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December
12月4日(水) 中間考査・三日目
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「――ってことが、昨日あった……」
まだまだ試験は続く、三日目の朝。
今日の予定は数II、自習、コミュニケーション英語の三本立てということで、それに備えて最終確認をしている者もいれば、俺たちのように話に興ずる者もいる。
「それは残念だったね」
「ごめんね……私が試験範囲のことを聞いてなかったら、かなちゃんは間に合ったのに……」
そんな中で、昨日に起きた出来事を残念そうに語る幼馴染のかなたに対して翔真が憐れみを込めて、菊池さんは申し訳なく返事をするため、俺が横から口を挟んだ。
「いや、嘘つけ。ちゃんと三人分、あっただろ……」
二人で食い違う意見。
真実が分からず首を傾げる彼らに向けて、その証拠を打ち明けた。
「だって、作った一ホールの半分をそっちに届けたんだぞ。しかも、人数分として三つに分けた状態で――皆で食べるよう、かなたのお母さんに伝えたし……」
だからそんな、ものの数時間が空いたくらいでなくなるはずがない。
もし本当に食べたのだとしたら、余程食い意地が張ってるということになるし、少なくとも俺からの頂き物だと正直に言いはしないだろう。
もっと大人らしく、小狡く、コンビニで買ったと誤魔化せば済むはずだ。
そう言及すれば、翔真と菊池さんの目は再度かなたの方へと向き、件の彼女はそっと目を逸らす。
「…………ん、その節はとても美味しゅうございました」
その態度には、話を聞いていた全員がさすがに苦笑い。
つかなくてもいいようなどうでもいい嘘であり、嘘だと分かったところで何も変わらない些末な事実にどう反応したらいいか分からないようだ。
「というか……そういえば俺、そらのケーキを食べたことないな」
「あっ、私も……。かなちゃんから話は聞くけど……」
ともすれば、思い出したように翔真は呟いた。
菊池さんも同じ意見のようで、はっと気付いたように声を漏らす。
「あー……まぁ、機会がないからな」
ただの一学生が学校に、それも手作りケーキを持ち寄る用事なんてそうそうありはしない。
それこそ、誰かの誕生日を祝うとかそういう時なのだろうが……前の菊池さんの誕生日の際は却下されてしまったし。
加えて、箱が潰れるために鞄には入れられず、手で持って登校するには色々と不自然すぎることを考えれば、何もおかしいことはなかった。
「でも、一度くらいは食べてみたいな」
「う、うん……とっても美味しいって聞くし……」
――と、言われてもなぁ……。
難しい問題なだけに、返事に困る。
確約はできず、されど断るのも憚られるこの状況に頬を掻いていると、両肩に細くしなやかな指が静かに置かれた。
「あら……それは私も興味ありますね」
突然の登場に、周囲の皆は瞠目する。
俺もまた、零れるため息を押し殺して、振り返った。
そこにいたのは、我が担任こと――三枝悠教諭。
「その時はぜひ、私の分もよろしくお願いします」
ニッコリといつもの笑みを浮かべてそう囁いてくれば、始業のチャイムは鳴り響き、俺が何かを言い返す暇もなく軽快な足取りで教壇へと上がっていく。
……どんだけ食べたいんだよ、この人。
俺のこと好きすぎでしょ……。それとも何? 甘いもの好きですか? 結構、乙女な部分もあるんですね!
代わりに、心の中でそんな軽口を呟くと、頬杖をついて窓の外を見た。
だがまぁ、三人にそこまで言われては、一度くらいは振舞ってあげたいなぁ……という心情も生まれてくる。
さて、一体どうするべきか……。
試験という大々的な問題を前にして、本格的に悩み始める俺であった。
まだまだ試験は続く、三日目の朝。
今日の予定は数II、自習、コミュニケーション英語の三本立てということで、それに備えて最終確認をしている者もいれば、俺たちのように話に興ずる者もいる。
「それは残念だったね」
「ごめんね……私が試験範囲のことを聞いてなかったら、かなちゃんは間に合ったのに……」
そんな中で、昨日に起きた出来事を残念そうに語る幼馴染のかなたに対して翔真が憐れみを込めて、菊池さんは申し訳なく返事をするため、俺が横から口を挟んだ。
「いや、嘘つけ。ちゃんと三人分、あっただろ……」
二人で食い違う意見。
真実が分からず首を傾げる彼らに向けて、その証拠を打ち明けた。
「だって、作った一ホールの半分をそっちに届けたんだぞ。しかも、人数分として三つに分けた状態で――皆で食べるよう、かなたのお母さんに伝えたし……」
だからそんな、ものの数時間が空いたくらいでなくなるはずがない。
もし本当に食べたのだとしたら、余程食い意地が張ってるということになるし、少なくとも俺からの頂き物だと正直に言いはしないだろう。
もっと大人らしく、小狡く、コンビニで買ったと誤魔化せば済むはずだ。
そう言及すれば、翔真と菊池さんの目は再度かなたの方へと向き、件の彼女はそっと目を逸らす。
「…………ん、その節はとても美味しゅうございました」
その態度には、話を聞いていた全員がさすがに苦笑い。
つかなくてもいいようなどうでもいい嘘であり、嘘だと分かったところで何も変わらない些末な事実にどう反応したらいいか分からないようだ。
「というか……そういえば俺、そらのケーキを食べたことないな」
「あっ、私も……。かなちゃんから話は聞くけど……」
ともすれば、思い出したように翔真は呟いた。
菊池さんも同じ意見のようで、はっと気付いたように声を漏らす。
「あー……まぁ、機会がないからな」
ただの一学生が学校に、それも手作りケーキを持ち寄る用事なんてそうそうありはしない。
それこそ、誰かの誕生日を祝うとかそういう時なのだろうが……前の菊池さんの誕生日の際は却下されてしまったし。
加えて、箱が潰れるために鞄には入れられず、手で持って登校するには色々と不自然すぎることを考えれば、何もおかしいことはなかった。
「でも、一度くらいは食べてみたいな」
「う、うん……とっても美味しいって聞くし……」
――と、言われてもなぁ……。
難しい問題なだけに、返事に困る。
確約はできず、されど断るのも憚られるこの状況に頬を掻いていると、両肩に細くしなやかな指が静かに置かれた。
「あら……それは私も興味ありますね」
突然の登場に、周囲の皆は瞠目する。
俺もまた、零れるため息を押し殺して、振り返った。
そこにいたのは、我が担任こと――三枝悠教諭。
「その時はぜひ、私の分もよろしくお願いします」
ニッコリといつもの笑みを浮かべてそう囁いてくれば、始業のチャイムは鳴り響き、俺が何かを言い返す暇もなく軽快な足取りで教壇へと上がっていく。
……どんだけ食べたいんだよ、この人。
俺のこと好きすぎでしょ……。それとも何? 甘いもの好きですか? 結構、乙女な部分もあるんですね!
代わりに、心の中でそんな軽口を呟くと、頬杖をついて窓の外を見た。
だがまぁ、三人にそこまで言われては、一度くらいは振舞ってあげたいなぁ……という心情も生まれてくる。
さて、一体どうするべきか……。
試験という大々的な問題を前にして、本格的に悩み始める俺であった。
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