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1 鑑定の儀編
3-1
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半ば、マリージュに押し切られる形で、帰りの車は赤の樹林の中を通ることになった。許可した兄も兄だ。バカ兄め。
「いよいよね!」
喜ぶマリージュ。目を輝かせている。
今日は朝から、あいにくの曇天。
マリージュの期待する、『木洩れ日に満ちてキラキラしていて、とても幻想的』な光景に出会える気は、まったくしない。
「ちょっと(というかかなり)天気が悪そうだよね」
マリージュにそれとなく振ってみたが、
「赤の樹林は山の合間だから、天気も変わりやすいそうよ、お姉さま」
それ、どこ情報? しかもそれ、悪い方に変わりやすいんだと思うけど。
「幻想的な光景に、すぐ出逢えるかもしれないわ!」
いまさらながら思うんだけど、そういった光景なら、赤の樹林じゃなくて良くない?
「わたくしのお友だちは、誰もこちらを通ったことがないんですって」
いや、それはそうだよね。
時間がなくて急いでいる場合ならともかく、好んでこちらを通る人なんていないものね。
「ここのことを話したら、きっと、皆さん、びっくりするわ!」
いや、それはそうでしょ。
だいたい、マリージュが読んだ本を書いた人も、どういうつもりで、ここを通ったんだか。
「それに、お兄さまや騎士の皆さんが、素晴らしいってことも、話ができるわ!」
精霊騎士なら、もっと他のところで活躍させてあげて。
ただ単に、自慢したかっただけじゃないよね。話を聞いていて、嫌な汗が出てくるんだけど。
「さあ、乗って。そろそろ出発しないと」
兄がマリージュに乗車を促す。
希望通りの道を通って、マリージュががっかりしないといいなぁ。
「楽しみね、お姉さま!」
いや、私はまったく楽しめないわ。
なんてことはマリージュには言えないので、控えめに「そうね」と言って、車に乗り込んだ。笑顔で言えてる自信はない。
車は静かに動き出した。
大神殿を出て、すぐ目の前まで赤の樹林が迫っている。
道は三本。東と西に延びて樹林を迂回する街道と、南に延びて赤の樹林の奥深く入っていく通路。
「なんだか揺れるわね、お姉さま」
樹林に入ってすぐ、マリージュが話しかけてきた。
「ねぇ、お姉さま。道路が壊れてるんじゃないかしら。点検したばかりなのに変ね」
街道に比べ、通路の方はキレイに舗装されているとは言い難い。
大きな街道は車が通れるように舗装されているが、それ以外の道路はまちまちだ。
それに加えてここはその名の通り、緊急時の『通路』でしかないのだから、馬や徒歩で通るのには十分な程度にしか整備はされていない。
車が通れるのだから、これでもまだ、ましな方だと思う。
「車専用の道じゃないからね、デコボコしているの」
なんで、私が説明しないといけないんだろう。いくら有力家門のお嬢様とはいえ、このくらいは常識じゃないの?
「まぁ、車が通らない道もあるのね!」
えええええ……。嘘でしょ。
グランフレイムの個人教育って、これで大丈夫なの?
「デコボコしている道は初めてだわ!」
いやいや、神官長、グランフレイムの教育は秀逸だなんて言っていたけど、あれ、嫌味だったの?
想定外の会話はまだまだ続く。
「でも、本当に不思議な森ね」
これをはたして、森と呼んでいいのか、分からないけどね。
「赤の樹林という名前なのに、赤くないわ。何が赤いのかしら」
そういえばそうだ。赤の樹林は赤くない。
「確かに。赤の樹林で赤い木や赤い葉、赤いものなんて見たことないわ」
「それに、緑で溢れているのに、死んでいるみたい」
ん? マリージュがまた変なことを言い出した。
「え? 死んでいるって?」
「だって、ほら! 生きている木なのに、命の精霊も植物の精霊もまったくいないのよ? 死んだ木みたい」
へー
精霊力がないっていうのが、赤の樹林の特徴だけど。精霊術士には死んで見えるのね、この樹林。
「不思議というより、気味が悪いわ」
私には精霊を見る力はないので、どう頑張っても、普通の森にしか見えない。
精霊術士や精霊騎士が赤の樹林で仕事をしないのって、もしかして、『死んでいるように見えて不気味だから』が理由だとか?
そういえばジンも言っていた。ここでは精霊から情報が得られないと。
「お姉さまは精霊が見えないの? 精霊が回りに近づかないだけじゃなくて?」
「精霊魔法技能がないと、精霊は見えないし、精霊力も感じないのよ」
「まぁ、そうだったのね!」
私に精霊が近づかないのは、この前の兄の話で初めて知った。ジンもメモリアもそんな話はしたことなかったし。教えてもくれなかったし。
精霊魔法技能がないと、精霊が回りに来ないという話は聞いたことがない。あくまでも、技能なしは精霊魔法が使えないというだけ。
精霊は世の中のありとあらゆるところに溢れているはず。というか、赤の樹林以外に精霊が寄り付かない場所があるなんて知らないし。
大神殿でこの話も聞けば良かったかな。自分のことなのに、知らないことが多すぎる。
「ごめんなさい。わたくし、お姉さまが精霊魔法を使えないのは、精霊が回りにいないからだと思っていたの」
うん、私が精霊魔法を使えないのは、単純に技能がないからだよね。精霊がいないここでも、ジンは精霊魔法を使っていたしね。
「それじゃあ、この森が変なことも見えないのね!」
「まぁ、そういうことになるわね」
「あのね、お姉さま、この森はね……」
マリージュはそう言うと、マリージュに見える樹林の様子を詳しく教えてくれた。まぁ、当然だけど私の見え方と変わらない。
普通の森なら、精霊術士にはこう見える、という話を交えながら教えてくれたので、意外と飽きることはなかった。
「それにしても、世の中に、精霊が見えない人がいるなんて思わなかったわ!」
いやいや、この国の約三割は精霊が見えない人なんだけどね。
それに他の国なら約九割が精霊が見えない人なんだけどね。
私こそ、精霊が見えない人がいるのを知らない、そんな人がいるなんて思わなかったわ!
「いよいよね!」
喜ぶマリージュ。目を輝かせている。
今日は朝から、あいにくの曇天。
マリージュの期待する、『木洩れ日に満ちてキラキラしていて、とても幻想的』な光景に出会える気は、まったくしない。
「ちょっと(というかかなり)天気が悪そうだよね」
マリージュにそれとなく振ってみたが、
「赤の樹林は山の合間だから、天気も変わりやすいそうよ、お姉さま」
それ、どこ情報? しかもそれ、悪い方に変わりやすいんだと思うけど。
「幻想的な光景に、すぐ出逢えるかもしれないわ!」
いまさらながら思うんだけど、そういった光景なら、赤の樹林じゃなくて良くない?
「わたくしのお友だちは、誰もこちらを通ったことがないんですって」
いや、それはそうだよね。
時間がなくて急いでいる場合ならともかく、好んでこちらを通る人なんていないものね。
「ここのことを話したら、きっと、皆さん、びっくりするわ!」
いや、それはそうでしょ。
だいたい、マリージュが読んだ本を書いた人も、どういうつもりで、ここを通ったんだか。
「それに、お兄さまや騎士の皆さんが、素晴らしいってことも、話ができるわ!」
精霊騎士なら、もっと他のところで活躍させてあげて。
ただ単に、自慢したかっただけじゃないよね。話を聞いていて、嫌な汗が出てくるんだけど。
「さあ、乗って。そろそろ出発しないと」
兄がマリージュに乗車を促す。
希望通りの道を通って、マリージュががっかりしないといいなぁ。
「楽しみね、お姉さま!」
いや、私はまったく楽しめないわ。
なんてことはマリージュには言えないので、控えめに「そうね」と言って、車に乗り込んだ。笑顔で言えてる自信はない。
車は静かに動き出した。
大神殿を出て、すぐ目の前まで赤の樹林が迫っている。
道は三本。東と西に延びて樹林を迂回する街道と、南に延びて赤の樹林の奥深く入っていく通路。
「なんだか揺れるわね、お姉さま」
樹林に入ってすぐ、マリージュが話しかけてきた。
「ねぇ、お姉さま。道路が壊れてるんじゃないかしら。点検したばかりなのに変ね」
街道に比べ、通路の方はキレイに舗装されているとは言い難い。
大きな街道は車が通れるように舗装されているが、それ以外の道路はまちまちだ。
それに加えてここはその名の通り、緊急時の『通路』でしかないのだから、馬や徒歩で通るのには十分な程度にしか整備はされていない。
車が通れるのだから、これでもまだ、ましな方だと思う。
「車専用の道じゃないからね、デコボコしているの」
なんで、私が説明しないといけないんだろう。いくら有力家門のお嬢様とはいえ、このくらいは常識じゃないの?
「まぁ、車が通らない道もあるのね!」
えええええ……。嘘でしょ。
グランフレイムの個人教育って、これで大丈夫なの?
「デコボコしている道は初めてだわ!」
いやいや、神官長、グランフレイムの教育は秀逸だなんて言っていたけど、あれ、嫌味だったの?
想定外の会話はまだまだ続く。
「でも、本当に不思議な森ね」
これをはたして、森と呼んでいいのか、分からないけどね。
「赤の樹林という名前なのに、赤くないわ。何が赤いのかしら」
そういえばそうだ。赤の樹林は赤くない。
「確かに。赤の樹林で赤い木や赤い葉、赤いものなんて見たことないわ」
「それに、緑で溢れているのに、死んでいるみたい」
ん? マリージュがまた変なことを言い出した。
「え? 死んでいるって?」
「だって、ほら! 生きている木なのに、命の精霊も植物の精霊もまったくいないのよ? 死んだ木みたい」
へー
精霊力がないっていうのが、赤の樹林の特徴だけど。精霊術士には死んで見えるのね、この樹林。
「不思議というより、気味が悪いわ」
私には精霊を見る力はないので、どう頑張っても、普通の森にしか見えない。
精霊術士や精霊騎士が赤の樹林で仕事をしないのって、もしかして、『死んでいるように見えて不気味だから』が理由だとか?
そういえばジンも言っていた。ここでは精霊から情報が得られないと。
「お姉さまは精霊が見えないの? 精霊が回りに近づかないだけじゃなくて?」
「精霊魔法技能がないと、精霊は見えないし、精霊力も感じないのよ」
「まぁ、そうだったのね!」
私に精霊が近づかないのは、この前の兄の話で初めて知った。ジンもメモリアもそんな話はしたことなかったし。教えてもくれなかったし。
精霊魔法技能がないと、精霊が回りに来ないという話は聞いたことがない。あくまでも、技能なしは精霊魔法が使えないというだけ。
精霊は世の中のありとあらゆるところに溢れているはず。というか、赤の樹林以外に精霊が寄り付かない場所があるなんて知らないし。
大神殿でこの話も聞けば良かったかな。自分のことなのに、知らないことが多すぎる。
「ごめんなさい。わたくし、お姉さまが精霊魔法を使えないのは、精霊が回りにいないからだと思っていたの」
うん、私が精霊魔法を使えないのは、単純に技能がないからだよね。精霊がいないここでも、ジンは精霊魔法を使っていたしね。
「それじゃあ、この森が変なことも見えないのね!」
「まぁ、そういうことになるわね」
「あのね、お姉さま、この森はね……」
マリージュはそう言うと、マリージュに見える樹林の様子を詳しく教えてくれた。まぁ、当然だけど私の見え方と変わらない。
普通の森なら、精霊術士にはこう見える、という話を交えながら教えてくれたので、意外と飽きることはなかった。
「それにしても、世の中に、精霊が見えない人がいるなんて思わなかったわ!」
いやいや、この国の約三割は精霊が見えない人なんだけどね。
それに他の国なら約九割が精霊が見えない人なんだけどね。
私こそ、精霊が見えない人がいるのを知らない、そんな人がいるなんて思わなかったわ!
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