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December
12月6日(金) 三者面談のお知らせ
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「皆さん、行き渡りましたね?」
試験が終わり、されど採点待ちで結果はまだ返ってこない空白の一日。
試験前で止まっていた授業が再開され、いつも通りの時間割りで今日という日が過ぎ去っていく中で、帰りのSHRという時間帯に一枚のプリントが配られた。
「来週から行われる三者面談――その最終日程が決まりましたので、お知らせします。しっかりとご両親にもお伝えして下さいね」
そう言われ、ペラリとした薄い用紙に目を向ければ、日付と時間とで組まれた表の中にズラリとクラスメイトの名前が刻まれている。
最終日程と銘打っているだけあり、お母さんの希望通りの日時だ。
……まぁ、それはここにいる全員がそうなのだろうけど。
しかし、五ヶ月くらい前に行ったばかりだというのに、少し早すぎやしないだろうか?
中間テストの結果を見せるという意味でのこの時期なのかもしれないけど、インターバルが短すぎる。というか、夏に行う意味があったのか甚だ疑問である。
などと、来週の催しに消極的になる私は、プリントを机に置いて前後のスペースを利用し、グッと身体を伸ばした。
「この三者面談ですが、七月にも行ったということで『やっても意味が無い』、『そんなすぐには意志は変わらない』と思っている人も多いと思います」
――が、あまりにもタイムリーな話題に心を読まれたのかと動きを止めてしまう。
恐る恐る、慎重に教壇へと視線を向ければ、先生は全く別の方向を向いて話していた。……一先ず安心。
「確かに……皆さんはまだ二年生であり、あと一年あります。中学生の頃であれば、この時期に一回行えば事足りました。けれど、皆さんはもう高校生なんです。義務教育の時代は終わり、これから先は進学か就職か……自分の道を自分で見つけていかなくてはなりません」
そう先生は語るけれども、それに水を差すようだけれども、このクラスの九割九部は進学だろう。
でなければ、わざわざ特待コースを選んだ意味がない。
それでも敢えて、そのように発言しているのは他学科――工業科の生徒らが私たちとは逆で、就職をメインに卒業しているからに他ならない。
「そのために、皆さんの今の状態を先生とご両親と、そして皆さん自身とで共有していく必要があるのです。何を目標にし、そこへ至るためにはどうすれば良いのか……幾重にも広がる道を模索し、答えを見つける――そういう場なのです」
目標……か。
思えば、何もない。
進学――という二文字を薄ぼんやりと意識しているだけで、その学校の中身にまではまるで目を向けていない。
何故なら、なりたい職業も叶えたい夢も私の中にはないから。
だから、適当な文系の学部に入ればそれでいいし、大学選択もそらに合わせておけば何も問題はないのだ。
言うなれば、それが私の道。
「――なので、面倒なんて思わずに積極的に参加してくださいね。学校生活の話などはご両親に行いますが、主役は皆さんなのですから。誰でもない、皆さん自身の意思をぜひ聞かせてください」
ふとその時、パチリと目が合った――気がした。
とはいえ、私は別に人の視線に敏感というわけでもなく、どこぞの幼馴染のように自分が見られているか・見られていないのかを判定できるような特殊能力も持ってはいない。
恐らくは気のせいだろう。
あの先生のことだから、むしろそのそらに目を配った可能性の方が高いまである。
だって、私を注視する理由なんて何にもないのだから。
試験が終わり、されど採点待ちで結果はまだ返ってこない空白の一日。
試験前で止まっていた授業が再開され、いつも通りの時間割りで今日という日が過ぎ去っていく中で、帰りのSHRという時間帯に一枚のプリントが配られた。
「来週から行われる三者面談――その最終日程が決まりましたので、お知らせします。しっかりとご両親にもお伝えして下さいね」
そう言われ、ペラリとした薄い用紙に目を向ければ、日付と時間とで組まれた表の中にズラリとクラスメイトの名前が刻まれている。
最終日程と銘打っているだけあり、お母さんの希望通りの日時だ。
……まぁ、それはここにいる全員がそうなのだろうけど。
しかし、五ヶ月くらい前に行ったばかりだというのに、少し早すぎやしないだろうか?
中間テストの結果を見せるという意味でのこの時期なのかもしれないけど、インターバルが短すぎる。というか、夏に行う意味があったのか甚だ疑問である。
などと、来週の催しに消極的になる私は、プリントを机に置いて前後のスペースを利用し、グッと身体を伸ばした。
「この三者面談ですが、七月にも行ったということで『やっても意味が無い』、『そんなすぐには意志は変わらない』と思っている人も多いと思います」
――が、あまりにもタイムリーな話題に心を読まれたのかと動きを止めてしまう。
恐る恐る、慎重に教壇へと視線を向ければ、先生は全く別の方向を向いて話していた。……一先ず安心。
「確かに……皆さんはまだ二年生であり、あと一年あります。中学生の頃であれば、この時期に一回行えば事足りました。けれど、皆さんはもう高校生なんです。義務教育の時代は終わり、これから先は進学か就職か……自分の道を自分で見つけていかなくてはなりません」
そう先生は語るけれども、それに水を差すようだけれども、このクラスの九割九部は進学だろう。
でなければ、わざわざ特待コースを選んだ意味がない。
それでも敢えて、そのように発言しているのは他学科――工業科の生徒らが私たちとは逆で、就職をメインに卒業しているからに他ならない。
「そのために、皆さんの今の状態を先生とご両親と、そして皆さん自身とで共有していく必要があるのです。何を目標にし、そこへ至るためにはどうすれば良いのか……幾重にも広がる道を模索し、答えを見つける――そういう場なのです」
目標……か。
思えば、何もない。
進学――という二文字を薄ぼんやりと意識しているだけで、その学校の中身にまではまるで目を向けていない。
何故なら、なりたい職業も叶えたい夢も私の中にはないから。
だから、適当な文系の学部に入ればそれでいいし、大学選択もそらに合わせておけば何も問題はないのだ。
言うなれば、それが私の道。
「――なので、面倒なんて思わずに積極的に参加してくださいね。学校生活の話などはご両親に行いますが、主役は皆さんなのですから。誰でもない、皆さん自身の意思をぜひ聞かせてください」
ふとその時、パチリと目が合った――気がした。
とはいえ、私は別に人の視線に敏感というわけでもなく、どこぞの幼馴染のように自分が見られているか・見られていないのかを判定できるような特殊能力も持ってはいない。
恐らくは気のせいだろう。
あの先生のことだから、むしろそのそらに目を配った可能性の方が高いまである。
だって、私を注視する理由なんて何にもないのだから。
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