~であって。

そら

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既婚者であって。医師と患者4

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半年が経ち、夫とは別居することになった。

所有欲の強い夫がよく了承してくれたな、と思う。

離婚さえしなければ良いのだろうか。

今住んでいる家をわたしが出て、県外の実家にお世話になることになった。



1週間に1度の診察の日に、わたしは先生に最後の挨拶をした。

「今までお世話になりました。」

「一歩進んでよかったね。」

先生は穏やかに微笑んで言った。

その顔を見て、わたしも笑顔になる。

「これ、良かったら読んでください。」

シンプルで可愛い、淡い花柄の便せんを手渡す。

先生は一瞬驚いたようだけれど、うれしそうに受け取った。

「ありがとう。」

お互いに笑顔を向ける。

「それでは。ありがとうございました。」

わたしが扉に手をかけると、先生はわたしを呼び止めて言った。

「幸せになってね。」

結婚式以来かけられたことのなかった言葉の意味を、理解できるまで反芻した。
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