騙されて異世界へ

だんご

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 『まぁ、この姿ですから少し不思議な感じがあるでしょうが』

 いや、不思議に摩訶がつくレベルですから。
 摩訶不思議。
 有り得なさ加減が半端ないですから。
 この世の常識から逸脱しているので、計りようがないので。

 『そうですよね。世界が違うとそうなりますよね』

 ……そちらの世界はモノノケの世界ですか?
 八百万の神様の世界ですか?
 人間が見ちゃイケナイ世界観じゃないのですか?

 『いえ、普通に人間は暮らしてますよ?』

 えっと……寄生体として?
 憑いたり食べたり?

 『いえいえ。どんな想像ですか……いえ、そう言う個体もいるにはいますかね……?』

 ギルティっ!!
 『いる』時点でアウトだからなっ?!
 
 『えっと、わかりやすい例えだと、貴方の世界にいるヤのつく怖い方々と貴方は同じですか?と言う事になりますが?』

 ……なるほどなるほど。
 そう言うお話ね。

 『そう言うお話ですね』

 同種族であっても、個性があるってだけのお話?
 いや、職業によって違うってお話?
 あれ、ちょっと難しいお話?

 『そうですね……ちょっと難しいお話です』

 なるほどなるほど。
 わかった様なわからない様な?

 『そうですねぇ……あっ私、異世界召喚みたいなものでこちらにいます』

 ん?んん?
 いきなりライトなノベル臭がプンプンしてきたぞ?!

 『それそれ。元の世界はお話の中で表現されているような世界でした』

 剣と魔法の世界ってヤツですか?

 『そうそう。私、そこで生まれたんですけどね?そこの世界の仕組みに入る直前に、こちらの世界に絡め取られちゃいましてね?』

 絡め取られ……なんか怖い響き。

 『なんでも、ここの神が消滅したから、どこかから呼ぼうとしたらしいのですが、呼掛けをした者の力が異常に強すぎて、異世界線超えちゃったらしいのですよ』

 い、異世界線とな……
 いや、異常に強い能力者も怖いな。

 『まぁ、命懸けでこちらに呼び込んだ様で、私が来た時には息絶えてましたが……そのせいで、交代する方法も、帰る方法もわかりませんでしたし。ただここの土地に力が吸われていく一方でした』

 うわ……
 それは酷いな。

 『ほとんど力が抜けた身体は、どんどん小さくなって……今、この状態が精一杯なんですよ』

 ……酷いお話だ。
 力の回復は見込めないのか?

 『……ここでは、私が回復できるモノがありませんでした。当然です。魔力を補うモノなんて一切ありませんでしたから……』

 魔法のない世界ですからね。
 ……じゃぁ、どうなるんですか?

 『貴方に逢う前だったらば、あと数年程で消えていたでしょう』

 ん?
 何故ここで俺が?

 『貴方から懐かしい匂いがして休んでいましたが……飛躍的に回復したみたいなのですよ』

 ……俺の頭から何の匂いがしてるって言うのっ?!
 加齢な香りっ?!
 オジサンの匂いがプンプンしちゃってた?!
 来る前もしっかりシャワーしてきたのに……
 マジで凹みそうだ……
 でも飛躍的な回復を促すオジサンの香りって……なんかちょっと凄くない?
 臭いけど、たまらんっ!って、犬や猫がよくやってるヤツって、そう言う事なのか?

 『……いえ、魔力の香りです』

 ……はっ?
 なおさら、わからないけど?
 俺、魔法使えませんけど?
 なぜ?

 『不思議ですよね……』

 不思議は不思議だけど、なぜ?

 『多分貴方も絡み取られた方なのでは?』

 えっ?知らないし。
 両親共に国内産ですよ?
 俺もバッチリ純国産です。

 『こちらで輪廻に組み込まれてしまったのでは無いでしょうか?』

 いや、わかりませんから。
 その神様的会話、一切わかりませんから。

 『なので、一緒に帰りましょう』

 ……何の『なので』なの?
 俺、純国産って言ってるじゃん。
 ここで暮らしているのが一番なんですが?
 力が回復したら、帰れるじゃないの?

 『いえ、元の世界に引寄せて貰える確率を上げたいので』

 自分勝手な都合ぶっ込んで来たぞっ?!
 いや、俺関係ないじゃんっ?!

 『一応私、こちらで神をやっていましたし。きっと向こうに行って力が回復したら、貴方をお返し出来ると思うんですよね。神助けだと思って、お願いします』

 神助けって何だよっ?!
 神頼みしか聞いた事ないぞっ?!
 もしくは人助け!
 混じってるからなっ?!
 それに、そっちに行って生き残れるかわかんないし、それにいつ帰れるんだっ?!
 絶対無理な話だよなっ?!

 『大丈夫大丈夫。きっとなんとかなりますよ!』

 無理無理無理無理。
 『きっと』が付いた時点で激しく無理っ!!

 『多分大丈夫です』

 『多分』も『きっと』も変わらんからな?!
 希望的予測だよなっ?!

 『試してみるだけでも』

 訪問販売か押し売りな感じになってやしませんかっ?!

 『とっとと行きます』

 逆ギレっ?!
 まさかの逆ギレっ?!

 『まぁ、どっち道、もう大部分来てますけど』

 騙されてたっ!!
 俺、いつの間にか騙されてたっ!!

 『いやはや、ノリの良い方で助かります』

 乗せられてたっ?!
 いや、頭に乗っかられてたっ?!
 乗られてたっ!!

 『上手い事言いますねぇ~』

 馬鹿にされてるっ!!
 カモられてるっ!!

 『馬鹿にしてはいませんよ?やっぱり貴方は面白い人ですね』

 感心されても全然嬉しくないぞっ?!
 馬鹿にはされてないけどカモだった!

 『そうそう。あっ、褒めても何も出してくれないタイプの方ですね?』

 それ、大多数がそうだし!
 しかも褒められた方が言うセリフっ!!
 更に言えば、褒めてもないからなっ?!
 そしてやっぱりカモだったっ!!

 『本当に面白い人です……あっ時間稼ぎもそろそろ良さそうですね』

 時間稼ぎっ?!
 えっ?どう言う事っ?!
 さっきから立ち話で時間稼ぎしてたのかっ?!

 『申し訳ないですが、正解です。立ち話している様で空間を前進させていました。もう着きます』

 なんだとぉ?!

 『ようやく帰れた……ようこそ【始まりの大地】へ。あっ、お名前聞いてませんでしたね?』

 「ふざけるなよぉ~~~っっ?!」

 叫び声と共に空へ投げ出された。

 「ギャ~~~~~ッッ?!」



 
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