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第三章
不満
しおりを挟む――カエアンの苛立ち――
いらいらいら
いらいらいらいらいらいらいらいらいらいらいら
蓮花君と紫苑君が付き合っている、だって?
ないないないない、ありえねー
ってゆーか、何であんな奴がもてるんだろうね?
僕は蓮花君の周りを囲む女子に目を向けた。
かわいそうに。皆、だまされてるよ・・・・・・。
「え~と、…紫苑さんに聞いてみたらどうですか?」
女子たちに聞かれた、二人は付き合っているのかという問いに、蓮花君はちょっと照れたように答え濁す。
・・・・・・・・・・は?
なに答え濁しちゃってんの?
普通に言えばいいでしょ
紫苑さんと付き合っていません、って。
ねえねえねえねえねえええええええええ!!!!!!
「蓮花君と紫苑さんが付き合ってる?・・・・・・・ありえないんだけど!」
僕は、蓮花君をにらみつけて冷たく言い放つ
「ありえなくないですよ。だって、今、実際に俺と紫苑さんは恋人ですから。」
蓮花君は、さらりとそういった。
え
え?
えええええええええええええええええええ!?
紫苑君が言ってた恋人って蓮花君だったんだ、、、
僕は認めない
こいつに紫苑君を幸せになんてできない。
だから・・・・・・・・
――『テラシャン』――
「おはよう!」
紫苑は、教室の戸を開けた。
「お、おはようございます。紫苑さん!」
「オハヨー紫苑ちゃん。」
蓮花君と万里ちゃんが紫苑に挨拶を返す。
そう、ここまではいつも通りだった。
、、、、、、、、、ここまでは、、、。
「「「おはよう!緑川さん♥」」」
紫苑のクラスの黒川ファンクラブの女の子たちも、紫苑に挨拶を返してきたのだ。
え?何?
「そういえばさぁ、緑川さんってぇ、とってもきれいな髪の毛だよね!」
「確かに~!」
「ねえねえ、緑川さん♥どこのシャンプーを使っているの?」
「気になる~」
彼女たちはどうしたのだろう。
今まで、全然話しかけてこなかった子になぜ、話しかけようと思ったのだろう、、、、
なんだろう、褒められているはずなのに素直に喜べない、、、
喜んではいけない気がする、、、
ああ、とりあえず、聞かれたんだから、問いに答えよう。
「ありがとう。紫苑は、『テラシャン』ってシャンプーを使用しているよ~」
「えっ?『テラシャン』?!」
「へえ~『テラシャン』かぁ」
「『テラシャン』ねぇ~」
黒川ファンクラブの女の子たちは紫苑のことをちらちらと見ながら、お互いに顔を見合わせて、
「それってさ~」
「、、、、、、、、えっヤバイ」
「うそ~、黒川さんやばくない?」
ニヤニヤしながらコソコソ話し出した。
、、、なんか嫌な感じだ
たかがシャンプーの種類にどうしてそんなに盛り上がれるのか
かわいそ~って心配するふりして、彼女たちの唇は上がっている。
「どうしたの?」
紫苑は、彼女たちにどうしてそんなに盛り上がっているのかを聞いてみた。
、、、嫌な予感しかないけれど
「あのねぇ『テラシャン』ってさ、薬用シャンプーじゃん?だから、汚れがよく落ちて髪の毛がさらさらになるんだけど、、、、、頭皮には刺激が強すぎるみたいで、髪の色が薄まったりはげたりしやすくなっちゃうらしいよ~」
「へ、へえー。そうなんだぁ」
、、、、、、紫苑はそんなことはないと思うけどなぁ。
だって紫苑、十六年間『テラシャン』を使用しているけれど、剝げてないし、色落ちもしてないもの、、、
「あー。だから緑川さんの髪の毛って黒よりちょっと薄くて緑色なんだぁ!」
「緑川さん、絶対に『テラシャン』使うのもうやめたほうがいいって!もとはいいはずなのに、ちょっと髪の毛カビて見えるよぉ」
ズキっ
人が気にしてることをよくもぬけぬけとっ
紫苑だって本当はきれいな黒髪に産まれたかったよ、、、、、
でもさ、深緑だって綺麗でしょ?
深緑色の髪の毛が好きな人もきっといるはずだよ!
て、なんでこんな時に限って蓮花君はお手洗いに行っているの?!
紫苑のことをけなされてるんだよ?
紫苑の恋人だって宣言するくらいなら、紫苑のことをちゃんと守ってよ、、、、
――噂――
「おはよう!」
紫苑さんが教室の戸を開けて挨拶をしてきた。
何事もなかったようににこにこと笑っている。
「お、おはようございます、紫苑さん!」
よかった
昨日はあの出来事があってから、俺は自習室ではらはらとしながら紫苑さんを待っていたが、
結局紫苑さんは自習室に来なかったので、とても心配だったのだ、、、
俺はお手洗いで用を足しながら今後のことを考えた。
………………………………………………………………………………………
「なあ、知ってる? 最近転校してきた黒川蓮花って奴と緑川さんが付き合い始めたらしいよ」
「ハア?最近噂の緑川さんと付き合ってるやつが?」
「へ?噂?どんな?」
「なんかさー女子たちが言ってたの、おいら聞いちまったんだけどさ、」
「うん」
「緑川さんって、怪しい液体を頭につけているらしいぜ。あと、顔がよい男を見つけたら、見栄えなく口説くらしい。風呂も一週間ほど入っていないらしい」
「うげーマジかよー、そいつ男の敵じゃん!しかも風呂入んないとか、、、、、」
「まっ、噂だけどな」
「噂か」
………………………………………………………………………………………
どうやら紫苑さんの悪いうわさが広がっているみたいだ。
だけど、噂は噂だ
紫苑さんが怪しい液体を頭につけていないことも、紫苑さんが毎日お風呂に入っていることも、男を見栄えなく口説いていないことも、俺は、知っている
が、
俺はそのうわさを否定するつもりは、ない。
――みんなで食べたほうがおいしいよぉ♥――
「ねえねえ、緑川さん。お昼一緒に食べよ~」
「私たち、前々から緑川さんとお弁当食べたいと思ってたんだぁ」
「ええ!?」
なんで?
紫苑は自分の事いじめる人となんてお弁当食べたくない!
でも、まあ、お昼は蓮花君もカエアンも一緒に食べるし、紫苑に悪口なんて言えないよね。
もし、何か言われたとしても、証拠人がいるから、言い返せるし、蓮花君が紫苑の代わりに言い返してくれるかも、、、
ガラララ―
蓮花君が教室に入ってきた。
「紫苑さん!先生から屋上の鍵を借りてきました!今日は天気が良いし、屋上で2人でお弁当を食べませんか?」
蓮花君は歌うように紫苑に言った。
「、、、、、。」
どうしよう
「紫苑さん?」
紫苑が黙っていたからか、蓮花は心配をするように紫苑の名を呼んだ。
「ねえねえ、黒川君。私たちもお昼一緒にしてい~い?」
「みんなで食べたほうがおいしいよぉ♥」
「うちら、紫苑たんとお昼一緒に食べようと思っててぇ!」
彼女たちは目をキラキラさせながら蓮花君に話しかける。
頬も見事に薄桃色に染まっていて、彼女たちがどれほど蓮花君のことを好きなのかが見てうかがえる。
なんだかうらやましい
「えっと…紫苑さん、どうします?」
蓮花君は困ったような顔をして、紫苑に聞いてきた。
正直、いやだ。
何で紫苑が、紫苑のことを目の敵にしている子たちとお昼を一緒にしなくちゃいけないのよ。
でも、断ったら、なんだかぐちぐち言いそうだし・・・
「いいね!確かにみんなで食べたほうがおいしいかも!紫苑、おなかすいちゃった…早く食べよー」
紫苑は、無理やり明るく振舞った。
こうして、紫苑たちは屋上でお弁当を一緒に食べることになった。
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