最高天使に恋をして～忘却の河のほとりには～

愛に囚われた天使～シャルスティーヤ～

2

　世界は無であり、光でしかなかった。

　ある時のこと――光は確固たる意志をもって、自らの波長にあえて揺らぎの強弱をつけて渦を発生させた。そして、内なるところに「領域」を創造すると「天界」と名付けて「創造主」となった。

　作られた「天界」は光源よりも光彩度数をやや低めただけのモノではあったが、それによって光明だけであった世界に明確な境目が出来た。

　そして「天界」と母体は高次元の光である"紐"で結ばれた。

　次に、創造主は「天界」を振動させることによって、もう一つの領域「幽界」のちに「煉獄の地」となる領域を生み出した。「幽界」もまた「天界」と光の"紐"で繋がれ、通路を創った。

　この通路を通して、大元である高次元の光は「天界」から「幽界」にも届いたが、その光の彩度は徐々に徐々にと低下していった。

　ある程度まで低下すると、今度はその「幽界」を振動させることで、もう一つの領域「妖精界」を生み出した。「妖精界」もまた「幽界」と光の"紐"でつながれたが、次元はかなり低下した。

　その後「創造主」はしばらく待ち、時が来ると今度はその「妖精界」を振動させることで、もう一つの領域「魔界」を生み出した。

　出来た「魔界」は「妖精界」側の"紐"で繋がれたものの、誕生すると同時に闇色へと変化し始めた。

　こうして「創造主」は自らの波長を段階を追って落とすことで、闇と光、陰と陽という、相反する性質を持つ世界を創り出すことに成功した。

　続けて、二体の「大天使」を創り「天界」に置く――さらには闇色を少し混ぜて「上位の天使」を。そして、それよりも闇色がもう少し増した形で「下位の天使」を。

　次に、もっと闇の程度を増やして「妖精」を。そして最後に、闇そのモノから「魔族」を。それぞれ、数十体ずつ作り上げると、各領域に住まわせた。

　仕上げに、唯一無二の光であった「創造主」は、自身の創った闇と光、陰と陽の相反する性質のモノを掛け合わせることで、物質世界を創り、それを「人間界」と名付けた。

　そして、その「人間界」を「天界」と「魔界」の間に位置づけると、それぞれの属性からできた"紐"で繋げた。

　なぜ、こうまでして「人間界」を創りあげたのか。「創造主」はその有限なる物質世界に向かって、自らを大きく揺らがせると、あまたなる光の粒を放った。

　瞬時にして「人間界」へと光の同胞たちが旅立っていく。その光景を見送ると、創造の手を休め、時が満ちるのを待っていた。

　その「時」とは一体、何なのか。それは「創造主」しか知らない――