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43 そばの実
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朝4時。
脳内アラームがかかった。
寝る前に自分の時計設定をイジったら上手くいったんだよ。
中々便利な機能だよな。
寝ているキナコはそのままに、そっと着替えて台所へ。
まずは火を起こす所からだ。
薪に火を着けるのも、風を送るのも生活魔法でなんとかなるが、火加減に関しては、持ってる魔法じゃ全然ダメ。
回復魔法(小)をかけても、弱火にも強火にもなりやしない。
キャンプ飯の感覚で頑張るしかないようだ。
しっかり火が着いたな。
んじゃ、朝飯の準備を始めるか。
朝飯は、昨日買ったそばの実で蕎麦粥を作ろうと思う。
寒い国の郷土料理だ。
色々なバリエーションがあって面白いのだ。
甘くもなるし、しょっぱくもなる。
勿論、辛くも出来るし、おかずにもなる。
ヘルシーな上に、栄養価も高い。
おまけに腹持ちもいいという、優秀な食べ物なのだ。
それをこれから作ろうと思う。
そばの実に【清浄】をかけ、鍋で乾煎りする。
少し炒ると、プチプチはじけ始める。
この時点で香ばしくも芳しい匂いが食欲を刺激してくる。
朝起きたてだというのに、空腹感を腹が訴えてくるとは……
結構、恐ろしい料理だ。
一通り炒ったら、水と塩を加え、蓋をする。
水分がなくなって来たら硬さを確認。
柔らかくなって来てたらミルクを投入。
焦げつく前に火から下ろし、器に盛る。
粥と言うには、水分のないそばの実粥の出来上がり。
これにバターを乗せれば完成だ。
それは、食べる直前にしよう。
汁物もいるよな。
鍋に油を敷き、切ったベーコンを炒める。
ザクザク切ったほうれん草を投入。
サッと火が通ったら、水を入れる。
塩・胡椒で味を整える。
溶き卵を入れ、スープを混ぜる。
ほうれん草とベーコンの卵スープが完成だ。
切ったソーセージを軽く炒めて一品にする。
ちゃんと食べてくれるかね?
蕎麦粥にして食べる文化はあるのか?
『※その認識でOKです』
あっ、それはあるんだ。良かった。
ここら辺で食べられてるのか?
『※その認識でOKです』
なら安心だ。
日本だとこれが微妙な評判なんだよな。
そばは、つゆと食べる認識が強すぎて、受け入れられない人間が多いらしい。
逆にこの郷土料理を食べている側としては、日本のそばが受け入れられないらしい。
そりゃそうだ。
バリエーション豊富だったソバ料理がいきなりそば汁オンリーしかないなんて、ガッカリだろう?
「おはよう、ソブル。いい匂いだな!」
「ソブル、おはよう!」
匂いに釣られて起きてきたか。
嗅覚凄いな。
「おう、おはよう。キナコがまだ寝てるから、テーブルでな?」
「そうか……」
タバサが少し残念そうだが、子猫だから許してやってくれ。
「んじゃ朝飯な?今日は簡単なヤツにしたんだ。口に合えばいいんだが……」
「おっ!久々だ!」
「ホントだね!」
「2人の気に入る味だといいがな?バター乗せるぞ?」
「たっぷり頼む!」
「あたしも!これ、家によって味が違うから楽しみなんだ!」
「だな!……旨い!ソブル、もう少しバター!」
「ホントに!ソブルん所はミルク入れるんだねぇ。あたしもバター追加で!」
バターたっぷりが旨いんだよな。
なくなるから、バターのおかわりは、ここまでだぞ?
「その時々だろ?」
「そうだね!キノコの時期にその辺のキノコが根こそぎなくなって、毒キノコに手を出したって話まであるくらいだからねぇ」
確か、前の世界でもそんな話きいたぞ?
お国柄の笑い話的なヤツで。
どこも一緒だな。
結果、朝は2人共に2杯ずつで満足だったらしい。
蕎麦粥2杯、スープ2杯。
ソーセージはおかわりしなかったな。
食べ終えると元気に出て行ったので、ここら辺が基本量だな。
そばの実、なかなかに使えるな。
腹に溜まるってのが最高だ。
上級冒険者って言う、胃袋のデカい人種の飯を賄うには、うってつけの食材じゃないか?
これはリピート決定だ。
てか、まるで小学生を送り出す感じじゃねぇか?
大丈夫なのか?
あの大人2人。
普通に心配になるレベル過ぎて怖いんだが?
「にゃにゃん!」
「おっ?おはよう、キナコ。1人で起きて来れて、偉いぞ?」
「にゃん!」
おぉ!朝からキナコのドヤ顔が見れるとは……可愛いぞ!
リック達が出たので、キナコに同じ物を出す。
キナコも時たまコレを作ってたのを覚えていたのか、バターの催促をしてきた。
バター旨いよな?
でも、かけ過ぎ注意だぞ?
「はぎはぎはぎはぎ。あぎあぎ」
うん。
今日も凶悪な顔で食べてるな。
肉食動物丸出しなキナコも可愛いなぁ。
ホッコリな朝飯だ。
自炊万歳だな。
さて、飯も食ったし、弁当も持った。
ギルドに顔出してから薬草採取に出かけるか!
キナコ用抱っこ紐をスタンバイしてキナコは頭。
猫被りスタイルで出発だ。
ギルドに到着すると、前日までは嘘の様に人で溢れてるな。
賑やかと言うよりも騒々しい。
いつの間にか抱っこ紐にキナコが移動していた。
騒々しいからな。
遠征組がこれだけいたって事なんだろうけど……
凄いな。
討伐依頼の受付がてんてこ舞いだぞ?
ララなんか、もう目を回してるんだが?
なんか不憫だな。
「おい!ソブル!こっちだ!」
早速ビルからの呼び出しだ。
とりあえず向かうか。
「おう。ビル。どうした?」
「ワイルドベアの場所に案内を頼みたいんだ」
「そうか。誰を案内すればいい?」
「リックとタバサだ。やりやすいだろ?」
「ありがたいね」
うん。ありがたい。
他の知らない奴らよりも、気心が知れてるからな。
そこは考慮してくれたんだろうな。
何気にギルドが優しい。
「2人共、だいぶ早く出たが、待たせちまったか?」
「いや、大丈夫だ。他の打ち合わせがあってな?ほれ」
ビルに促されて見ると、階段から2人が降りてくる所だった。
タイミングが良かったらしい。
ビルがリック達に手を上げ、声をかける。
さっきも思ったが、ビルの声は結構通るんだよな。
こんだけ騒々しい中で声が通るってのは、凄い事だよ。
「ソブルも来たか。聞いたか?」
「ああ。まぁ、発見者だしな」
「凄いの見つけて来たもんだよ」
「いやな……こっちも驚いた。おかげでご馳走代になったからな。旨かったろ?」
「それであのご馳走が出た訳か!」
今朝と昨夜の飯の余韻を思い出してか、リックもタバサもニヤけた顔になったな……
まあ良かったと思おう。
ん?
ビルの顔が引きつってるな。
仕事の話だな。
仕事、大事。
命に直結だからな。
真面目に、真面目に。
リックとタバサを正気に戻す所から始めるさ。
とりあえずリックを軽くどつく。
「色々聞きたい事もあるが、とりあえず出れるか?」
「いつでもいいぞ!」
「リック……ソブルはどうだい?」
「ああ。大丈夫だ」
「なら、行くかっ!」
「「「リック……」」」
とんだ脳筋野郎じゃねぇか……
呆れたね。
俺とビルの目は、タバサへ向いた。
あれは苦労するぞ……
あっ……
タバサが目を逸らした。
頑張れ、タバサ!
脳内アラームがかかった。
寝る前に自分の時計設定をイジったら上手くいったんだよ。
中々便利な機能だよな。
寝ているキナコはそのままに、そっと着替えて台所へ。
まずは火を起こす所からだ。
薪に火を着けるのも、風を送るのも生活魔法でなんとかなるが、火加減に関しては、持ってる魔法じゃ全然ダメ。
回復魔法(小)をかけても、弱火にも強火にもなりやしない。
キャンプ飯の感覚で頑張るしかないようだ。
しっかり火が着いたな。
んじゃ、朝飯の準備を始めるか。
朝飯は、昨日買ったそばの実で蕎麦粥を作ろうと思う。
寒い国の郷土料理だ。
色々なバリエーションがあって面白いのだ。
甘くもなるし、しょっぱくもなる。
勿論、辛くも出来るし、おかずにもなる。
ヘルシーな上に、栄養価も高い。
おまけに腹持ちもいいという、優秀な食べ物なのだ。
それをこれから作ろうと思う。
そばの実に【清浄】をかけ、鍋で乾煎りする。
少し炒ると、プチプチはじけ始める。
この時点で香ばしくも芳しい匂いが食欲を刺激してくる。
朝起きたてだというのに、空腹感を腹が訴えてくるとは……
結構、恐ろしい料理だ。
一通り炒ったら、水と塩を加え、蓋をする。
水分がなくなって来たら硬さを確認。
柔らかくなって来てたらミルクを投入。
焦げつく前に火から下ろし、器に盛る。
粥と言うには、水分のないそばの実粥の出来上がり。
これにバターを乗せれば完成だ。
それは、食べる直前にしよう。
汁物もいるよな。
鍋に油を敷き、切ったベーコンを炒める。
ザクザク切ったほうれん草を投入。
サッと火が通ったら、水を入れる。
塩・胡椒で味を整える。
溶き卵を入れ、スープを混ぜる。
ほうれん草とベーコンの卵スープが完成だ。
切ったソーセージを軽く炒めて一品にする。
ちゃんと食べてくれるかね?
蕎麦粥にして食べる文化はあるのか?
『※その認識でOKです』
あっ、それはあるんだ。良かった。
ここら辺で食べられてるのか?
『※その認識でOKです』
なら安心だ。
日本だとこれが微妙な評判なんだよな。
そばは、つゆと食べる認識が強すぎて、受け入れられない人間が多いらしい。
逆にこの郷土料理を食べている側としては、日本のそばが受け入れられないらしい。
そりゃそうだ。
バリエーション豊富だったソバ料理がいきなりそば汁オンリーしかないなんて、ガッカリだろう?
「おはよう、ソブル。いい匂いだな!」
「ソブル、おはよう!」
匂いに釣られて起きてきたか。
嗅覚凄いな。
「おう、おはよう。キナコがまだ寝てるから、テーブルでな?」
「そうか……」
タバサが少し残念そうだが、子猫だから許してやってくれ。
「んじゃ朝飯な?今日は簡単なヤツにしたんだ。口に合えばいいんだが……」
「おっ!久々だ!」
「ホントだね!」
「2人の気に入る味だといいがな?バター乗せるぞ?」
「たっぷり頼む!」
「あたしも!これ、家によって味が違うから楽しみなんだ!」
「だな!……旨い!ソブル、もう少しバター!」
「ホントに!ソブルん所はミルク入れるんだねぇ。あたしもバター追加で!」
バターたっぷりが旨いんだよな。
なくなるから、バターのおかわりは、ここまでだぞ?
「その時々だろ?」
「そうだね!キノコの時期にその辺のキノコが根こそぎなくなって、毒キノコに手を出したって話まであるくらいだからねぇ」
確か、前の世界でもそんな話きいたぞ?
お国柄の笑い話的なヤツで。
どこも一緒だな。
結果、朝は2人共に2杯ずつで満足だったらしい。
蕎麦粥2杯、スープ2杯。
ソーセージはおかわりしなかったな。
食べ終えると元気に出て行ったので、ここら辺が基本量だな。
そばの実、なかなかに使えるな。
腹に溜まるってのが最高だ。
上級冒険者って言う、胃袋のデカい人種の飯を賄うには、うってつけの食材じゃないか?
これはリピート決定だ。
てか、まるで小学生を送り出す感じじゃねぇか?
大丈夫なのか?
あの大人2人。
普通に心配になるレベル過ぎて怖いんだが?
「にゃにゃん!」
「おっ?おはよう、キナコ。1人で起きて来れて、偉いぞ?」
「にゃん!」
おぉ!朝からキナコのドヤ顔が見れるとは……可愛いぞ!
リック達が出たので、キナコに同じ物を出す。
キナコも時たまコレを作ってたのを覚えていたのか、バターの催促をしてきた。
バター旨いよな?
でも、かけ過ぎ注意だぞ?
「はぎはぎはぎはぎ。あぎあぎ」
うん。
今日も凶悪な顔で食べてるな。
肉食動物丸出しなキナコも可愛いなぁ。
ホッコリな朝飯だ。
自炊万歳だな。
さて、飯も食ったし、弁当も持った。
ギルドに顔出してから薬草採取に出かけるか!
キナコ用抱っこ紐をスタンバイしてキナコは頭。
猫被りスタイルで出発だ。
ギルドに到着すると、前日までは嘘の様に人で溢れてるな。
賑やかと言うよりも騒々しい。
いつの間にか抱っこ紐にキナコが移動していた。
騒々しいからな。
遠征組がこれだけいたって事なんだろうけど……
凄いな。
討伐依頼の受付がてんてこ舞いだぞ?
ララなんか、もう目を回してるんだが?
なんか不憫だな。
「おい!ソブル!こっちだ!」
早速ビルからの呼び出しだ。
とりあえず向かうか。
「おう。ビル。どうした?」
「ワイルドベアの場所に案内を頼みたいんだ」
「そうか。誰を案内すればいい?」
「リックとタバサだ。やりやすいだろ?」
「ありがたいね」
うん。ありがたい。
他の知らない奴らよりも、気心が知れてるからな。
そこは考慮してくれたんだろうな。
何気にギルドが優しい。
「2人共、だいぶ早く出たが、待たせちまったか?」
「いや、大丈夫だ。他の打ち合わせがあってな?ほれ」
ビルに促されて見ると、階段から2人が降りてくる所だった。
タイミングが良かったらしい。
ビルがリック達に手を上げ、声をかける。
さっきも思ったが、ビルの声は結構通るんだよな。
こんだけ騒々しい中で声が通るってのは、凄い事だよ。
「ソブルも来たか。聞いたか?」
「ああ。まぁ、発見者だしな」
「凄いの見つけて来たもんだよ」
「いやな……こっちも驚いた。おかげでご馳走代になったからな。旨かったろ?」
「それであのご馳走が出た訳か!」
今朝と昨夜の飯の余韻を思い出してか、リックもタバサもニヤけた顔になったな……
まあ良かったと思おう。
ん?
ビルの顔が引きつってるな。
仕事の話だな。
仕事、大事。
命に直結だからな。
真面目に、真面目に。
リックとタバサを正気に戻す所から始めるさ。
とりあえずリックを軽くどつく。
「色々聞きたい事もあるが、とりあえず出れるか?」
「いつでもいいぞ!」
「リック……ソブルはどうだい?」
「ああ。大丈夫だ」
「なら、行くかっ!」
「「「リック……」」」
とんだ脳筋野郎じゃねぇか……
呆れたね。
俺とビルの目は、タバサへ向いた。
あれは苦労するぞ……
あっ……
タバサが目を逸らした。
頑張れ、タバサ!
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