「き、聞いたことあります! 貴方がモルガさんなんですね!」

 やっぱりモルガは有名らしい。

「へぇ、モルガってホントに有名なんだな」
「ぼくもこんな反応を返してくれたら、やっぱり嬉しいね」
「でも僕、魔法は使えないですし、そもそも戦闘のセンスがあんまりなくて」
「それを俺とモルガでこれから見て教えるから。あとまだ声かけてないけどハティも冒険者どころかサポーターの経験も全然ないし、キプロは教えてもらえてラッキーくらいの気持ちで良いよ」
「ぼくは魔法が得意だけど、教えるだけなら魔法以外の冒険者の戦い方も色々知ってるし任せて」
「心強いです!」
「一応毎朝8時か9時あたりに、俺の家の裏でモニカさんと隣の家のエマちゃんっていう女の子が特訓してるんだけど、来れる日はその時間にキプロも来てもらって、30分から1時間くらい戦い方を教えるってのはどう?」

 これはキプロもハティもエマちゃんも丁度良いライバルになると思ったからだ。まぁエマちゃんは冒険者目指してないけど、競う相手がいる方が面白いと思うし。

「分かりました!」
「ぼくもそれでいいよ」
「でも無理に毎日来なくて良いからね、鍛冶屋を優先してもらって。もう少し早く来たら朝ご飯食べてるから、もし皆で食べたかったら7時過ぎくらいに来てよ。別に訓練はしないけど朝ご飯だけ食べに来るでもいいし」
「ありがとうございます!」
「ユーマは人たらしだね」
「キプロも最近1人でここに来て、前は親方とかと生活してただろうからね。急に1人で生活するのは寂しいでしょ」
「あの、僕、本当にご飯だけ食べに行ったりしますよ!」
「良いよ。夜ご飯も寂しかったら来て良いし、俺が居なくてもゴーさんが絶対に居るから」
「僕、僕ぅ、ありがとうございまずぅ」

 キプロが泣いてしまった。

「ユーマが泣かせた」
「いや、そんな人聞きの悪い言い方やめてよ」
「でもぼくも少しだけキプロの気持ちは分かるよ。気軽に会いに行っていい場所は必要だと思うから」
「俺はいつでも来て良いって言ってたんだけどな」
「ずみまぜん。僕、この前みなざんでご飯食べたのがだのじぐで、なつがしぐなっぢゃっで」

 確かにゴーさんが料理を作り過ぎた時の食事会は楽しかったな。もしかしたらそれでキプロはここに来る前の生活を思い出したのかもしれない。

「まぁそう言うことだから、いつでも来て良いし、俺が居なかったら新しい師匠にも色々相談とかしに来て。モルガもうちに住むことになったんだけど、しばらくは遠くに行ったりせず北の街に居るでしょ?」
「ぼくはそのつもり」
「だってさ」
「わがりまじだ」

 泣いているキプロを置いていくのは申し訳ないが、そろそろ帰ることにする。

「じゃあまたな」
「ありがどうございまじだ」
「これからよろしく」

 こうしてキプロの店を出て家に帰りながらモルガと話す。

「他人事とは思えなかった」
「モルガも一人暮らししてたらあぁなってたってこと?」
「ぼくの場合はまた村に帰ってた気がする」
「なるほどね」
「あ、ユーマ、色々買い物したいから先帰ってて」
「あぁ、じゃあ俺もちょっと出かけてきていい? 長くても1時間で帰るから」
「分かった」

 そう言ってモルガとは家へ帰っている途中で別れた。

「今の時間なら家に居る気がするし、ハティにも声かけに行くか」
「クゥ」「アウ」「……!」「コン」

 ということでクリスタルへ向かい、ハティの住む街まで移動する。

「すみません、ユーマです。ハティ居ますか?」

 何回来ても貴族の家というのは緊張する。

「ユーマ様、お久しぶりです」
「サイさんこんばんは。ハティって今居ますか?」
「ハティお嬢様は少し前に帰ってこられましたが、私としましては今日はもうサポーターをハティお嬢様にさせるわけには「ちょっと待って」はい」

 確かに俺は遅い時間にしかハティを連れ回していなかったことを思い出す。

「少し話があって来ただけです。俺もすぐ帰るんで」
「失礼しました。私が勝手に勘違いをしてしまっただけですね」
「いや、過去の俺の行動を思い返すと、今からハティをサポーターとして連れ出すのは全然ある話なので、間違ってはないですよ」
「すぐに呼んできますので中でお待ち下さい」
「お、お邪魔します」

 前も来たが流石貴族の家、部屋もいっぱいあるし、この部屋も広い。

「ユーマさん! どうされましたか? 今からサポーターが必要なら自分は行けます!」
「いや、そうじゃないから。あとサイさんにハティがさっきまでサポーター頑張ってたって聞いたし、その辺の管理もちゃんと自分で出来るようにならないと」
「うっ、でも、自分はユーマさんに誘われるなら絶対に行きたいです!」

 うん、これからは絶対にサイさんに確認してからハティを誘うことにしよう。

「今日は残念ながらサポーターの話じゃなくて、俺の知り合いのサポーターがハティと同じように冒険者を目指したいって言ってて、もし良かったらその友達と一緒に冒険者目指してみる? ってお誘いで来たんだ」
「自分はまだサポーターも全然出来ないですけど」
「それはこれから経験をしていくんだし、そもそもハティのことは相手にも伝えてるよ。ちなみにそのサポーターの友達はキプロっていうんだけど、鍛冶師もしてるから毎日ハティと一緒に探索することは出来ない。だからこっちで今充実してるなら、無理にパーティーを組んでほしいとは言わないよ」

 そういうとハティは黙って考え込んでしまった。

「一応毎朝8時か9時くらいに俺の家の裏で戦闘訓練を1時間弱くらいする予定だから、そっちも来れる時は来てくれて良いよ。これはキプロとパーティーを組むとか関係なく来て良いからね。ちなみに俺以外に魔術師のモルガも教えてくれることになってて、同じ場所で隣の家の女の子と訓練してる元騎士のモニカさんって人も居るから、仲良くなったら少しは教えてもらえるかもよ」
「あの、ユーマさんから見て自分はどうすれば良いと思いますか?」
「パーティーを組む話? それとも朝の訓練に参加する話?」
「どっちもです」

 俺はハティがこっちでどういうことをしているのか知らないし、ハティがどれくらい自由に動けるのかも分からないから、あんまりアドバイスはし辛いんだけど。

「俺がハティの立場だったらって話をするね。まずここから北の街へ毎日通うのは大変だからそれは無し。で、まず1つ無難な選択肢で言うと、あっちで泊まらずに全部こっちで寝るとしたら、夜の来る日と夜の来ない日が3日ずつ続いてるし、夜の来ない日で北の街に行くかな。それならたぶんお父さんとお母さんも許可を出しやすいと思うから。これが1つ目。で、出来るかわからないけど、俺だったらこうするっていう選択肢として、もうこの家から行って帰ってとかせずに、北の街にしっかりと寝泊まりして長期間行っちゃうこと。やっぱりこっちよりもあっちの方がモンスターが倒しやすいし、初心者には環境的にも合ってるかなって思うから」
「なるほど」
「あっちで寝泊まりして、朝の訓練も毎日行って、それが終わったら冒険者ギルドに行ってサポーターをして、たまにキプロとパーティーを組んで探索に行く。慣れてきたら自分でも冒険者ギルドの依頼を受けてみて、臨時のパーティーを組んだりしてみる。それで実力がついてきたらこっちで活動する、とかに俺だったらなるのかな?」

 俺からするとハティにはこの辺りのモンスター達は強過ぎる気がする。もう俺はハティもプレイヤーと同じように始まりの街から順番に行けば色々やりやすいなと思うんだけど、流石にそれは無理なんだろうし、そうなると北の街で頑張るのは結構良い選択肢だと俺は思う。

「……自分、北の街に行きたいです! パーティーも組みたいですし、朝の訓練にも参加したいです!」
「それは北の街で寝泊まりするのか、それとも寝泊まりはこっちでするのか」
「自分は北の街でしばらく活動したいです!」
「そっか。そう言ってますけど、サイさんはどうですか?」
「ハティお嬢様がやりたいことを、私は応援するのみです」

 専属の護衛からはオッケーが出たし、あとはハティの両親か。

「じゃあキプロにハティがパーティーを組みたいって言ってることは伝えておくね。北の街に来たら俺の家かキプロの鍛冶屋に行くといいよ。今から場所は教えるから」
「分かりました!」
「お父さんとお母さんの説得は頑張ってね」
「お父様もお母様も許してくれるはずです」
「もし泊まる所に不安があるなら、最悪俺の家には泊まれるから。サイさんも俺の寝室で良いなら寝ることができますし」
「ありがとうございます」
「まぁ夜が来ない日に北の街へ来れないなんてことはないと思うから、結果がどうなろうともハティが来るの楽しみにしてるよ」
「はい! 絶対に北の街に住んでみせますから、待っててください!」

 こうしてハティがキプロとパーティーを組むことに加え、朝の訓練にも参加することが決まった。

「なんかいつの間にかちょろっと訓練するつもりが、結構ちゃんとしたものになってきたな」

 街のクリスタルを目指して歩きながら、俺はハティの両親への説得が上手く行くことを願うのだった。


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