例え変なオバサンと呼ばれようとも

もずく

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7月に入った。


ダンジョンに向かって髪を振り乱しながらも水平に走る私を見て、私を箱おばさんと知っている人なのか道ですれ違った若者が、うわぁ箱おばさん、更に気ぃ狂ってない?とかなんとか言っていた。そんな声が聞こえてはいたがかまってはいられなかった。私は一刻も早く、温度の一定のダンジョンに入らねばいけなかったからだ。


早く、早く。


箱の中は暑いぞ。


今月分の3万円を稼げば長男が夏休みに入るまではダンジョンも休もうと思っている。それまでは………本当に次男には心の中でいつも土下座をしている。多大なる負担をかけて誠に申し訳ない。と。


頭の中では、水分補給!水分補給!と大合唱がなっている。もう、ダンジョン内での授乳はしていない。赤ちゃんは2ヶ月で大成長を遂げるのだ。10ヶ月になった我が子はお茶やリンゴジュース、薄めたスポーツドリンクが飲めるようになった。


スキルレベルが上がったおかげで私にだけ元気に何かを言ってる声が聞こえる。声が聞こえることで安堵する。それはぐったりしてはいないということだから。


歩いて20分の道のりを5分で到着し、いつものように無人改札を通り(走り抜け)いつもの小部屋へたどり着く。落とさないように慎重に箱を降ろし、いつものように箱の中から我が子を取り出した。箱に入れて10分ぐらいしか経っていないけど、今日は本当に暑い。やはり顔を真っ赤にさせていた。最近、慣れてきたのか箱の中で泣くことが少なくなった。ニコニコしている顔を見てやっと、ふーっと大きく息を吐き出した。私が走るのが次男は楽しいらしい。走っている間、背中から赤ちゃん特有の甲高い奇声が聞こえていた。


でも、やっぱり夏の間ダンジョンへ連れてくるのは危険だなと思う。いや、夏じゃなくてもダンジョンへ赤ちゃんを連れてくるのが間違っているが………早く何とかしたいものだ。





最近のダンジョン探索は順調である。私は基本的に平日しかダンジョンへ行かない。娘が幼稚園に行ってる時間しかダンジョンに潜れないので時間は10時から13時30分の間しかダンジョン探索ができない。

初めは要領が掴めず時間ももっと短くて2千円前後しか稼げなかった。それが今ではなんと、1日5500円前後稼げてるのだ。ここ3週間程ずっとである。時給でいうと、約1570円。時給1000円だったのが500円もアップしたと考えるとものすごい事だと思う。なので今週中には目標の3万には到達すると思っている。


この変化にはレベルが上がったことが関わっている。


今までの様々な検証でわかったことだが、魔物を倒すと経験値を得られる。(私が検証したわけじゃなくその道の研究者が検証実験をおこなった)そして、スライムを1匹倒すと経験値は1もらえて、スライム100匹倒すとレベルは2に上がる。2に上がった後、スライムを300匹倒すとレベルは3に上がりその後は900匹でレベル4、2700匹でレベル5となる。レベル5から6に上がるのには8100匹だ。それ以上のスライムで経験値の値を確かめる検証はされていない。次は2万4千300匹と予想され研究者が挫折したためらしい。もちろん、他の経験値の高い魔物で6から7に上がるのに24300の経験値が必要なことは確かめられている。


私の今のレベルは4だ。ダンジョンに潜りはじめて7日目にレベル2に上がり、18日目にレベル3。27日目にレベル4に上がった。レベルが上がると無機質な声でレベル上昇を知らせる声が頭の中で聞こえる。(これは神的なあれではなく、マザーの声らしい)ちなみに自分の今のレベルを確認したい時はレベルと呟くだけで目蓋の裏に数字が浮き上がる。スキルの場合も同じだ。スキルと口に出し、目をつぶると目蓋の裏にゴシック体で自分の得たスキルが浮かび上がる。何度見ても不思議で寝る前とかに見るのが習慣になっている。


【ステータスオープン】では見れないのだ。目蓋の裏なので他人に見えることもない。鑑定や詳細鑑定のスキルを持つ人に調べてもらえば、自分では知れないステータスを教えてもらうことはできるらしいけれどね。


自分でステータスは見れないけれど、ステータスは存在するしレベルの上昇でその値も各種上がることがわかっている。普通の鑑定スキルでは体力、魔力、攻撃力、防御力、瞬発力、精神力の数値を知ることができる。詳細鑑定で調べると経験値や倒した魔物の種類、倒した魔物の数、もっと詳しいステータス、スキル詳細等々がわかるらしい。


調べるのにはそれなりのお金がかかるため調べようと思っていなかったのだが、レベル2からレベル3に上がった日明らかに箱の重さが変わったことに気がついた。子供に何かあったのかと慌てて小部屋に駆け込んで異変がないか調べたが何も変わっておらず、箱に慣れた我が子がすやすや眠っているだけだった。家に帰って試しに長男を抱っこしてみたら抱っこが軽々できた。25キロの長男を。これはレベルが上がった恩恵だと気づき、その次の日、初めて2階層への階段を降りたのだ。









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