騙されて異世界へ

だんご

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30 夕食

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 まず、キナコ希望の棒々鶏。
 残念な事に、材料が足りなさ過ぎる。
 特に醤油。
 そして味噌系。
 これが無い世界で生きる事になるなんて……
 あるっちゃあるが、それは罠だ。
 無いと同等。 
 転生モノの悲劇、ここに有り。だな。
 
 しゃーない。
 近くまで寄せるか。 
 いや、ガラッと変えた方がいいな。
 鶏ささみを切り、塩をすり込んで置いておく。

 「キナコ、ちょっと庭に出てくるなぁ~」
 
 「にゃんっ!」

 「おっ?一緒に行くか」
 
 「にゃん♡」

 キナコと庭に出て、ハーブを物色する。
 草取りした時に、結構な種類のハーブが自生してたからな。
 少し残しておいたんだ。
 リックは『ナニソレ オイシイノ?』だったけど。
 タバサも深く頷いていたからちょっと怪しいが……
 【鑑定】では食えるし、効能も元の世界と変わらないからな。
 
 「今回は、タイムとローズマリーを使うからな。棒々鶏は難しいから、他の物になるぞ?」
 
 「スンスン……にゃん!」
 
 「知ってる匂いか?」
 
 「にゃん♡」

 「そうだな。家でも結構使ってたもんな」
 
 「にゃん」
 
 肉料理で結構使ってからな。
 キナコも良く嗅いでたんだろうな。

 「こんだけ庭が広けりゃ、家庭菜園もイケそうだな……」

 「にゃん」

 「まっ、家主さんに相談してからだな」

 「にゃん」
 
 家に戻り、釜戸に火を起こして……中火ってどんな感じ?
 分からんわぁ。
 蓋付きの鍋に白ワインと【清浄】をかけたタイム・ローズマリー、鶏ささみを入れ蓋をし、火にかける。
 俺の好みにしていくなら、胡椒や鷹の爪、ニンニクを入れたい所だが。
 キナコも食べるから、刺激は最小限だ。
 子供の舌はデリケートなのだ。

 中火で5分程、後は弱火……あった。
 吊るタイプか持ち上げタイプか……どっちかはあると思ってたんだ。
 こちらは持ち上げタイプ、五徳。
 ちょっと火から離せる。
 お湯を沸かしたりするのに火から離す為、脚立みたいにして、使うんだ。 
 これで弱火で少し。

 ハーブ蒸し鶏の完成だ。

 しかし!
 今回はコレをメインにする訳でもない。
 ササミ1本を残して、他のは皿に移して【アイテムボックス】に収納。
 
 さてさて……うん。
 ササミはまだ熱いが、さわれるな。
 ほぐしとこう。
 トマトは皮を湯むきする。
 キナコの口は小さいし、まだ食べ物だって馴れてない物が多いからな。
 少しでも食べやすく……だ。 
 んでもって、一口サイズにカットする。
 きゅうりも出来るだけ細く、千切りして、軽く塩をふり、揉んでおく。
 水が出たら、捨てる。

 後はドレッシングだな。
 今回は白ワインビネガーにオリーブオイル(リック宅に買い置きしてたやつ)、塩とほんのり胡椒を入れる。
 初日に採って【アイテムボックス】に突っ込んでいたヤツだ。
 他にもジンジャーや赤唐辛子も入ってたが、1度は買っといた方が安全だ。
 次回位に胡椒は買う予定だ。
 後はとろ火にかけ、混ぜ混ぜ。
 火にかけたのは、酸っぱさを飛ばす為。
 酸味は熱を通すと少しまろやかになるのだ。

 さて……
 そろそろ鍋を下ろし粗熱を取ろう。
 【微風】を使っておく。
 ほぐしササミ、トマト、きゅうりを合わせ、冷ましたドレッシングで合えれば……
 ササミ入りサラダの出来上がり。
 味見し……
 うん。
 まぁ、だいたいこんなもんだな。

 「よし。キナコ、飯にするか」

 「にゃ~!」

 「床に敷物しいて、ピクニックスタイルで食おうな」

 「にゃん!」

 だって、テーブルだとキナコとの距離が遠いんだもん。
 ……オッサンの『もん』は、結構厳しいか?

 『※その認識でOKです』

 ……はい。
 まぁいい。
 とにかく飯だ。

 「パンも千切っておくぞ?」

 「にゃん」

 「肉は串から外して、ちょっと切るぞ?」

 「にゃん」

 「とりあえず1切れずつな。まだ食える様なら切るからな」

 「にゃん」

 「ん。じゃ、食おう」

 「にゃん♡」

 塩の味付け位だが、ハーブでほんのり風味が変わるな。
 ビネガーもいいアクセントだ。
 俺的には平気だが、キナコはどうだろうか?
 子供の味覚では、酸味が苦手だったはずだ。
 腐った物を本能で弾く為とも言われているし。
 同じく、苦味は毒と認識して弾くらしい。
 キナコは……

 「はぎはぎうみゃ♡うみゃ♡うみゃ♡」

 イケる口だった。

 「キナコの口は大人だなぁ~」

 「にゃん♡」

 「食べ過ぎて、吐くなよ?一気食いでよく吐いてたんだからな?」

 「にゃん♡はぎはぎはぎはぎ」

 ドキドキしながら一緒に食べてたが、本当に嬉しそうに食うな……
 凶悪な食い方だけど。
 俺も嬉しいから、まぁいいか。

 食後、心配していた吐き戻しもなく、だいたいお子様ランチ分を食べる事ができるのを知った。
 うん。
 幸せだなぁ……

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