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39 セイレーンの唄?
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不思議な夢を見た。
気付くと、目の前には海が広がっていた。
いつも座っていた岩場。
よく悩むと1人で来ていた場所だ。
空の青と海の青。
そこの境目を見るのが好きだった。
悩み事の妥協点を探す時、そこを見ていれば考えが浮かんできたから……
『おいっ!たけっ!ボケっとすんなっ!』
……知らない声だ。
誰だ?
『はっ?そんな場合じゃねぇぞ!咲さんが10時間も連絡取れてねぇんだぞっ?! 消息不明だぞっ?!』
『なんだって?!』
『こんな天気の中、食料を手に入れようってのが無理な話なのにっ!』
その瞬間、場所が高台に移っていた。
大雨だ。
道路の冠水も見られる。
『さっ、咲ちゃんっ?!』
『たけに声掛けてから、海側から買いに行くって……』
スゥ……と知らない誰かの声も姿も消えて行った。
10時間。
自分はその間に、咲ちゃんと会っていない。
『それは、それはっ?!』
波が高い。
まさか……
必死に走るが、上手く走れない。
足がもつれるし、力が入らない。
今いる場所から、岩場まで10分もかかる。
何故だ……
何故、何故、咲ちゃんに気付けなかった?
何故場所を離れた?
何故何故何故何故……
『急げ……何故違う景色に変わるんだ……?』
急いでいるはずなのに、埠頭に来ていた。
『ここは……?』
来た覚えがない場所だ。
……何か、声が聞こえる?
『咲ちゃんっ?!』
違う声だと分かっているのに、走る。
歩く速度より遅い。
足が重い。
息が苦しい。
自分はこんなに動けなかったのか?!
近付く事に、ハッキリしだした声は唄に変わった。
呼ばれる様に、唄に絡めとられる様にそちらへ向かう。
『ここかっ?!』
声の元に辿り着いた瞬間、声の主は自分の頭の中に入り込んだ。
『なっ?!』
そして、自分の中から唄い始めた。
♫○ー○○~……あなたの瞳が閉じる……
○ー○○~あなたの伊吹は儚く……
○ー○○……星は命を唄う……
♫○ー○○……
♫○ー○○……
♫○ー○○……
誰かの名前を繰り返し繰り返し唄っている……
唄うたび景色が変わる。
砂浜。
港。
崖。
岩場。
どんどん音階が上がって行く……
声がかすれる……
息が苦しい……
耳が頭が喉が声の高さに耐えきれない……
♫○ー○○……
そろそろ限界が……
♫○ー○○……
目の前が真っ白になった。
「はっ……夢……」
目が覚めた。
時刻は午前2時。
怖い時間だ。
「♫……」
思わず名前を唄い出しそうになってやめた。
聞いた事のない唄。
聞いた事のない名前。
これは覚えていてはいけないヤツだ。
きっと唄ってしまったら、囚われるヤツ。
とても綺麗で清んだ歌声。
大気に溶ける様に響く。
それでいて静かな歌声。
自分の口から流れるそれは、頭の中で反響して、意識は持っていかれていた。
危ない御誘いなのは、間違いない。
咲ちゃんを探していて、そちらに持っていかれるなんて。
絶対、良い御誘いの訳がない。
コレはダメなヤツだ。
金縛りとかよりも質の悪いモノだ。
……寝直そう。
うん。
朝。
ちゃんと普段通りに目覚めた。
良かった。
ちゃんと生きてる。
なんか、たまに怖い話で聞くような体験だったと思う。
唄の内容は、もう少し愛を囁くようなくすぐる様な物だった気もするが……
怖く感じなかったのが問題だとも思う。
咲ちゃんがいなくなって、心底焦っていたはずなのに。
それを忘れてしまった事。
忘れる程、唄が強かったって言うのは大問題だ。
「これ……覚えていたら、一生囚われたままのヤツじゃないのか……?」
ゾッとする。
世の中には、時々信じられない事が起きるというヤツか……
気付くと、目の前には海が広がっていた。
いつも座っていた岩場。
よく悩むと1人で来ていた場所だ。
空の青と海の青。
そこの境目を見るのが好きだった。
悩み事の妥協点を探す時、そこを見ていれば考えが浮かんできたから……
『おいっ!たけっ!ボケっとすんなっ!』
……知らない声だ。
誰だ?
『はっ?そんな場合じゃねぇぞ!咲さんが10時間も連絡取れてねぇんだぞっ?! 消息不明だぞっ?!』
『なんだって?!』
『こんな天気の中、食料を手に入れようってのが無理な話なのにっ!』
その瞬間、場所が高台に移っていた。
大雨だ。
道路の冠水も見られる。
『さっ、咲ちゃんっ?!』
『たけに声掛けてから、海側から買いに行くって……』
スゥ……と知らない誰かの声も姿も消えて行った。
10時間。
自分はその間に、咲ちゃんと会っていない。
『それは、それはっ?!』
波が高い。
まさか……
必死に走るが、上手く走れない。
足がもつれるし、力が入らない。
今いる場所から、岩場まで10分もかかる。
何故だ……
何故、何故、咲ちゃんに気付けなかった?
何故場所を離れた?
何故何故何故何故……
『急げ……何故違う景色に変わるんだ……?』
急いでいるはずなのに、埠頭に来ていた。
『ここは……?』
来た覚えがない場所だ。
……何か、声が聞こえる?
『咲ちゃんっ?!』
違う声だと分かっているのに、走る。
歩く速度より遅い。
足が重い。
息が苦しい。
自分はこんなに動けなかったのか?!
近付く事に、ハッキリしだした声は唄に変わった。
呼ばれる様に、唄に絡めとられる様にそちらへ向かう。
『ここかっ?!』
声の元に辿り着いた瞬間、声の主は自分の頭の中に入り込んだ。
『なっ?!』
そして、自分の中から唄い始めた。
♫○ー○○~……あなたの瞳が閉じる……
○ー○○~あなたの伊吹は儚く……
○ー○○……星は命を唄う……
♫○ー○○……
♫○ー○○……
♫○ー○○……
誰かの名前を繰り返し繰り返し唄っている……
唄うたび景色が変わる。
砂浜。
港。
崖。
岩場。
どんどん音階が上がって行く……
声がかすれる……
息が苦しい……
耳が頭が喉が声の高さに耐えきれない……
♫○ー○○……
そろそろ限界が……
♫○ー○○……
目の前が真っ白になった。
「はっ……夢……」
目が覚めた。
時刻は午前2時。
怖い時間だ。
「♫……」
思わず名前を唄い出しそうになってやめた。
聞いた事のない唄。
聞いた事のない名前。
これは覚えていてはいけないヤツだ。
きっと唄ってしまったら、囚われるヤツ。
とても綺麗で清んだ歌声。
大気に溶ける様に響く。
それでいて静かな歌声。
自分の口から流れるそれは、頭の中で反響して、意識は持っていかれていた。
危ない御誘いなのは、間違いない。
咲ちゃんを探していて、そちらに持っていかれるなんて。
絶対、良い御誘いの訳がない。
コレはダメなヤツだ。
金縛りとかよりも質の悪いモノだ。
……寝直そう。
うん。
朝。
ちゃんと普段通りに目覚めた。
良かった。
ちゃんと生きてる。
なんか、たまに怖い話で聞くような体験だったと思う。
唄の内容は、もう少し愛を囁くようなくすぐる様な物だった気もするが……
怖く感じなかったのが問題だとも思う。
咲ちゃんがいなくなって、心底焦っていたはずなのに。
それを忘れてしまった事。
忘れる程、唄が強かったって言うのは大問題だ。
「これ……覚えていたら、一生囚われたままのヤツじゃないのか……?」
ゾッとする。
世の中には、時々信じられない事が起きるというヤツか……
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