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二
紀州藩大名屋敷討ち入り事件
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八蔵は加賀藩大名屋敷に到着すると門をたたいた。八蔵の祖父は加賀藩の大目付をやっていたので加賀藩にはその知り合いがたくさんいる。八蔵は門が開くと番人に中谷与右衛門を呼んでくれ、と頼んだ。
中谷与右衛門は加賀藩で剣術を研究する仕事をしており、1年前から江戸に参勤交代の時の警護役として、来ている。
「なんだ。」
与右衛門が門から出てきた。
「先ほど幾人かのものによって紀州藩大名屋敷が襲われた。そなたは素晴らしい剣術の腕前を持っておられる。
今、紀州藩大名屋敷ではたくさんの人が命がけで戦っている。私と一緒に戦いに行ってもらいたい。」
「よし。行ってやる。」
八蔵は向きを変えて与右衛門がついてくるか確かめると、全速力で走り始めた。
少し行くと叫び声などの混ざったざわめきが聞こえてきた。もう紀州藩大名屋敷はすぐそこである。八蔵は息をのんだ。
「緊張する出ない。お前の祖父はこういう時自分のことを後において恐れず戦っていたぞ。」
与右衛門が励ます。すると紀州藩大名屋敷が見えてきた。親藩ということもありほかの大名屋敷と比べ物にならないほどでかい。八蔵と与右衛門が門に入ると幾人かの武士がこちらに走ってきた。黒いはちまきを頭につけ腰に短刀をつけて両手で1本の刀を握っている。だんだん近づいてきて八蔵と与右衛門を囲んだ。
「私は江戸町奉行佐潟八蔵である。こちらは加賀藩剣術研究所長、中谷与右衛門である。そちらは何者じゃ。」
相手は答えず、刀を振りかざしてきた。八蔵と与右衛門はとっさに刀をぬき戦った。全員を切った後、屋敷に入り廊下を歩いていくと紀州藩の年を取ったものが何人かの者に囲まれながら部屋から出てきた。
「私は江戸の町奉行、佐潟八蔵でございます。お怪我はありませんか?」
「ない。しかし今回の者たちは誰なのだ。早く見つけてくれ。」
「は。今回のことは将軍様にも報告せねばなりませんので詳しく調べさせていただきます。」
「あしたから警護のものを派遣していただくことはできぬか?」
「検討させていただきます。」
八蔵と与右衛門は話の区切りがついたので例をしてすれ違った。その時八蔵は年を取ったもののにらむような目つきが気になった。廊下を歩いて門まで歩いたがその時に見た遺体の数は数えきれないほどであった。相当な戦いであったの
だろうと八蔵は思った。門の前には30人ほどの役人がたいまつをもって立っていた。周りは野次馬ばかりである。
帰り道、与右衛門が急に話しかけてきた。
「今日の夜襲は相当なものであったろうな。」
「ああ。」
「俺が今日気づいたことを言ってもよいか。」
「ああ。」
「さっきな、私と八蔵が紀州藩老中と通りすがるとき、紀州藩のあいつが、お前に向かって小さく舌打ちしていたのを聞いてしまったのだ。」
「私はにらまれたように感じた。」
「八蔵、少し身の危険を感じたほうが良いぞ。あいつはお前に対して何かを思っている。」
「そのようなことはない。大丈夫だ。」
加賀藩大名屋敷で与右衛門と別れてからも八蔵はあの会話、紀州藩のあいつのことが気になってしかたがなかった。
中谷与右衛門は加賀藩で剣術を研究する仕事をしており、1年前から江戸に参勤交代の時の警護役として、来ている。
「なんだ。」
与右衛門が門から出てきた。
「先ほど幾人かのものによって紀州藩大名屋敷が襲われた。そなたは素晴らしい剣術の腕前を持っておられる。
今、紀州藩大名屋敷ではたくさんの人が命がけで戦っている。私と一緒に戦いに行ってもらいたい。」
「よし。行ってやる。」
八蔵は向きを変えて与右衛門がついてくるか確かめると、全速力で走り始めた。
少し行くと叫び声などの混ざったざわめきが聞こえてきた。もう紀州藩大名屋敷はすぐそこである。八蔵は息をのんだ。
「緊張する出ない。お前の祖父はこういう時自分のことを後において恐れず戦っていたぞ。」
与右衛門が励ます。すると紀州藩大名屋敷が見えてきた。親藩ということもありほかの大名屋敷と比べ物にならないほどでかい。八蔵と与右衛門が門に入ると幾人かの武士がこちらに走ってきた。黒いはちまきを頭につけ腰に短刀をつけて両手で1本の刀を握っている。だんだん近づいてきて八蔵と与右衛門を囲んだ。
「私は江戸町奉行佐潟八蔵である。こちらは加賀藩剣術研究所長、中谷与右衛門である。そちらは何者じゃ。」
相手は答えず、刀を振りかざしてきた。八蔵と与右衛門はとっさに刀をぬき戦った。全員を切った後、屋敷に入り廊下を歩いていくと紀州藩の年を取ったものが何人かの者に囲まれながら部屋から出てきた。
「私は江戸の町奉行、佐潟八蔵でございます。お怪我はありませんか?」
「ない。しかし今回の者たちは誰なのだ。早く見つけてくれ。」
「は。今回のことは将軍様にも報告せねばなりませんので詳しく調べさせていただきます。」
「あしたから警護のものを派遣していただくことはできぬか?」
「検討させていただきます。」
八蔵と与右衛門は話の区切りがついたので例をしてすれ違った。その時八蔵は年を取ったもののにらむような目つきが気になった。廊下を歩いて門まで歩いたがその時に見た遺体の数は数えきれないほどであった。相当な戦いであったの
だろうと八蔵は思った。門の前には30人ほどの役人がたいまつをもって立っていた。周りは野次馬ばかりである。
帰り道、与右衛門が急に話しかけてきた。
「今日の夜襲は相当なものであったろうな。」
「ああ。」
「俺が今日気づいたことを言ってもよいか。」
「ああ。」
「さっきな、私と八蔵が紀州藩老中と通りすがるとき、紀州藩のあいつが、お前に向かって小さく舌打ちしていたのを聞いてしまったのだ。」
「私はにらまれたように感じた。」
「八蔵、少し身の危険を感じたほうが良いぞ。あいつはお前に対して何かを思っている。」
「そのようなことはない。大丈夫だ。」
加賀藩大名屋敷で与右衛門と別れてからも八蔵はあの会話、紀州藩のあいつのことが気になってしかたがなかった。
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