Lunatic tears _REBELLION

AYA

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1-2 Noel De Enfel

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 ノエル・ド・アンフェル。フランス語で地獄のクリスマスを意味する、それの正式名称は、2009年パリクリスマス同時多発テロ事件。
 12月24日15時、バスティーユ広場での自動車爆破を皮切りに、シャン・ド・マルス公園、コンコルド広場で15分の間に起きた3件の同時多発テロ事件を指す。
 その舞台となった3つの場所は、1789年から1795年の6年間に亘って繰り広げられたフランス革命にとって重要でもある。
 フランス革命の発端となった1789年バスティーユ襲撃の舞台、バスティーユ牢獄が有ったバスティーユ広場。かつて革命広場と呼ばれていた場所で、ルイ16世やマリー・アントワネットをはじめ数多くの処刑が行われたコンコルド広場。そして、1791年ルイ16世廃位を求めた請願書に署名すべく、平和的デモを起こした5万人の民衆に対し、国民衛兵隊が威嚇射撃をしたシャン・ド・マルスの虐殺……現在では虐殺ではなく発砲事件とされている……が発生した練兵場が有ったシャン・ド・マルス公園。
 それ故に、自らを革命戦士と位置付けた集団による犯行と、発生直後から目されていた。そして、発生の1時間後……とある宗教団体が犯行声明を出した。

 太陽騎士団。フランス革命の余波が残る18世紀末、フランス東部で誕生した宗教。既存の宗教からの分離などではなく、ソレイエドールと呼ばれる創世の女神を崇め、既存の宗教とは一線を画する。西欧と中東の文化を融合させ、他の神の存在を否定しないのが特徴的だった。
 また、終末論を唱えるが穏健派と云う属性を持っていた。世界は終末を迎えるが、人を愛し邪な己の心と戦い、功徳を積んだ騎士は、終末戦争の末にソレイエドールによって創造される新世界へと召還され、女神に仕えながら永遠の平和と快楽を謳歌する……と云うのが基本的な理念だった。そのため、各種の社会活動に精力的だったことでも知られている。
 そうして徐々に信者を増やして拡大していく太陽騎士団は、しかし経典の独自解釈による過激派の存在も生むようになる。そして引き起こされたのが、ノエル・ド・アンフェルだった。
 太陽騎士団は、即座に犯行を否定する声明を発表した上で、別のグループを名指しして非難した。その相手は、事件の5年前に破門された唯一の過激派、血の旅団。
 20世紀末、一部の信者によって生まれたこのグループは、教団内での内紛を経て破門を受けたことを機に、派生した宗教としての活動を開始した。
 太陽騎士団の教典においては、ソレイエドールに反逆した戦女神ルージェエールが処刑されるのだが、この戦女神を崇め創世の女神を否定することを基本としている。戦女神の教えが途絶する前に、革命戦争によって久遠の勝利を得ることを誓い、それは戦女神の真理でもある……。
 血の旅団が太陽騎士団の偽旗を掲げたテロ、ノエル・ド・アンフェルは、すぐに真の犯人がバレた。しかし、元からすぐにバレることは計算済みだったことが後に判っている。
 ……偽旗作戦の真の目的は、邪教の代表として名指しする太陽騎士団との確執を公にするために、異教……もとい邪教を無理矢理戦の舞台に立たせることだった。そして、勝手に名前を使われたことに憤怒した太陽騎士団は、その策略に陥った。
 クリスマスイブを狙ったのは、フランス国内で最大勢力を誇るカトリック……キリスト教にとっての最重要行事を狙うことで、太陽騎士団に対する批判的な世論を生み出し、窮地に追い込む目的も有った。
 すぐにバレると判っている一方で、太陽騎士団への批判を生ませようとしている……矛盾しているが、邪教を殲滅させると云う目的のために、形振り構わなくなっていることが判る。
 
 以降、太陽騎士団と血の旅団、2つの宗教間の対立がクローズアップされていくこととなる。そしてフランスは、政教分離原則ライシテと何時勃発するか読めないフランス発の新宗教同士の問題、2つの宗教問題を並行して抱えると云う厄介な問題を、十数年に亘って抱え、解決の糸口を見出すことができないまま、2020年代半ばを迎えている。

 両親と外出していた当時2歳の流雫……ルナは、バスティーユ広場で遭遇した。時計の針が15時を示した瞬間、路肩に停まっていた白いライトバンが突然爆発し、その隣を走っていた観光バスや乗客を降ろそうとしていたタクシーが横転した。
 それが合図となって、自動小銃の銃声が12月の冷たい空気を切り裂き始めた。黒い小型車の、少しだけ開かれた窓から幾つもの銃口が見え、それが幾度となく火を噴く。クリスマスイブの平和なバスティーユ広場は一転、地獄と化した。
 母はルナを抱き抱え、父はその母を庇うように、サン・マルタン運河沿いをセーヌ川に向かって走って避難した。一家3人全員、怪我一つ無く無事だった。
 しかし、死者は87人、負傷者は375人に及ぶこの無差別テロに遭遇した経験が、一家に4年間住んだパリを離れる決断をさせる。そして、300キロ離れた西部の都市レンヌに新たな住処を構えた。
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