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魔女への入門
第十話 初めての魔法
しおりを挟む魔女の村に来て一ヶ月が経とうとしていた。
困ったことにゲーラはあまり一人になることがない。そしてシアが逆にカインを避けるようになってから、彼がゲーラの傍にいることが増えてしまった。
これではゲーラにカインの魔法を解くよう内々に頼み事もできない。
「どうしよう。このままじゃ追放されちゃうよ」
成果といえば、魔法薬を失敗しなくなったこと。しかし空を飛ぶなどの目に見える最低限の魔法が使えなければ話にならないだろう。
とぼとぼといつものように中央広場へ向かって歩いていると、現大魔女様に声をかけられた。
「あら、また会ったわね。あれから成果はどう?」
「ルカ様……それが全然芳しくなくて……魔力はもうあるみたいなんですけど」
苦笑しながらひと月で覚えたことを簡単に話す。するとルカは疑心の目を向けた。
「というか、貴方の師は誰なの? 教わったのは薬だけ? 魔力の出し方も教えてもらっていないの?」
「魔力の出し方?」
「そう、こんな感じに」
言って魔力を膨らませていく。
シアは初めて、最初からまともに魔法を使うところを見たかもしれない。
ルカは魔力で文字のようなものを書くと、凛とした声で呪文を唱える。
「火炎球」
魔法陣が現れ軽い爆発が起きた。
「うわ、うわぁうわーー」
「貴方の師はお手本も見せてくれなかったの?」
「あ、それは……」
それはそうだと思い至る。魔女ではないカインから魔法を見られる訳がないのだから。
シアは答えず、代わりに今見た魔法をもう一度頭の中でイメージする。体内から魔力が湧き起こってくる感じがしてきた。
(うわ、本当に私に魔力あったんだ!)
先程のルカの魔法を思い浮かべ、同じような文字を書き呪文を唱える。
「火炎球ー!」
プシュッと小さな爆発もどきが起こった。
「そう、そんな感じ。出来るじゃないの」
ルカは頷きそしてーー僅かにその瞳が鋭く光り、釘付けになっていく。
自分と似ている、その魔力に。
「貴方は誰からその魔力をもらったの?」
「元からみたいですよ。ここに来た時から魔力値七十二ほどで」
ルカはその値に驚きを隠せなかった。
「そんなにあったの? 外から来たのに!?」
「この村出身のリューズって子にも驚かれました。先祖に魔女がいたか精霊の恩恵受けたのかって。全然心当たりないんですけどね」
ルカはそっと考え込む。
(精霊の恩恵で私と似るわけがない。先祖に魔女? 私と同じ家系とかで? そんな話聞いたこともないわ)
そもそも外から魔女への入門を志願して来て、まともに魔女になった者など、ここ近年ではほぼいない。毎年数人来ては、魔女になれず追放されていく。
シアも例にもれず追放になるかと思い、あまり相手にする気はなかったのだが、魔力値といいその似た魔力といい、ルカは次第に彼女に興味を持ち始めた。
(ヴェルドも、私と似たシアの魔力に興味を持つかもしれない)
そしてまた彼がその魔力をシアにも与えるならーーと考える。
「ねえシア、よかったら私の家に来ない?」
「えっ?」
「もっと魔法教えてあげるし、ヴェルドにも会いやすいわ。魔力も増やせるかも」
「いいんですか!?」
このままでは追放されてしまうシアは切羽詰まっていた。それにまだ操れないとはいえ、奥さんがいいと言っているなら、魔力が増えること自体は大歓迎ではないか。
シアは迷うことなくルカについていった。
その目が怪しく光っていることにも気づかずに。
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