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淫欲に堕ちた妖精王子
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やれ、日の光やら風の精やら花の精やら。これで四度目か。発言の持つ矛盾についてはすっとぼけているのか。それとも矛盾自体に気がついていないのか。
なんだかんだ言って、今度こそできたと呼び出しをくらっては最後にはねだられるのだ、あの行為を。
「リリートゥ、十分すぎる・・・・・・今まで作ってもらった苗も本当に申し分なく、私の城で綺麗に咲き誇っている。私の中では、今日のこの薔薇が最高品質。これ以上、お手を煩わせるわけには・・・」
「お手を煩わすなんて・・・ラシュレスタさまのためなら全然・・・それに・・・差し上げた苗を大切に育てて下さってることは風の噂で耳にしておりました・・・とても嬉しくて・・・だから・・・」
(たいしたものだ・・・)
要するに、まだしたいと。したくてしたくてたまらないのに、その下心を微塵すら感じさせない言い回し。実に見事だと感じ入る。
「ラシュレスタさま・・・わたくしの気持ちはわかってらっしゃるくせに・・・」
長椅子に押し倒さんばかりに寄りかかってくる相手。そのまま逆らわずに滑り落ちた。これから始まる行為への緩衝材も兼ねるツタが敷き詰められた床へと。
リリートゥが手を振って、魔妖気で邪魔なテーブルを払いのけた。もはや典型パターンと化した流れ。
「ラシュレスタさまだからこそ、がんばれて、そして・・・こんなにもがんばったのです・・・だから・・・ね? ご褒美を下さらないの?」
身体の上に当然のように乗っかって、唇に指をのせてきた。甘えるように小首を傾げる相手に、形式的に微笑みで返す。
「本当に美しい方・・・ラシュレスタさまほど美しい方を、私は存じ上げません・・・」
うっとりとした表情で重ねてきた唇。恥じらいもなく舌を挿し入れてきた相手に、心中で応じた。
(それは嘘だ)
リップサービスにしても、あまりにも白々しく聞こえる。
(お前は会ってるはずだ・・・あの方に・・・この世界で一番美しい方に・・・)
「ん・・・ぅん・・・んん・・・」
絡めては舐め回す舌の動き。好き勝手にさせながら、ラシュレスタの心は別のところにある。
どうしても、あめが二つ欲しいと泣き叫ぶ妖精の子。他の子は皆、一つで満足しているというのに。いつまでたっても聞き分けないわがままな子供。
『二つでないと意味をなさない。そう求めるお前には与えよう。だが――』
この上なく麗しい存在が、苦笑するように困ったように眉をひそめながら笑みを浮かべる。優しく告げた。
『他の子が別の機会になにかを特別に欲しいと願った時、お前はそれを理解しなければならない。自分が欲しがったように、その子にとってはどうしても必要な物なのだと。それが大切だ。いいな?』
直に手渡してもらえたことで、にんまりと笑みを浮かべた童子――
そう、あれはお前だ。そして、お前は二つ欲しかったのではない。あの方の気をただ引きたかっただけだ。あざとさは、あの頃からなに一つ変わっていない。
なんだかんだ言って、今度こそできたと呼び出しをくらっては最後にはねだられるのだ、あの行為を。
「リリートゥ、十分すぎる・・・・・・今まで作ってもらった苗も本当に申し分なく、私の城で綺麗に咲き誇っている。私の中では、今日のこの薔薇が最高品質。これ以上、お手を煩わせるわけには・・・」
「お手を煩わすなんて・・・ラシュレスタさまのためなら全然・・・それに・・・差し上げた苗を大切に育てて下さってることは風の噂で耳にしておりました・・・とても嬉しくて・・・だから・・・」
(たいしたものだ・・・)
要するに、まだしたいと。したくてしたくてたまらないのに、その下心を微塵すら感じさせない言い回し。実に見事だと感じ入る。
「ラシュレスタさま・・・わたくしの気持ちはわかってらっしゃるくせに・・・」
長椅子に押し倒さんばかりに寄りかかってくる相手。そのまま逆らわずに滑り落ちた。これから始まる行為への緩衝材も兼ねるツタが敷き詰められた床へと。
リリートゥが手を振って、魔妖気で邪魔なテーブルを払いのけた。もはや典型パターンと化した流れ。
「ラシュレスタさまだからこそ、がんばれて、そして・・・こんなにもがんばったのです・・・だから・・・ね? ご褒美を下さらないの?」
身体の上に当然のように乗っかって、唇に指をのせてきた。甘えるように小首を傾げる相手に、形式的に微笑みで返す。
「本当に美しい方・・・ラシュレスタさまほど美しい方を、私は存じ上げません・・・」
うっとりとした表情で重ねてきた唇。恥じらいもなく舌を挿し入れてきた相手に、心中で応じた。
(それは嘘だ)
リップサービスにしても、あまりにも白々しく聞こえる。
(お前は会ってるはずだ・・・あの方に・・・この世界で一番美しい方に・・・)
「ん・・・ぅん・・・んん・・・」
絡めては舐め回す舌の動き。好き勝手にさせながら、ラシュレスタの心は別のところにある。
どうしても、あめが二つ欲しいと泣き叫ぶ妖精の子。他の子は皆、一つで満足しているというのに。いつまでたっても聞き分けないわがままな子供。
『二つでないと意味をなさない。そう求めるお前には与えよう。だが――』
この上なく麗しい存在が、苦笑するように困ったように眉をひそめながら笑みを浮かべる。優しく告げた。
『他の子が別の機会になにかを特別に欲しいと願った時、お前はそれを理解しなければならない。自分が欲しがったように、その子にとってはどうしても必要な物なのだと。それが大切だ。いいな?』
直に手渡してもらえたことで、にんまりと笑みを浮かべた童子――
そう、あれはお前だ。そして、お前は二つ欲しかったのではない。あの方の気をただ引きたかっただけだ。あざとさは、あの頃からなに一つ変わっていない。
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