Children Of The God's

鈴木ヨイチ

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第1章

神の視る島

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 ここは、神の視る島『カミミール』。地球の中の、地上から遥か上空を浮遊している島。

 この島は約500年前に、神達が創造した、地上がモチーフの別世界。

 この島に住んでる俺の名前は『ノーマ』。足の速さにちょっとだけ自信がある、平凡な男子高生。歳は、今日で16歳。

 そんな、俺が住むこの島は、浮遊してるけど、地上との違いは基本的に無い。人の違いは、『特殊能力』が使える事ぐらい。

 島を地上からは認識出来ないし、島自体がゆっくり移動してる。

 移動も不規則で、朝と夜が時間で決まってる。明るい夜もあれば、暗い朝もあるって事。

 1日は24時間、週7日、12ヶ月で1年、で365日。これは全く地上と同じ周期。

 創られた目的は、暇を持て余した神々の娯楽として。

 地球上の全ての生き物は、『最上神』と言う一番偉い神が創造したから、他の神達は目的も分からず、何も出来ない。

 それなら創ってしまおう。となった神達は、最上神に許可を貰って、干渉出来る別世界を創造。それがこの島。それが『創造神』。

 この島は、人の住む都市の周りが、森で囲まれてて、様々な生き物が住んでるけど、全容は創造神達しか知らない。

 たまに街に迷い込んで来る生き物もいて、そうすると街中に警報が鳴って、イベントが始まる。退治した能力者は勲章が貰えて、様々な物と交換出来る。    

 結構な頻度で、なにかしらのイベントが発生するけど、俺にはまだ関係ない。

 なんで森があるのかも不思議だと思うし、街の外れには川が流れてるし、森の周りには海があるし、空の上なのに。でも気にするだけ無駄なのが、この世界。

 この島には、能力者と非能力者が存在して、人口は約50万人。

 その内、能力者は1割もいなくて、基本的に、『育成』されてる人は能力を持ち、非能力者は普通の住人。

 ほとんどは非能力者の子供で、産まれてくる子供の中から、神に1人選ばれる。

 選ばれた子供は、産まれた時に1つだけ特殊能力に目覚めて、育成される。そこで『能力者』と『育成神』の関係になる。

 ちなみに、これらは全て、俺の育成神が教えてくれた事。 

 どんな能力に目覚めるかは、育成神も知らない。情報欄に能力名が追加されて、初めて分かる。

 親は何も知らないし、育成神も親には関与出来ないから、俺は、母の『マーザ』と父の『ファジー』と家族3人、仲良く普通に暮らしてる。
    
 能力者には、見分ける方法が『2つ』あって、1つは産まれてきた時に、6種類ある色の内、どれかの光を放つらしく、それで確認出来る。
    
 もう1つは、空間に目のマークが現れて、その目印を見れば確認出来る。どちらも、非能力者には見えない。

 目印が付いてる意味は、育成神が視てる時は目が開いて、視てない時は消えるようになってて、育成神の視点で動く。

 光の意味は教えてもらってない。と言うか教えてくれない。

 この色を視て、育成を放棄する神もいるらしくて、育成神が居ない能力者もいる。

 ただ、引き継ぎは出来て、引き継ぐ側の育成神と、引き継がれる側は育成神と能力者が、同意した場合のみ許される。

 育成出来るのは、最初に産まれた1人と、弟、妹、その子孫だけで、やり直しは出来ない。

 納得いかなくても、他に育成する方法は無くて、殺す事も出来ない。

 こうして、約500年前に始まったこの世界は、今では能力者の一族も存在する。

 その一族でも、能力者と非能力者に子供が出来た場合、その子供は育成対象に出来ないから、途絶える事もある。

 こんな感じで、何を考えてるか分からない神様だけど、人間同様に死があるらしい。

 神の死がどういうものか分からないけど、寿命は約1000年で、最上神から寿命を貰えるから、不死ではないけど不死。

 なんだかよく分からない。

 育成神曰く、この世界が出来てから寿命が無くなる神が増えたらしいけど、理由は分からない。

 ただ寿命を貰える訳ではなく、様々な界を監視して、その報酬が寿命。人間で言うお金の代わり。

 この島は、『運営方神』が、専属で全てを管理していて、人間は問題を起こした場合、『裁判神』に裁かれる。この神は、どちらも創造神。

 他の神は監視の他にも、様々な業務があって、傷を負うような事もあるから、もしそうなった場合は、『女神』達が治癒してくれる。

 この島の住人も、各地にある女神の恵病院で、治療して貰える。

 育成に関しては、神達が男の子で、女神達が女の子と決まってる。
    
 他には天使達もいて、天使は能力者と育成神の仲介役で、能力者のサポートもこなす。

 育成神は、複数を視るのに対して、天使は1人1人に専属で就く。

 育成神が視てる時はこっちに居て、視てない時は天界にいるらしく、能力者が呼んでも来る。

 俺の天使は、見た目がまだ子供なのに、歳は50歳で生意気だけど、呼べばすぐに来るし、なんだかんだ良い奴。

 ちなみに、天使も寿命は1000年だけど、寿命を貰えないから、確実に死んじゃう悲しいやつ。

 こんな感じの、一言で言うとおかしな島。

 地上に比べたら『異常』な島だけど、産まれた時から居る俺にとっては、これが『日常』だから、受け入れてる。

 考えるだけ無駄だし、何より今日は俺の誕生日だから、家で祝ってくれるし、プレゼントも貰えるらしいから、こんな島でも、なんだかんだ言って楽しい。

 そう言う事で、俺は今帰ってる途中。

 今の時間は、夜の20時前。こんな時間まで、何をしていたかと言うと、余り早く帰って来ないでと、親に言われたから。

 理由はあえて聞かなかったけど、多分、色々と祝う準備。

 18時に学校を出て、幼馴染みの『ウル』に声をかけたら、予定があるからって帰られた。だから、時間を潰す為に走ってたら、結構遠くまで来てしまっただけ。

 ちなみにウルは、ショートカットの可愛い奴。ウルには絶対言わないけど。

 そんな事より問題なのは、家の方まで戻って来たけど、まだ着かないから、それまで暇な事。

(帰るまで天使でも呼ぶか。来い天使)

「来るか……」
「おい!」

 天使は口に出しても、思っただけでも来るから、便利だけどちょっと面倒臭い。

「お、相変わらず来るの速いな、お前は」
「うるさいぞ! 呼んだらすぐ来るぞ!」

「あぁ……急にごめんな…………」
「ノーマ……何かあったのか……? 何でも言うんだぞ!」
「……何でもないんだ。からかっただけだぞ……」 
「おい! 騙されたぞ、ノーマが騙したぞ!」

「いやごめんな! 家に着くまで暇でさ」
 いつも通りに騙すが、毎回初めてのように騙される天使には、毎回笑わせられる。

「また、暇潰しで呼んだぞ! 天使はおもちゃじゃないぞ! …………でも……ノーマ……」
「おい天使、俺は騙されないぞ」

「ブォーーーン……ブォーーーン……」

 突然、サイレンの音が街中に響いた。

「サイレン鳴ってるぞ……」
「あぁ、今日は『夜闘』の日だろ。大丈夫だよ。まだ俺には関係な…………ぃ……?」

「現在時刻20時。『夜間闘技』イベントまであと10分。16歳以上の能力者で、非参加の方は速やかに帰宅して下さい」

「そうだぞ……今日で16歳だから、参加出来るんだぞ……」
「やばい……どうする……?」

(あと10分で帰れるか……? いや無理だよな……?)

「なぁ、天使。どうにか参加しない方法はないか? どこか入れる建物とか」

「無いぞ。外にいたら強制参加だから、これは神様でもどうにも出来ないぞ。それに夜闘の日は、全ての建物が19時に閉まるぞ」

 恐らく間に合わないけど、歩くのを止めて、走り出した。
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