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第四章 何かを護る、たった一つの条件
第十一話 空白の三ヶ月⑧
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「先程貴方は、色んなものに変わることが出来るのが魔力――と言ったわね。でも、今の解釈ではそれとはちょっと違ってて、正しくは『万物の代替』――物質だけでなく、それは概念にも変わりうるの」
本日、何度目とも分からない疑問が頭を過ぎる。
雰囲気としては、それは凄いことだと認識出来るけど、言われていることがさっぱり分からない。
「順を追って話しましょう。まず、魔法に必要な条件は魔力と想像力。想像力が魔力に形を与えることで、現実に干渉するようになるわよね」
幾度となくされた説明に私は頷く。
大丈夫、そこはまだ理解出来る。
「そして、魔力は私たち七種族なら誰もが持っている。それは例外なく。だとしたら、それでも魔法を使えない人たちの原因は想像力の欠如ということになるわ」
そこも問題ない。
何せ、さっきも話した内容なのだから。
すると、そのタイミングでナディアお姉さんは指をピンと立てた。
「そこである人は考えたの。魔力が万物の代替になり得るのなら、想像力という概念にさえもなり得るのではないか――ってね」
「――――えっ……?」
……ちょっと待って欲しい。
思ってもいないようなことを急に言われて、頭がパンクしている。
魔力が何にでも変化するのだから、魔法に必要な想像力にもなれるだろう。
……うん、その意味は分かる。大丈夫。
けど、それって何かおかしいような…………。
「ふふ、見事に混乱しているわね。いいわよ、落ち着くまで考えて、気になることがあれば聞きなさい」
そう提案されたので、私は遠慮なく聞いてみることにした。
「じゃあ……想像力って、炎とか氷みたいに形があるものじゃないから、生み出せたとしても難しいんですよね?」
「その通りよ。そんな芸当が出来る人なんて、この世に十人も居ないんじゃないかしら」
よし、まずは合ってた。
この調子でいってみよう。
「ということは、その人は魔法が上手に使えるってことですよ……ね? それって無駄――というか意味のないことじゃないんですか?」
概念さえも生み出せるような十二分の想像力があるなら、それで魔法を使えば早いはず。わざわざそんな工程など必要ないのではないか。
そう思って尋ねてみると、一瞬だけキョトンとした顔を向けられ、次に愉快そうに笑われる。
「あの……何か変なことでも言いましたか?」
意味もわからず笑われるのは、不安になって嫌い。
レスもたまにそういう所があるけど、こういう部分は似てほしくなかった。
ひとしきり笑い、うっすらと目の端に浮かぶ涙を指で落とすと、その声音は機嫌の良さそうなものへと変わる。
「いいえ、全く。むしろ感心しているくらいよ。よく今の説明だけで、そのことを思いついたわね」
「偉いわー」と頭を撫でられた。
悪い気分ではないけれど、続きを教えて欲しい。
「そうだった。貴方の言った通り、普通ならそれで終わりよ。出来るけど、意味が無い。だけど、それを思いついた人はこうも考えていたの。『じゃあ、その生み出した想像力に他の誰かが魔力を流したら、誰でも魔法が使えるんじゃないか?』ってね」
「――あっ……」
言われて、思わず声が漏れる。
それくらいには納得出来る理論であり、盲点だった。
「私も指摘されるまで気付かなかった。……いえ、概念を魔法で生み出そう――ということ自体、思い付かなかったわ。…………けど、まだ課題はあったの」
「課題……?」
「そう……想像力を魔法で生み出し、それに他人が魔力を流せば誰でも魔法が使えるようになった。でも、これだけでは常に近くで想像力を生み出し続ける人が必要になってくるわ。それなら、その人が個人で戦った方が早い。結局、無駄なのよ」
それもまた当然の話だった。
誰にでも魔法が使える方法を編み出したのは凄いと思うけど、なかなか上手くはいかないものらしい。
「さて、ここで問題です。一体、どうしたでしょう?」
そして、唐突に始まるクイズ。
でも、ちょっと面白そうなので考えてみる。
まずは頭の整理から。
魔法には魔力と想像力が必要で、魔力は誰しもが、想像力は個人差で存在している。その想像力を魔力で生み出すことは出来た。けれど、好きに魔法を使うなら隣には想像力を生み出してくれる人が必要……っと。
…………あれ?
でもそれって、違う魔法を使うならってことなのかな?
「質問、いいですか?」
「どうぞ」
手を挙げると、ナディアお姉さんは掌を上にして私を指し示してくれる。
「一度生み出した想像力で同じ魔法を使う時って、何度でも出来るんですか?」
「えぇ、想像力は魔力を変質させるための触媒でしかないから」
なるほど……生み出された想像力はなくならないんだ。
じゃあ、それをそのまま魔法を使えない人が持ち運べられたらいい……のかな?
でも、想像力って形がないよね……。
目に見えないものを運ぶ…………魔導具――そういえば、レスが『魔法を導く道具』って言ってたっけ……。
…………うん?
……………………道具?
「――あ、そっか……道具にして持っていけばいいんだ……!」
「その通り。より正しく言うなら、既存の道具に刻み込んだの。そうすれば、あとは魔力を流すだけで誰もが魔法を使うことが出来る夢のアイテム――魔導具の誕生よ」
はぇー、すごい……。
「以上があらまし……というか概要ね。他には? 質問はあるかしら?」
聞かれた私は首を振る。
今気になっていたことは全部聞いたし説明に入っていた。あとはその都度尋ねていけば問題ない気がする。
「それじゃ、いよいよ魔法の修行をするわけだけど――ルゥちゃん、魔力の操作が苦手でしょ?」
…………なんで分かったんだろう。
その通りで、私は魔力の感覚というものが上手く掴めていない。
「なんで分かったか、って? そんなもの、貴方の魔力の流れを見ていれば分かるわ」
「魔力の、流れ……?」
過去にレスからも教えられたため、魔力が身体の表面上を流れているのは知っている。
けれど、それって見えるものなのだろうか……。早速、質問してみよう。
「ごめんなさい、見えるというのは言葉のあやで正しくは感覚で分かるの。オーラ、気迫、気配、覇気……どれかの言葉に聞き覚えは?」
「あっ、あります」
人の存在感のようなもののことだろう。
「それって実は全部、魔力なのよ。普段から身体を漂う魔力が気配、纏う魔力を増やせば気迫に変わるし、相手に向ければ殺気となる。だから、しっかりと制御できている人ほど魔力は滞りなく流れ、澄んだ気配をしているわ」
ということは、私の魔力の流れは淀んでおり、安定のしてない気配をしているんだ……。
「それって、どうすればいいんですか?」
いきなり本題を尋ねる。
グッと堪えたナディアお姉さんは目を見開き、ただ一言――。
「――座りなさい」
「…………えっ……?」
聞き間違い、だっただろうか。
「座るだけでいいわ。ひたすらにずっと」
「…………それ、だけ?」
「それだけよ」
どうやら、私の聞き間違いではないようだ。
意味の無いことは言わない人だと理解しているつもりだけど……何で座るの?
「座ってジッと、指先さえも動かさずに自然体でいるだけでいいの。そうすれば、段々と自然の気配を感じるようになり、周囲の気配に気を配れるようになり、勝手に魔力を感じ取れるようになるわ」
なる、ほど……?
聞いても理屈はよく分からなかった。けれど、何はともあれやってみるしかない。
私は手頃な岩にチョコンと腰掛けると、力を抜いて目を閉じた。
「――あぁ、そうそう。トイレや水分補給なんかの一大事以外では、今日一日ずっとそれを維持してなさい」
あれ……もしかして、思いのほか辛くなりそうかも…………。
本日、何度目とも分からない疑問が頭を過ぎる。
雰囲気としては、それは凄いことだと認識出来るけど、言われていることがさっぱり分からない。
「順を追って話しましょう。まず、魔法に必要な条件は魔力と想像力。想像力が魔力に形を与えることで、現実に干渉するようになるわよね」
幾度となくされた説明に私は頷く。
大丈夫、そこはまだ理解出来る。
「そして、魔力は私たち七種族なら誰もが持っている。それは例外なく。だとしたら、それでも魔法を使えない人たちの原因は想像力の欠如ということになるわ」
そこも問題ない。
何せ、さっきも話した内容なのだから。
すると、そのタイミングでナディアお姉さんは指をピンと立てた。
「そこである人は考えたの。魔力が万物の代替になり得るのなら、想像力という概念にさえもなり得るのではないか――ってね」
「――――えっ……?」
……ちょっと待って欲しい。
思ってもいないようなことを急に言われて、頭がパンクしている。
魔力が何にでも変化するのだから、魔法に必要な想像力にもなれるだろう。
……うん、その意味は分かる。大丈夫。
けど、それって何かおかしいような…………。
「ふふ、見事に混乱しているわね。いいわよ、落ち着くまで考えて、気になることがあれば聞きなさい」
そう提案されたので、私は遠慮なく聞いてみることにした。
「じゃあ……想像力って、炎とか氷みたいに形があるものじゃないから、生み出せたとしても難しいんですよね?」
「その通りよ。そんな芸当が出来る人なんて、この世に十人も居ないんじゃないかしら」
よし、まずは合ってた。
この調子でいってみよう。
「ということは、その人は魔法が上手に使えるってことですよ……ね? それって無駄――というか意味のないことじゃないんですか?」
概念さえも生み出せるような十二分の想像力があるなら、それで魔法を使えば早いはず。わざわざそんな工程など必要ないのではないか。
そう思って尋ねてみると、一瞬だけキョトンとした顔を向けられ、次に愉快そうに笑われる。
「あの……何か変なことでも言いましたか?」
意味もわからず笑われるのは、不安になって嫌い。
レスもたまにそういう所があるけど、こういう部分は似てほしくなかった。
ひとしきり笑い、うっすらと目の端に浮かぶ涙を指で落とすと、その声音は機嫌の良さそうなものへと変わる。
「いいえ、全く。むしろ感心しているくらいよ。よく今の説明だけで、そのことを思いついたわね」
「偉いわー」と頭を撫でられた。
悪い気分ではないけれど、続きを教えて欲しい。
「そうだった。貴方の言った通り、普通ならそれで終わりよ。出来るけど、意味が無い。だけど、それを思いついた人はこうも考えていたの。『じゃあ、その生み出した想像力に他の誰かが魔力を流したら、誰でも魔法が使えるんじゃないか?』ってね」
「――あっ……」
言われて、思わず声が漏れる。
それくらいには納得出来る理論であり、盲点だった。
「私も指摘されるまで気付かなかった。……いえ、概念を魔法で生み出そう――ということ自体、思い付かなかったわ。…………けど、まだ課題はあったの」
「課題……?」
「そう……想像力を魔法で生み出し、それに他人が魔力を流せば誰でも魔法が使えるようになった。でも、これだけでは常に近くで想像力を生み出し続ける人が必要になってくるわ。それなら、その人が個人で戦った方が早い。結局、無駄なのよ」
それもまた当然の話だった。
誰にでも魔法が使える方法を編み出したのは凄いと思うけど、なかなか上手くはいかないものらしい。
「さて、ここで問題です。一体、どうしたでしょう?」
そして、唐突に始まるクイズ。
でも、ちょっと面白そうなので考えてみる。
まずは頭の整理から。
魔法には魔力と想像力が必要で、魔力は誰しもが、想像力は個人差で存在している。その想像力を魔力で生み出すことは出来た。けれど、好きに魔法を使うなら隣には想像力を生み出してくれる人が必要……っと。
…………あれ?
でもそれって、違う魔法を使うならってことなのかな?
「質問、いいですか?」
「どうぞ」
手を挙げると、ナディアお姉さんは掌を上にして私を指し示してくれる。
「一度生み出した想像力で同じ魔法を使う時って、何度でも出来るんですか?」
「えぇ、想像力は魔力を変質させるための触媒でしかないから」
なるほど……生み出された想像力はなくならないんだ。
じゃあ、それをそのまま魔法を使えない人が持ち運べられたらいい……のかな?
でも、想像力って形がないよね……。
目に見えないものを運ぶ…………魔導具――そういえば、レスが『魔法を導く道具』って言ってたっけ……。
…………うん?
……………………道具?
「――あ、そっか……道具にして持っていけばいいんだ……!」
「その通り。より正しく言うなら、既存の道具に刻み込んだの。そうすれば、あとは魔力を流すだけで誰もが魔法を使うことが出来る夢のアイテム――魔導具の誕生よ」
はぇー、すごい……。
「以上があらまし……というか概要ね。他には? 質問はあるかしら?」
聞かれた私は首を振る。
今気になっていたことは全部聞いたし説明に入っていた。あとはその都度尋ねていけば問題ない気がする。
「それじゃ、いよいよ魔法の修行をするわけだけど――ルゥちゃん、魔力の操作が苦手でしょ?」
…………なんで分かったんだろう。
その通りで、私は魔力の感覚というものが上手く掴めていない。
「なんで分かったか、って? そんなもの、貴方の魔力の流れを見ていれば分かるわ」
「魔力の、流れ……?」
過去にレスからも教えられたため、魔力が身体の表面上を流れているのは知っている。
けれど、それって見えるものなのだろうか……。早速、質問してみよう。
「ごめんなさい、見えるというのは言葉のあやで正しくは感覚で分かるの。オーラ、気迫、気配、覇気……どれかの言葉に聞き覚えは?」
「あっ、あります」
人の存在感のようなもののことだろう。
「それって実は全部、魔力なのよ。普段から身体を漂う魔力が気配、纏う魔力を増やせば気迫に変わるし、相手に向ければ殺気となる。だから、しっかりと制御できている人ほど魔力は滞りなく流れ、澄んだ気配をしているわ」
ということは、私の魔力の流れは淀んでおり、安定のしてない気配をしているんだ……。
「それって、どうすればいいんですか?」
いきなり本題を尋ねる。
グッと堪えたナディアお姉さんは目を見開き、ただ一言――。
「――座りなさい」
「…………えっ……?」
聞き間違い、だっただろうか。
「座るだけでいいわ。ひたすらにずっと」
「…………それ、だけ?」
「それだけよ」
どうやら、私の聞き間違いではないようだ。
意味の無いことは言わない人だと理解しているつもりだけど……何で座るの?
「座ってジッと、指先さえも動かさずに自然体でいるだけでいいの。そうすれば、段々と自然の気配を感じるようになり、周囲の気配に気を配れるようになり、勝手に魔力を感じ取れるようになるわ」
なる、ほど……?
聞いても理屈はよく分からなかった。けれど、何はともあれやってみるしかない。
私は手頃な岩にチョコンと腰掛けると、力を抜いて目を閉じた。
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