底辺冒険者、ギルドを辞めて最強鬼畜魔神(美少女)とキャンピングカーで旅に出る

一本坂苺麿

文字の大きさ
67 / 67

最終話 アイトさん、大好きです!

しおりを挟む
 暖かな光に僕は包まれる。

「……トさん……」

 それは寝起きのまどろみのような感覚だ。

「……イトさん……」

 誰かが僕を呼ぶ声が聞こえる。
 そう、それは僕にとって、とても大切な人の声。

「アイトさんッ!!」

 ナナさんの呼び声に僕は目を覚ました。

「……ナナさん?」

 目の前にナナさんの顔がある。その顔は、封印される直前に見たモノとは対照的に晴れやかな笑顔だった。

「ナナさん、どうして……?」
「ごめんなさい、アイトさん。封印解いちゃいました!」

 テヘッと舌を出すナナさん。
 可愛い……じゃない。

「ちょっと待って! 僕が開放されたらまた世界がーー」
「その心配は無用だよ」

 ナナさんの背後から聞き覚えのある声がする。

「イルヴァーナ……さん?」

 その声の主は確かにイルヴァーナだったが、少し歳を取っているように見える。

「やぁ、久しぶりだねアイトくん」
「お久しぶりですわ、アイトさん」

 イルヴァーナの後ろにはシシーがいた。彼女の姿はナナさん同様変わっていない。

「口で説明するよりも実際に見てもらったほうが早いと思う。立てるかい?」

 僕は頷きつつ、立ち上がった。意外とすんなり立ち上がれる。
 と、僕は慌てて自分の身体を見回した。
 人間だった頃と特に変わった所はない。
 良かった……

「悪趣味な金ピカじゃなくて良かったですね!」

 ナナさんが僕の考えを見透かしたようにニヤニヤしている。

 いや、でもホントそうだよ。
 僕は安堵のため息を吐いた。

 ◆

 僕が目覚めた場所は、封印された時と同じ王城だった。ただし、今はナナさん所有の建物になっているらしい。
 僕らは外テラスへとやって来た。

 ここからは王都の街並みが見渡せるはずだが……

「え?」

 僕は自分の目を疑った。

 そこに広がっている光景はかつての街の面影はなく、天使の国のように高層建築物がいくつもそびえ立っていた。おまけに空飛ぶ自動車もあちこちを飛んでいる。

「君が封印されてから7年が経ったんだよ」

 イルヴァーナが静かにそう言った。

 7年。
 そうか、それはイルヴァーナも歳を取るわけだ。だけど、この街並みの変化は激しすぎないか?

「この国に魔力は溜めない方法として、私達は魔術の独占をやめたんだよ。世界中にその知識や道具を広めていった。魔術師が世界中に分散すれば、消費される魔力も増えるし、濃度も薄くなる。そして天使たちも世界中に自分たちの科学技術を広めた。もちろん、このアナフィリア王国にもね」

 あの天使たちがアナフィリア王国に。

「彼らは魔力のストッパーとして千年王よりも安全な方法を作り出してくれたんだ。だから、魔力が異常に増えることはなくなったんだ」
「だけど、僕がいれば魔力は……」
「それは君が一つの場所に長く留まり続けた場合だよ。天使の国とアナフィリアが技術提供するにあたり、各国にある条件を提示したんだ」

 イルヴァーナは僕を指差す。

「それは君が世界中のどこにでも入国できるようにすること。そして決して危害を加えないことだ。それについての世界共通の法も定められた。アイト法というんだけどね」

 いや、できればその名称はやめて欲しい……

「つまりアイトさんはどこにでも好きな時に旅をすることができるんですよ!」

 ナナさんがにこやかに言う。
 あぁ、やっぱりナナさんは笑っている方がいい。

「できるんです、じゃなくてしなくちゃならないでしょ」

 シシーがボソリと言った。ナナさんがギロリと睨みつける。この二人の仲の悪さは相変わらずらしい。

「まぁ、とにかくだ。もう君のせいで世界が崩壊するなんてことはないんだ。それにいずれこの世界は魔力に対して耐性もできるらしい。君が封印されていてくれたお陰で私たちはここまで準備できたんだ。だから、もう自分を犠牲にするような真似はしないでくれよ」

 イルヴァーナは真剣な眼差しでそう言った。

「はい」

 僕も迷いなく返事をした。
 それに満足したのか、イルヴァーナは伸びをした。

「さてと。私たちもこれまで世界の為に働き詰めだったし、そろそろのんびりしようかな」

 僕は気になっていることを尋ねた。

「他のみんなはどうしているんですか?」
「ん? あぁ、亜人王とクイーナは元の住処に戻って行ったよ。それとミミは古代樹が気に入ったらしく、そこで暮らしている。で、あの黒猫なんだが、しばらくこの世界にいたんだが、いつの間にか消えていた。ニニアリアと一緒にね。彼と最後に話した時、アルゴン・クリプトンにけじめをつけさせると言っていたが、それがどんなことなのかよくわからなかったな」

 いや、僕にはわかる。
 黒猫ヴァーレがアルゴン……いや、アーティに僕らのことを話してくれたんだ。
 だから、アーティは僕の意識と接触できた。

 ありがとう、ヴァーレ。

 僕は心の中で黒猫に感謝を述べた。

「それじゃ、私たちはもういくよ。あとはお二人で」

 イルヴァーナとシシーは立ち去っていった。

 あとに残った僕とナナさん。
 僕はあるお願いを彼女にしようとしたのだか、腕を引っ張られて庭まで歩かされた。  

 そこにはあのキャンピングカーが停められてあった。

「無事だったんだ!?」

 僕は車を眺め回した後、ナナさんに向き直った。

「あのナナさん、お願いがーー」
「ダメです!」

 えぇ!?

 まだ何も言っていないのに、断られてしまった。

「アイトさん、忘れてませんか? 魔神の解放者は願いを叶えてもらう権利があることを。つまり、解放者であるわらわの願いをアイトさんは叶える義務があるんです!」

 ナナさんは胸をのけぞらせてそう言った。けど、彼女は過去の解放者たちの願いを叶えずにボコボコにしていたんだけどな。けど、とても指摘できそうにない。

「じゃあ、ナナさん。願いを教えて」

 すると彼女は少し顔を伏せ、そして上目遣いで僕を見上げる。

「アイトさん、大好きです! ずっと一緒にいて下さい」

 先に言われてしまった。でも、ま、いっか。

 僕の答えは決まっている。

「もちろん、喜んで!」

 僕はナナさんを抱きしめた。

 これから先のことなんてわからない。

 だけど、これだけは言える。

 僕らの旅は再び始まったんだ。

 どこにだって自由に行ける、この愛しきナナさんと共に……
しおりを挟む
感想 4

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(4件)

ねこぱんち
2021.07.19 ねこぱんち

お疲れ様でしたd(>ω<。)

2021.07.19 一本坂苺麿

最後まで読んでくださり、ありがとうございました!

解除
ねこぱんち
2021.07.09 ねこぱんち

もう少しで終わりなんですなぁ…(。-ω-)

2021.07.09 一本坂苺麿

感想ありがとうございます。そうですね。もうすぐ一区切りはつきます。

解除
ねこぱんち
2021.03.28 ねこぱんち

千年王ってドラ○エのラスボス見たいやね(・ω・)

2021.03.29 一本坂苺麿

感想ありがとうございます。確かにドラ○エっぽいですね。

解除

あなたにおすすめの小説

外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜

KeyBow
ファンタジー
 この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。  人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。  運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。  ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。

【完結】不遇スキル『動物親和EX』で手に入れたのは、最強もふもふ聖霊獣とのほっこり異世界スローライフでした

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺が異世界エルドラで授かったのは『動物親和EX』という一見地味なスキルだった。 日銭を稼ぐので精一杯の不遇な日々を送っていたある日、森で傷ついた謎の白い生き物「フェン」と出会う。 フェンは言葉を話し、実は強力な力を持つ聖霊獣だったのだ! フェンの驚異的な素材発見能力や戦闘補助のおかげで、俺の生活は一変。 美味しいものを食べ、新しい家に住み、絆を深めていく二人。 しかし、フェンの力を悪用しようとする者たちも現れる。フェンを守り、より深い絆を結ぶため、二人は聖霊獣との正式な『契約の儀式』を行うことができるという「守り人の一族」を探す旅に出る。 最強もふもふとの心温まる異世界冒険譚、ここに開幕!

追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。 全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。 ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。 これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。