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最高天使 降臨

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 人間界よりも緩やかに時を刻む魔界。天界の時間経過も然り。さらに緩やかな横軸の流れが存在する。だが、それでも時は経っている。そして同時に、超越した天の眼をも持つ存在なのだ。

 (シャルスティーヤさまの中では・・・)

 その愛を求めれば、癒やしの光を注いでくれる天の頂点。だが、それは万人に対して。純粋たる想いを抱いて願う、全ての存在に対して。魔族であろうと公平に。

 ラシュレスタという、かつて天界で仕えていた天使だけへの特別な振る舞いではないのだ。

 (私のことなど・・・きっと・・・)

 癒やしと共鳴の最高天使。見通す異能たる力と優しさで、流れゆく時の中の一つの現象として覚えていてはくれても、まさか魔鳥の視線の向こう側にいるなんて思いつきもしないだろう。

 でも、それでもいい。それでも―――

 (愛しています・・・)

 どんな身になろうと変わらない。あなただけを。永遠に。

 静かに祈るように。心の中で想いを告げたラシュレスタの前で、最愛の存在がその光り輝く右手を、スッと前に差し伸べた。

 そして、その美しい唇が形をかたどった。

 「ラシュレスタ・・・」

 「っ!!」

 愛情に満ちた微笑みが崩れ去るくらいに、涙が溢れ出た。

 (まさか・・・そんな・・・・そんな・・・)

 首を振って、視界を邪魔する涙を落とす。見つめていたい。自分の名を呼んだその存在を。

 (あぁ・・・)

 困ったように眉をひそめて微笑んでいるその顔。その優しい空色の瞳。変わらずに見てくれている。

 ラシュレスタが大きくしゃくり上げた。涙が止まらない。泣きじゃくる。子供のように。嗚咽をもらす。

 (あぁ・・・)

 まさか・・・まさか・・・呼んでもらえるなんて。気がついてもらえていたなんて。そうです。私です。私はここにいます。

 (あぁ・・・)

 帰りたい。その側に。その腕に。ラシュレスタが鏡面に向かって手を伸ばす。帰りたい。あの頃に戻りたい。あの胸に飛びこみたい。

 (あぁ・・・)

 だが、拳を強く握りしめて、首を振った。

 一体、誰がその手を取れるだろうか―――

 自分は許されない感情を、劣情を抱いてしまったのだ。美しく清らかな至高たる存在に。

 欲しい。欲しくてたまらない。愛されたい。自分だけを。特別に。身も心も愛して欲しい――その想いはいまだに変わらない。

 (申し訳・・・ございません・・・)

 あれほどまでに寵愛を受けていながら、堕ちてしまった自分。今もこうして呼んでもらえたというのに。こうして、手を差し伸べてくれたというのに。

 それでも、まだこの欲情は変わらない。消え去らない。

 (あなたが・・・欲しい・・・)

 あの悪徳と退廃の地と化した街で、激しく抱き合っていた人間たち。彼らのように。あなたと愛し合いたいのです。

 (あなたが・・・欲しくてたまらない・・・のです・・・)

 無償の愛ではなく。愛して欲しい。愛し合いたい。自分が望んでいるのはあの行為なのだ。

 (あぁ・・・・・・)

 だから・・・

 一体、誰がその手を取れるだろうか―――

 ラシュレスタが泣き崩れた。

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