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1年生

第55話 ジェイミーとジェイミーのおばあさんが

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ヒロが帰ってからボクは自室へ入った。
自室へ入ると部屋は渡米する前のそのままの状態で残されていた。ただ、変わったこともあった。布団が大人サイズに変わってベッドの上に敷いてあることだった。新品の状態で。両親が用意してくれていたのだろう。ボクは両親に感謝した。
 あれから何日か経ち、ヒロの日本大会の試合日になった。ボクは朝からウキウキしていた。しかし、突然テレビで速報ニュースが入る。

アナウンサー「速報です!テニスのアメリカ代表ジェームズ・バーナードさんが体調不良の為、欠場することになりました。」

高嗣「えー?!どういうこと?」

ボクは焦りながらヒロのスマートフォンに電話する。

プルプルプル

しかし、ヒロはいくら鳴らしても電話に出ない。ボクはソウジさんに電話することに変えた。

プルプルプル

ソウジ「はい。高嗣さん。ジェイミーさんのことですか?」
高嗣「ソウジさん!ヒロはどうしたんですか?体調不良の為、欠場って…!」
ソウジ「実は先日、おじいさまとおばあさまにそれぞれお会いしました。おじいさまは他愛ない会話が出来たのですが、おばあさまとは話が噛み合わなく上手く行かずジェイミーさんは急に発作を起こし、めまい、吐き気が治まらず突然意識を失い、次の日からずっと寝込んだ状態です。」
高嗣「そんな…。ヒロは今どこにいますか?」
ソウジ「青葉台大学病院の病棟にいます。場所は…西棟7階の701です。」

 ボクは、急いで自宅を飛び出し電車に乗り、青葉台大学病院を目指した。
病院へ辿り着くと西棟7階701号室まで向かった。
個室か。

コンコン

高嗣「佐藤高嗣です。」
ソウジ「お入り下さい。」

ガラッ

個室。というわりに豪華すぎじゃないか?特別室か?
ドアを開けると居間があり、その奥に患者の寝るベッドがあり、ヒロが点滴と繋がれた状態でベッドに横になっていた。

高嗣「来ました。」
ジェイミー「…タカ。ごめん。試合出れなかった。」
高嗣「…どうしたの?おばあちゃんとの間で何があったの?」
ジェイミー「…今は思い出したくない。傷口が開く。」
高嗣「…。」

 ボクが何も言い返せずしばらく立ち尽くしていると、ソウジさんが話に入った。

ソウジ「高嗣さん。ちょっといいですか?」

ボクはソウジさんに呼ばれ、違う場所で話をする。

ソウジ「高嗣さん。座って下さい。」

ボクが言われたままに座ると、ソウジさんがさも椅子に座る。

ソウジ「ジェイミーさんはおばあさん宅に着くと即おばあさんから養子になってほしいと言われました。ジェイミーさんは養子にはならないと否定しました。おばあさんは養子がダメでも早くテニスなんか辞めてしまいなさい。そんな物は趣味でできるでしょう。と言いました。しかし、ジェイミーさんはテニスは辞めない。俺はテニスが好きだと仰っしゃりました。おばあさんは母を元気づける為か?と言いました。ジェイミーさんはそれも続ける理由の一つです。と言いました。するとおばあさんはあんな母親そんなに大事か?あんな弱い心の外人女。とおばあさんは言いました。ボクにとっては大事な一人の母親です!と言いました。おばあさんはあんな女、ただ子孫を残す為に必要な道具にすぎない。と言いました。すると、ジェイミーさんは心深く傷つき、昔のトラウマを思い出したのか突然めまいを起こし、意識を失い倒れました。」
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