だから振り向いて

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四限目の移動授業。
お腹が鳴ったら駄目だからと三限目終わりに舐めた飴も小さくなり始め新しい飴をポケットから出そうとした時。

私に目をハートにし騒ぎ立てる生徒達に混ざりノーマルと名乗る媚びない生徒の会話が耳に入った

｢なぁ知ってるか？｣
｢なに？｣
｢それがさ、会長が…｣

その言葉を聞いた瞬間、私は走り出していた

"篠原会長が血を出して保健室に行ったらしい"

｢っ｣

あの人はドＭですかっ！



私が勢いよく保健室の扉を開ければ、そこには眼鏡を掛けた、それなりにモテる保険医の斎藤と頭に包帯を巻いている篠原。
どちらもいきなり飛び込むように入ってきた私に驚いて目を丸くしている。

｢お、い…｣

驚きながらも何故ここに、と声を出す篠原に苛々する

何故？
馬鹿じゃないですか！好きだからに決まってるでしょう！
なんて言ってしまいたいけど…言えないのは…臆病だから
一応私達は大企業の御曹司になる。
学生とは言え身勝手な行動は控えなくてはいけない。
たとえ相手を好きでも…こんな感情は隠さなくてはいけないんだ。

私はそう言い聞かせて。

でも

｢篠原会長が倒れたと聞いて心配したんですよ｣

これくらい言っても大丈夫…でしょう
すると篠原が苦笑

｢なんだ、また親衛隊に何か言われたのか｣
｢…｣
｢？｣

大丈夫、そう自己暗示を掛けていたからなのか気がつけば

｢私個人が篠原満也を心配…だと言ったら？｣

という予定のない言葉を吐いていて

｢は？｣

怪訝な表情の篠原。
私は心中慌てながらも、それを出さずに篠原に近付き包帯の巻いてある頭に触れた

｢…ドＭ、｣
｢あ？なんだと、てめぇ！｣
｢親衛隊から言ってこいとの命令ですので｣
｢っ嘘言ってんじゃねぇぞ！｣

いつもの空気に戻りホッとする。

よかったと思うと同時に悲しくなる。
感情に嘘をつくと、何時も悲しい。

自然と眉が下がってきて、それを見せられずに逸らした視線の先に唖然としている斎藤先生がいて私は困った表情のまま笑い掛けた