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久しぶりの登校
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「リリー様!しばらくお顔を拝見しませんでしたから、心配しておりました!」
「リリー様!王宮に出仕なさったというのは本当ですか!?」
王宮での生活にも慣れ、リリーは学院への登校を再開した。
仕事は夜だけで、しかも寝るだけだから、昼間は今まで通りの生活をすることにしたのだ。
人気者のリリーはすぐに友人たちに囲まれる。
「ええ。宰相様に依頼されて、しばらく王宮で勤めることになったのよ」
「さすがリリー様だ。宰相閣下から直接依頼されるとは」
友人たちは、口々にどんな仕事をしているのかと尋ねるが、リリーは困って口をつぐんだ。
まさか国王が魔女の呪いに侵されているなんて言えない。
そんなリリーの困惑を読み取ったらしく、友人はすぐに話題を変えてくれた。
「クリフのことお聞きになりましたか?」
「なんと平民の娘と駆け落ちして下町の工場で働いているそうですよ」
仕事内容について聞かれなくなったのはよかったが、リリーはその美しい顔を悲しげに歪ませる。
「そう。初めての仕事で体を壊さないといいけれど…」
クリフはやはり伯爵家を追い出されてしまったらしい。
あのアメリアという少女と一緒ならば、苦しい生活でも彼は幸せなのだろうか。
全てクリフが選んだ道とはいえ、それに多少の関わりのあるリリーとしては、それだけが気がかりだった。
「そうだ、リリー様!以前、これを落としませんでしたか?」
ふと思い出したように、友人のうちの一人が、持っていたバッグから古ぼけたハンカチを取り出した。
友人の手に握られているそれを見て、リリーは思わず悲鳴を上げる。
「まあ!なくしてしまったと思っていたのよ!本当にありがとう。どこにあったの?」
友人によると、以前の婚約破棄騒ぎの際、リリーが立ち去った後に落ちていたらしい。
それを大切に保管してくれていたのだそうだ。
「ですがリリー様…少々汚れておられませんか?よろしければ、私が新しいものを贈りますが」
控えめに提案する友人に、リリーは笑顔で首を振る。
「ありがとう、お気持ちだけいただくわ。これは私の宝物なの」
「宝物…?」
リリーは大事そうにハンカチを手で包み込む。
端に「W」と刺繍してあるこのハンカチは、今から10年前、リリーがまだ8才だった頃にもらったものだ。
大切な、大切な宝物である。
その時、大慌ての級友が走ってやって来た。
「大変だ!国王陛下が視察にいらっしゃった!」
突然の知らせに、その場は騒然となった。
「リリー様!王宮に出仕なさったというのは本当ですか!?」
王宮での生活にも慣れ、リリーは学院への登校を再開した。
仕事は夜だけで、しかも寝るだけだから、昼間は今まで通りの生活をすることにしたのだ。
人気者のリリーはすぐに友人たちに囲まれる。
「ええ。宰相様に依頼されて、しばらく王宮で勤めることになったのよ」
「さすがリリー様だ。宰相閣下から直接依頼されるとは」
友人たちは、口々にどんな仕事をしているのかと尋ねるが、リリーは困って口をつぐんだ。
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そんなリリーの困惑を読み取ったらしく、友人はすぐに話題を変えてくれた。
「クリフのことお聞きになりましたか?」
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「そう。初めての仕事で体を壊さないといいけれど…」
クリフはやはり伯爵家を追い出されてしまったらしい。
あのアメリアという少女と一緒ならば、苦しい生活でも彼は幸せなのだろうか。
全てクリフが選んだ道とはいえ、それに多少の関わりのあるリリーとしては、それだけが気がかりだった。
「そうだ、リリー様!以前、これを落としませんでしたか?」
ふと思い出したように、友人のうちの一人が、持っていたバッグから古ぼけたハンカチを取り出した。
友人の手に握られているそれを見て、リリーは思わず悲鳴を上げる。
「まあ!なくしてしまったと思っていたのよ!本当にありがとう。どこにあったの?」
友人によると、以前の婚約破棄騒ぎの際、リリーが立ち去った後に落ちていたらしい。
それを大切に保管してくれていたのだそうだ。
「ですがリリー様…少々汚れておられませんか?よろしければ、私が新しいものを贈りますが」
控えめに提案する友人に、リリーは笑顔で首を振る。
「ありがとう、お気持ちだけいただくわ。これは私の宝物なの」
「宝物…?」
リリーは大事そうにハンカチを手で包み込む。
端に「W」と刺繍してあるこのハンカチは、今から10年前、リリーがまだ8才だった頃にもらったものだ。
大切な、大切な宝物である。
その時、大慌ての級友が走ってやって来た。
「大変だ!国王陛下が視察にいらっしゃった!」
突然の知らせに、その場は騒然となった。
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