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間話 とある魔族の話 1

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俺の名前はレイラック、あだ名はレイだ。 
俺の家族は赤龍の末裔で皮膚は肌色だが、背中に赤い鱗がある。逆鱗っていうのももちろんある。赤龍が子孫なんてありふれてるけどね。
突然だが、俺たちの国は滅亡寸前である。
先魔王が死に、ゼノ王国とオズワルド魔国の前線が崩壊し、残ったのは四天王の方々と俺みたいな弱小兵士だけだ。
ここ王都は大パニックで俺の友人も何人か他国へ亡命している。俺も頃合いを見て亡命するつもりだ。空を見上げながら思い耽っていると、
「おい、レイ!新しく誕生した魔王がコロシアムで何かおっ始めるらしいぜ!俺たちも行こうぜ!」と俺と同期の兵士である、ゾレが興奮気味で話しかけてくる。
俺は別に興味ない、と言おうとするが、
「しかも、コロシアムには四天王と滅多に見かけられない白死神のマルク元帥、国のトップが揃ってるぜ!」
俺は少し気になった。この滅びし国の王は俺らに何を見せてくれるのか、それが希望か絶望か気になったのだ。
「わかった、少し見に行ってみよう」

コロシアムは満席で通路にまで人が溢れている。初めてここまで人が集まっているのを見た。
俺は友人が先に取っておいた一階席の最前列に座ることが出来た。
「おっ、あれが魔王じゃないか?けど大きくね?」
「確かに、普通は一般子供くらいのサイズなんだけど、成人くらいの大きさがあるな」
すると魔王が口を開く
「まずは突然の召集に答えてくれてありがとう。私がこの国の58代目魔王ベルクソン=エドゥカシオンだ。」
俺たちのことはまるで見ておらず、四天王だけにむけた言葉と分かっているのに、あの魔王からは本能が訴えてくる、彼奴は危険だ、逆らってはならないと。
魔王は言葉を続ける。
「しかし、生まれたての魔王にまだ忠義なんて尽くせるはずないだろう。そこでだ、少し手合わせをしよう。強き者に弱き者が従うのは必然。私が持っている力を貴様らに見せつけ、忠義を誓ってもらおう」
観客席が騒つく。魔王VS四天王なんて聞いたことも見たこともないからだ。この国の状況を見て言えることなのか?そんな野次を飛ばしそうになったが、ぐっと堪えた。
するとアーディ様が
「俺はそれで、賛成だ。魔王様が弱けりゃ話にならないからな」
グリム様も「僕も賛成ー、魔王様と一対一で戦うなんて機会ないしね」
「我も異論はない…」
「私も異議は特にございません」
とドガーム様、エレン様も賛同する。
「ええ、私も直接矛を交える事が信頼を掴む方法だと思っております。しかし魔王様、くれぐれも四天王の方々を誤って殺してしまわないように宜しくお願いします」
マルク元帥が謎の忠告をする。
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