9 / 20
9.隣国到着
「壁が見えてきたー!」
隣国の地方都市は、王国の国境付近の村と違って、頑丈そうな壁が張り巡らされている城塞都市だった。
王国のそびえ立つ三の門よりも高く頑丈そうだ。
けれど、こちらから見える門は、固く閉ざされている。
「とりあえず行ってみよう」
動物たちは特に反対する意思はなさそうで、黙ってついてくる。
「今夜は、宿とれるといいねー」
荷物をたくさん詰んだ商人のキャラバン隊でも三日もあれば辿り着ける距離を、一週間かけて歩いてきたので、身体中が埃っぽい。出来ればお風呂に入りたい。
「やっぱり門開いてないねー」
ここまで来て町に入れないとかあり得ない。
馬車用の大きい扉の隣に、人サイズの小さめな扉があったので、それに賭けてみる。
ドンドンドンドンドン!
「こんにちはー!入れてくださーい!」
お願いしてみた。
ドンドンドンドンドン!
「助けてくださーい!」
少しだけ、必死な感じを出してみた。
すると、少しだけ扉が開いた。
「あ!助けてください!中に入れてください!怪しい者じゃないんです!」
や、怪しいよな、と思いつつも叫び続ける。半泣きで。
もう少しだけ扉が開いて、中から軽鎧を着て、武器を持っている兵士っぽい人が出てきた。
「なんだ、子どもではないか」
子どもじゃないです!
でもここは子どもの方が有利かも。
「なぜ一人で門の外に?」
「ずっと森の街道を歩いてきたんです。町の中で休ませて下さい」
「馬鹿な!子ども一人で『森』を歩ける訳がないだろう」
「え?」
「どうやって外へ出たのだ?ここは俺たちが封鎖していたはずだ」
「いえ、元々外にいたんです」
「親はどうしたんだ?」
「いません」
10年前に多額のお金と引き換えに私を教会に売った両親が、今何をしているのかなど、知らないし、知りたくもない。
別に貧乏でも、お金に困っていた訳でもない家庭だったにも関わらず、奴隷のように売られた。
お金を受け取った時の両親の嫌らしい笑いは今でも覚えているけれど、覚えていたい訳じゃない。
生きているのかもわからない。
もうなんとも思ってないから心底どーでもいい。
わざわざ恨むエネルギーももったいない。
「お前は薄汚れてはいるが、家畜を連れているし、孤児には見えない。…家出でもしたのか」
「してません!親には売られたんです。そこで働いていたのですが、もう用はないから出て行けと言われて彷徨ってました。あとこの子たちは森付近にいたのを保護したんです!」
嘘は言ってない。
「それは…大変だったな」
兵士さんが、急に優しくなりました。
「入れ」
「ありがとうございます!」
か弱い女(幼女)一人と家畜だけなせいか、あっさりと隣国に入れてもらえた。良かった。
「こっちだ。このご時世だからな。簡単な調書を取らせてもらう。…あ、家畜はその辺に繋いでおけ」
「はーい」
繋げと言われてもロバさん以外、放し飼いなので、とりあえずロバさんだけ門番小屋の街頭に繋いでおく。
「ヤギさんたちはここにいてね」
「メェ~」
「コケ」
賢い子たちだから多分大丈夫だよね。
「ニャー」
「あ、プラタは一緒に行くのね?」
門の駐在所?みたいなところに入ろうとすると、プラタがヒラリと肩に乗ってきた。爪は立てないでね。
「そこに座ってくれ」
「はい」
門番の兵士さんは、三十代くらいの真面目そうなフツメンだ。
「名前は?」
「ジルヴァラ」
平民なので家名はないよ。
「ではジルヴァラ、つい先日、我々帝国がこの国を併合したのは知っているか?」
この人、北の帝国の人なのか。
この国の門番さんじゃないから、アッサリ入れてくれたってことか。
「…なんとなく?」
戦争の情報は持ってたけど、実情はよく知らない。
「だが安心しろ、民には手出ししていないし、掠奪行為などもしていないからな。お前の家族も無事だろう」
「そうですか」
やっぱりこの町の人だと思われてるんだ。
それならそれでいいか。
否定も肯定もしないでおこう。
「で、『森』にいたのなら、魔獣はどんな様子だった?」
「えっと…」
森の様子?
「いつもより魔獣が多くて…」
「ああ…それは、我が帝国軍が、魔獣討伐しながらこの辺境都市に進軍したせいだな。やはり討伐されなかった魔獣は、『森』へ逃げ込んだのか」
たっくさん来ましたよ。森を抜けて王国に。
討伐っていうより、王国に進軍だった。
大結界あったから何事もなかったけど。
戦争吹っかけてきたって言われても過言じゃないと思う。
たぶん王国の人は誰も気づいてないけど。
門番さんは、私について軽く質問をしてから、今のこの国の状況とか、門番さんの出身国である北の帝国の話をしてくれた。
「すまないジルヴァラ。そろそろ巡回の時間だ」
「うん」
聖女としか呼ばれてなかったから、自分の名前を呼ばれるのが新鮮でことのほか嬉しい。
「今夜は宿をとるのか?巡回のついでに途中まで送ろう」
「うん」
「親戚や知り合いはいないのか」
「いない」
「宿代はあるのか?」
「大丈夫です」
王国の門番夫妻からの遺産があります。
「そうか」
北の帝国の兵士さんは良い人だった。
王国の、私を守ってくれていたはずの衛兵さんよりも、私が身を削って護っていたはずの王国民よりもずっとずっと良い人だった。
***
「さて、これからどうしようか」
北の帝国の兵士さんに、家畜も預けられて出来ればお風呂のある宿屋さんを尋ねたら、この国はテルマエという公衆浴場の文化があることを知りました。
で、早速行ってみたら、老若男女入り乱れてて、みんな裸になってお風呂に入ってて凄かった。
私は子ども枠でカウントされてて無料だった。解せぬ。
敗戦国で、敵国の支配下にあるといっても、占領されて既に1ヶ月くらい経ってるのと、北の帝国の紳士的な支配下にあって、むしろ前よりも治安が良くなったらしい。
死んたり怪我したりした兵隊さんは気の毒だけど、国民にとっては良かったのかな?
現在は、久しぶりにお風呂でさっぱりして、宿のお部屋でゴロゴロしています。
ロバさんとヤギさんとニワトリさんは宿の家畜小屋に入れて貰いました。
お部屋は動物禁止だけど、プラタは白いマフラーに擬態してコッソリお部屋にいます。
子どもが一人で宿屋に行っても相手にしてもらえないかもって言って、門にいた親切な北の帝国の兵士さんが、わざわざ一緒に来てくれて手続きしてくれました。ほんといい人。
宿代は、王国の門番夫妻の家から貰ったやつ。
お金とかもう遣えない場所に逝ってしまったので許してくれると思います。
「ニャー」
「そうだよねー、稼がないと宿にも泊まれないよね」
「ニャー」
「うんうん、働かざる者食うべからずだよね。
あれ?でも私、聖女として10年間ずっと働いてたけどお金とか貰ったことない」
「ニャ…」
「ん、まあ、子どもが大人に搾取されることなんてよくあることだよね」
「にゃ…」
「あ、ちがう、私15歳だし、大人だった」
学園を卒業したら大人なんだよ。
「ちゃんと学校にも通いたいなあ。
北の帝国には世界で一番大きな魔法学校があって、色んな国から学生が集まってきて色んな研究をしてるんだって!ちょっと行ってみたいよね!」
親切な門番さんも通いたかったけど、魔力が低くて入学出来なかったんだって。
私、魔力だけならたくさんあるから行けると思うんだ。あ、でも勉強しないと無理かな。
「…」
プラタはもう相槌もうってくれなくなって、ベッドに丸くなって目を瞑っている。寂しいぞ!
「とりあえず、明日は冒険者登録しようと思う」
テルマエや宿の人に聞いたら、冒険者登録しとけば、身分証明になって色々便利なんだそうだ。
出来そうな依頼を細々と受ければ良いみたい。おつかいくらいなら、世間知らずな私でも出来るはず。
薬草探しとかなら、プラタいるしなんとかなると思うんだよね。
私には毒草も薬草も見分けつかないけど。
「というわけでよろしく!」
丸まっていたプラタは、わかったよっていうふうに、顔だけ上げて、また丸くなった。
私も寝ないと。
明日のことは明日やろう。
隣国の地方都市は、王国の国境付近の村と違って、頑丈そうな壁が張り巡らされている城塞都市だった。
王国のそびえ立つ三の門よりも高く頑丈そうだ。
けれど、こちらから見える門は、固く閉ざされている。
「とりあえず行ってみよう」
動物たちは特に反対する意思はなさそうで、黙ってついてくる。
「今夜は、宿とれるといいねー」
荷物をたくさん詰んだ商人のキャラバン隊でも三日もあれば辿り着ける距離を、一週間かけて歩いてきたので、身体中が埃っぽい。出来ればお風呂に入りたい。
「やっぱり門開いてないねー」
ここまで来て町に入れないとかあり得ない。
馬車用の大きい扉の隣に、人サイズの小さめな扉があったので、それに賭けてみる。
ドンドンドンドンドン!
「こんにちはー!入れてくださーい!」
お願いしてみた。
ドンドンドンドンドン!
「助けてくださーい!」
少しだけ、必死な感じを出してみた。
すると、少しだけ扉が開いた。
「あ!助けてください!中に入れてください!怪しい者じゃないんです!」
や、怪しいよな、と思いつつも叫び続ける。半泣きで。
もう少しだけ扉が開いて、中から軽鎧を着て、武器を持っている兵士っぽい人が出てきた。
「なんだ、子どもではないか」
子どもじゃないです!
でもここは子どもの方が有利かも。
「なぜ一人で門の外に?」
「ずっと森の街道を歩いてきたんです。町の中で休ませて下さい」
「馬鹿な!子ども一人で『森』を歩ける訳がないだろう」
「え?」
「どうやって外へ出たのだ?ここは俺たちが封鎖していたはずだ」
「いえ、元々外にいたんです」
「親はどうしたんだ?」
「いません」
10年前に多額のお金と引き換えに私を教会に売った両親が、今何をしているのかなど、知らないし、知りたくもない。
別に貧乏でも、お金に困っていた訳でもない家庭だったにも関わらず、奴隷のように売られた。
お金を受け取った時の両親の嫌らしい笑いは今でも覚えているけれど、覚えていたい訳じゃない。
生きているのかもわからない。
もうなんとも思ってないから心底どーでもいい。
わざわざ恨むエネルギーももったいない。
「お前は薄汚れてはいるが、家畜を連れているし、孤児には見えない。…家出でもしたのか」
「してません!親には売られたんです。そこで働いていたのですが、もう用はないから出て行けと言われて彷徨ってました。あとこの子たちは森付近にいたのを保護したんです!」
嘘は言ってない。
「それは…大変だったな」
兵士さんが、急に優しくなりました。
「入れ」
「ありがとうございます!」
か弱い女(幼女)一人と家畜だけなせいか、あっさりと隣国に入れてもらえた。良かった。
「こっちだ。このご時世だからな。簡単な調書を取らせてもらう。…あ、家畜はその辺に繋いでおけ」
「はーい」
繋げと言われてもロバさん以外、放し飼いなので、とりあえずロバさんだけ門番小屋の街頭に繋いでおく。
「ヤギさんたちはここにいてね」
「メェ~」
「コケ」
賢い子たちだから多分大丈夫だよね。
「ニャー」
「あ、プラタは一緒に行くのね?」
門の駐在所?みたいなところに入ろうとすると、プラタがヒラリと肩に乗ってきた。爪は立てないでね。
「そこに座ってくれ」
「はい」
門番の兵士さんは、三十代くらいの真面目そうなフツメンだ。
「名前は?」
「ジルヴァラ」
平民なので家名はないよ。
「ではジルヴァラ、つい先日、我々帝国がこの国を併合したのは知っているか?」
この人、北の帝国の人なのか。
この国の門番さんじゃないから、アッサリ入れてくれたってことか。
「…なんとなく?」
戦争の情報は持ってたけど、実情はよく知らない。
「だが安心しろ、民には手出ししていないし、掠奪行為などもしていないからな。お前の家族も無事だろう」
「そうですか」
やっぱりこの町の人だと思われてるんだ。
それならそれでいいか。
否定も肯定もしないでおこう。
「で、『森』にいたのなら、魔獣はどんな様子だった?」
「えっと…」
森の様子?
「いつもより魔獣が多くて…」
「ああ…それは、我が帝国軍が、魔獣討伐しながらこの辺境都市に進軍したせいだな。やはり討伐されなかった魔獣は、『森』へ逃げ込んだのか」
たっくさん来ましたよ。森を抜けて王国に。
討伐っていうより、王国に進軍だった。
大結界あったから何事もなかったけど。
戦争吹っかけてきたって言われても過言じゃないと思う。
たぶん王国の人は誰も気づいてないけど。
門番さんは、私について軽く質問をしてから、今のこの国の状況とか、門番さんの出身国である北の帝国の話をしてくれた。
「すまないジルヴァラ。そろそろ巡回の時間だ」
「うん」
聖女としか呼ばれてなかったから、自分の名前を呼ばれるのが新鮮でことのほか嬉しい。
「今夜は宿をとるのか?巡回のついでに途中まで送ろう」
「うん」
「親戚や知り合いはいないのか」
「いない」
「宿代はあるのか?」
「大丈夫です」
王国の門番夫妻からの遺産があります。
「そうか」
北の帝国の兵士さんは良い人だった。
王国の、私を守ってくれていたはずの衛兵さんよりも、私が身を削って護っていたはずの王国民よりもずっとずっと良い人だった。
***
「さて、これからどうしようか」
北の帝国の兵士さんに、家畜も預けられて出来ればお風呂のある宿屋さんを尋ねたら、この国はテルマエという公衆浴場の文化があることを知りました。
で、早速行ってみたら、老若男女入り乱れてて、みんな裸になってお風呂に入ってて凄かった。
私は子ども枠でカウントされてて無料だった。解せぬ。
敗戦国で、敵国の支配下にあるといっても、占領されて既に1ヶ月くらい経ってるのと、北の帝国の紳士的な支配下にあって、むしろ前よりも治安が良くなったらしい。
死んたり怪我したりした兵隊さんは気の毒だけど、国民にとっては良かったのかな?
現在は、久しぶりにお風呂でさっぱりして、宿のお部屋でゴロゴロしています。
ロバさんとヤギさんとニワトリさんは宿の家畜小屋に入れて貰いました。
お部屋は動物禁止だけど、プラタは白いマフラーに擬態してコッソリお部屋にいます。
子どもが一人で宿屋に行っても相手にしてもらえないかもって言って、門にいた親切な北の帝国の兵士さんが、わざわざ一緒に来てくれて手続きしてくれました。ほんといい人。
宿代は、王国の門番夫妻の家から貰ったやつ。
お金とかもう遣えない場所に逝ってしまったので許してくれると思います。
「ニャー」
「そうだよねー、稼がないと宿にも泊まれないよね」
「ニャー」
「うんうん、働かざる者食うべからずだよね。
あれ?でも私、聖女として10年間ずっと働いてたけどお金とか貰ったことない」
「ニャ…」
「ん、まあ、子どもが大人に搾取されることなんてよくあることだよね」
「にゃ…」
「あ、ちがう、私15歳だし、大人だった」
学園を卒業したら大人なんだよ。
「ちゃんと学校にも通いたいなあ。
北の帝国には世界で一番大きな魔法学校があって、色んな国から学生が集まってきて色んな研究をしてるんだって!ちょっと行ってみたいよね!」
親切な門番さんも通いたかったけど、魔力が低くて入学出来なかったんだって。
私、魔力だけならたくさんあるから行けると思うんだ。あ、でも勉強しないと無理かな。
「…」
プラタはもう相槌もうってくれなくなって、ベッドに丸くなって目を瞑っている。寂しいぞ!
「とりあえず、明日は冒険者登録しようと思う」
テルマエや宿の人に聞いたら、冒険者登録しとけば、身分証明になって色々便利なんだそうだ。
出来そうな依頼を細々と受ければ良いみたい。おつかいくらいなら、世間知らずな私でも出来るはず。
薬草探しとかなら、プラタいるしなんとかなると思うんだよね。
私には毒草も薬草も見分けつかないけど。
「というわけでよろしく!」
丸まっていたプラタは、わかったよっていうふうに、顔だけ上げて、また丸くなった。
私も寝ないと。
明日のことは明日やろう。
あなたにおすすめの小説
辺境伯聖女は城から追い出される~もう王子もこの国もどうでもいいわ~
サイコちゃん
恋愛
聖女エイリスは結界しか張れないため、辺境伯として国境沿いの城に住んでいた。しかし突如王子がやってきて、ある少女と勝負をしろという。その少女はエイリスとは違い、聖女の資質全てを備えていた。もし負けたら聖女の立場と爵位を剥奪すると言うが……あることが切欠で全力を発揮できるようになっていたエイリスはわざと負けることする。そして国は真の聖女を失う――
姉の所為で全てを失いそうです。だから、その前に全て終わらせようと思います。もちろん断罪ショーで。
しげむろ ゆうき
恋愛
姉の策略により、なんでも私の所為にされてしまう。そしてみんなからどんどんと信用を失っていくが、唯一、私が得意としてるもので信じてくれなかった人達と姉を断罪する話。
全12話
婚約破棄が国を亡ぼす~愚かな王太子たちはそれに気づかなかったようで~
みやび
恋愛
冤罪で婚約破棄などする国の先などたかが知れている。
全くの無実で婚約を破棄された公爵令嬢。
それをあざ笑う人々。
そんな国が亡びるまでほとんど時間は要らなかった。
出来損ないと言われて、国を追い出されました。魔物避けの効果も失われるので、魔物が押し寄せてきますが、頑張って倒してくださいね
猿喰 森繁
恋愛
「婚約破棄だ!」
広間に高らかに響く声。
私の婚約者であり、この国の王子である。
「そうですか」
「貴様は、魔法の一つもろくに使えないと聞く。そんな出来損ないは、俺にふさわしくない」
「… … …」
「よって、婚約は破棄だ!」
私は、周りを見渡す。
私を見下し、気持ち悪そうに見ているもの、冷ややかな笑いを浮かべているもの、私を守ってくれそうな人は、いないようだ。
「王様も同じ意見ということで、よろしいでしょうか?」
私のその言葉に王は言葉を返すでもなく、ただ一つ頷いた。それを確認して、私はため息をついた。たしかに私は魔法を使えない。魔力というものを持っていないからだ。
なにやら勘違いしているようだが、聖女は魔法なんて使えませんよ。
ベールを上げた新郎は『君じゃない』と叫んだ
ハートリオ
恋愛
結婚式で新郎に『君じゃない』と叫ばれたのはウィオラ。
スピーナ子爵家の次女。
どうやら新郎が結婚する積りだったのは姉のリリウム。
ウィオラはいつも『じゃない方』
認められない、
選ばれない…
そんなウィオラは――
中世ヨーロッパ風異世界でのお話です。
よろしくお願いします。
堅実に働いてきた私を無能と切り捨てたのはあなた達ではありませんか。
木山楽斗
恋愛
聖女であるクレメリアは、謙虚な性格をしていた。
彼女は、自らの成果を誇示することもなく、淡々と仕事をこなしていたのだ。
そんな彼女を新たに国王となったアズガルトは軽んじていた。
彼女の能力は大したことはなく、何も成し遂げられない。そう判断して、彼はクレメリアをクビにした。
しかし、彼はすぐに実感することになる。クレメリアがどれ程重要だったのかを。彼女がいたからこそ、王国は成り立っていたのだ。
だが、気付いた時には既に遅かった。クレメリアは既に隣国に移っており、アズガルトからの要請など届かなかったのだ。
妹の方がかわいいからと婚約破棄されましたが、あとで後悔しても知りませんよ?
志鷹 志紀
恋愛
「すまない、キミのことを愛することができなくなった」
第二王子は私を謁見の間に連れてきて、そう告げた。
「つまり、婚約破棄ということですね。一応、理由を聞いてもよろしいですか?」
「キミの妹こそが、僕の運命の相手だったんだよ」
「そうですわ、お姉様」
王子は私の妹を抱き、嫌な笑みを浮かべている。
「ええ、私は構いませんけれど……あとで後悔しても知りませんよ?」
私だけが知っている妹の秘密。
それを知らずに、妹に恋をするなんて……愚かな人ですね。