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気付いた恋
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「報酬って、どういうこと?」
不思議そうにするエルウィンに、グレンが気まずそうに鼻を掻く。
「実は、今日はそのお願いがあって来たんです」
グレンの話はこうだった。
もうすぐ、以前エルウィンが住んでいた国の建国祝賀式典が開催される。
第二王子であるグレンは、その式典の来賓として出席するために、ロクセーヌから派遣されることになったらしい。
しかしそういう場は大抵夫婦で出席するのが常だ。
そのため現在独身の彼は、なんとパートナーとしてエルウィンに同行して欲しいと言うのだ。
「そんなっ!国の代表なんて無理よ!」
あまりのお願いにぶんぶんと首を振るエルウィンに、グレンは甘い笑みを浮かべた。
「どうして?エルウィンさんは勲章も受章していますし、優秀な魔術師です。それに隣国はあなたの故郷だ。使節として派遣されるのに、エルウィンさんほど適任な人はいません」
「だって…!」
確かに彼の言う通りだった。
地位も、出自も、エルウィンが派遣されるのが最適だ。
しかし、それにはグレンのパートナーとして行動しなければいけないのだ。
こんなに麗しい彼の隣に立つなんて、エルウィンには出来ない。
「お願いします。こんなことを頼めるの、エルウィンさんしかいないんです」
ひしと手を握られ、エルウィンはかあっと顔が熱くなった。
そんなに真摯な瞳で見つめられたら決心が鈍ってしまう。
「…ねぇ、私が断ったらどうするの?」
恐る恐るエルウィンが尋ねると、彼は眉をしかめる。
「それは…、考えたくないですが。どこかの貴族のご令嬢が選抜されると思います」
「…わ、私が行くっ!」
考えるより先に叫んでいた。
グレンの隣に誰か他の女の人が並んでいるところなんて、想像もしたくなかった。
「エルウィンさん?」
「…っ、ご、ごめんなさい。でももし貴族のお嬢様の方がいいなら、私っ」
「いえ、すごく嬉しいです!」
グレンの輝くような笑顔に、エルウィンはまた顔が熱くなる。
ああ、いつの間にこんなに彼を好きになってしまったのだろう。
彼は王族なのに。
エルウィンとは違う世界の人なのに。
決して叶わない恋に、エルウィンは悩まされることになった。
不思議そうにするエルウィンに、グレンが気まずそうに鼻を掻く。
「実は、今日はそのお願いがあって来たんです」
グレンの話はこうだった。
もうすぐ、以前エルウィンが住んでいた国の建国祝賀式典が開催される。
第二王子であるグレンは、その式典の来賓として出席するために、ロクセーヌから派遣されることになったらしい。
しかしそういう場は大抵夫婦で出席するのが常だ。
そのため現在独身の彼は、なんとパートナーとしてエルウィンに同行して欲しいと言うのだ。
「そんなっ!国の代表なんて無理よ!」
あまりのお願いにぶんぶんと首を振るエルウィンに、グレンは甘い笑みを浮かべた。
「どうして?エルウィンさんは勲章も受章していますし、優秀な魔術師です。それに隣国はあなたの故郷だ。使節として派遣されるのに、エルウィンさんほど適任な人はいません」
「だって…!」
確かに彼の言う通りだった。
地位も、出自も、エルウィンが派遣されるのが最適だ。
しかし、それにはグレンのパートナーとして行動しなければいけないのだ。
こんなに麗しい彼の隣に立つなんて、エルウィンには出来ない。
「お願いします。こんなことを頼めるの、エルウィンさんしかいないんです」
ひしと手を握られ、エルウィンはかあっと顔が熱くなった。
そんなに真摯な瞳で見つめられたら決心が鈍ってしまう。
「…ねぇ、私が断ったらどうするの?」
恐る恐るエルウィンが尋ねると、彼は眉をしかめる。
「それは…、考えたくないですが。どこかの貴族のご令嬢が選抜されると思います」
「…わ、私が行くっ!」
考えるより先に叫んでいた。
グレンの隣に誰か他の女の人が並んでいるところなんて、想像もしたくなかった。
「エルウィンさん?」
「…っ、ご、ごめんなさい。でももし貴族のお嬢様の方がいいなら、私っ」
「いえ、すごく嬉しいです!」
グレンの輝くような笑顔に、エルウィンはまた顔が熱くなる。
ああ、いつの間にこんなに彼を好きになってしまったのだろう。
彼は王族なのに。
エルウィンとは違う世界の人なのに。
決して叶わない恋に、エルウィンは悩まされることになった。
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