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1 鑑定の儀編
4-5
チビが俺の目の前に二枚の紙を差し出す。
「ラウゼルト・ドラグニールとクロスフィア・クロエルの婚約許可書と婚姻許可書だよ。国王と大神殿の署名入り。あとは本人が署名をすれば即オッケー」
「ァア?」
おい、クロスフィアって誰だよ。
勝手に俺と婚姻させるなよ。俺の伴侶は彼女だけだろう。
チビに向けて威圧するが、チビはびくともしない。ニタリと笑っている。
「これ、君にあげるからさ、クロスフィアを保護して大神殿に連れてきてほしいんだ」
「おい」
だから、クロスフィアって誰だよ。
「話がサッパリ分からねぇぞ」
金竜が割って入り、銀竜もそうそう、と加勢する。
だいたい、このチビはなんだよ。という目で竜種三人が睨むがやはりチビはびくともしない。
「ああ、自己紹介か。僕はリングテラ・クロエル。一番目の赤種さ」
チビがサラッとヤバいことを言った。
総師団長、第一塔長、神官長の方にギギギッと首を向けて見ると、三人とも無言で大きく頷いている。
そうか。最初から赤種のチビが主導権を握ってたのか。
「ネージュ・グランフレイムは四番目の赤種だよ。デュク様から戴いた名前がクロスフィア。だから、クロスフィア・クロエル」
チビがサラッとヤバいことを話し続ける。
彼女が赤種だって?
それも四番目っていったら…………。
うん、そう言われてみれば、思い当たることしかないな。
隣にいるカーシェイが「なるほど、そういうことですか」と、すごくすごく納得している。
金竜と銀竜は完全に黙りこくった。
「魔物襲撃で、グランフレイム次期当主のバカが、マリージュ・グランフレイムを助けるため、ネージュ・グランフレイムを見殺しにした」
赤種のチビが淡々と説明しだした。怒りとも侮蔑ともとれる暗い光が、赤い目に宿っている。
「そもそも樹林の中を通りたい、樹林の中で休憩したい、なんてバカなことを言い出したのはマリージュ・グランフレイムだ。バカの妹もやっぱりバカだよね」
チビの赤目がどんどん暗くなる。小さな拳は最初から握りしめたままだった。その拳が小刻みに震えている。
視線は宙の一点に固定され、過去に起きたことを今、目の前で見ているようだ。
赤種は創造と終焉の神、時間と空間の神、運命と宿命の神の権能を持つ。過去を見る力もあるのかもしれない。
ん? ちょっと待て。
「樹林の中で休憩したい、だと? そんな話は聞いてないぞ。だいたい、そんなバカな話、あるか?」
赤の樹林の中を通った上に、中で休憩したって? バカか? バカすぎるだろ?
「だから、バカだって言ってるんだよ。次代がバカ二人だなんて、グランフレイムも終わりだね」
暗い目でニタリと笑うと、チビはふっと力を抜いた。
「でも、バカにしては良い判断だった。おかげで、無事、ネージュが死んで、四番目が覚醒したから」
これで、彼女の死亡届と受理が早かった理由が分かった。さっさとグランフレイムから切り離したかったんだな。
「現在、覚醒した四番目が赤の樹林で暴走してる。想定を上回る火力でね、こっちでも手が着けられない」
握った拳を開き、伸びをしながら、首をぐりぐり回す。
「は?」
今、さり気なくとんでもないことを言わなかったか? 言ったよな? 聞き間違いじゃないよな?
「破壊の赤種があそこまで凄いとは思わなかったんだよ」
と、他人事のように話す。
「おい、他人事かよ」
「そんなわけないだろ。僕らだってやることはやってるさ。
僕、二番目、三番目と、三人がかりで結界を張って、それでも四番目の力を樹林内だけに留めるのが精一杯なんだよ」
赤種のチビはヤレヤレとばかりにため息を付く。
「おいおい。魔物用の結界だろ?」と怯む金竜。
「今は四番目を抑えるのに使ってる」
「その結界で、そのまま抑えることはできないの?」と銀竜。
「覚醒したばかりで暴走状態なんだ。気を抜くと、結界が中から破壊される」
銀竜は質問を続けた。
「破壊の赤種は神をも壊す、って言うけどね。それは本当なの?」
「ああ、そうさ。だから四番目には精霊も近寄らない。壊されるからね。精霊も分かってる。僕ら、赤種だって壊されかねない」
「うわ、マジか」と絶句する銀竜。
「魔物より彼女の方が危険だと? ぽわんとしていて、あんなにかわいいのに?」
彼女を思い浮かべる。記憶の中の彼女は、ちょっとぽわんとしているところもあって、とてもかわいい。聞き間違いであってほしい。
「見た目はぽわんとしているけど、どうやら歴代最強でさ。火力だけなら、竜種魔種合わせても勝てるやつがいないくらいなんだ」
「…………………………………………。」
竜種全員が黙り込んだ。
「でも。伴侶の君なら可能だろ、黒竜」
伴侶という言葉に反応する俺以外の竜種たち。
「そうか、伴侶の契約か! 仮だけどな、そこそこいけるだろ、黒竜!」
「黒竜のことだから、執着の鎖で雁字搦めにしていそうだしね」
「それに、お相手様から痛めつけられても、今の師団長なら嬉しがりますよ」
金竜も銀竜もカーシェイも、俺に対して好き勝手なことばかり言う。が、図星なので言い返せない。
「四番目の暴走を鎮め、身柄を大神殿に運んでほしい。赤種の教育が終わって、力がコントロールできるようになったら、君のとこに連れていって構わないから」
チビも勝手なことばかり言う。
ご褒美ぶらさげてお願いすれば、言うことを聞くとでも思っているだろ。偉そうで癪に障る。
「黒竜だって、早く新婚生活を始め「よし、すぐ行こう」
前言撤回。俺は即座に引き受けた。
新婚生活、良い響きだ。
「一つ聞きたいんだが」
「何々? 四番目の能力のこと? 火力のこと?」
「愛称はフィアでいいか?」
「えーーー、それ、今聞く? 今必要?」
「由々しき問題だろ」
「あーーー、竜種ってそういう生き物だっけ」
「で?」
「好きに呼びなよ。君の奥さんなんだから」
「ああ。他のヤツはフィアって呼ぶなよ。フィアって呼ぶのは俺だけだからな」
「うっわ。大変だな、四番目」
赤種のチビが言った言葉はまるっと無視した。
「さて、話もまとまったところで、段取りを決めよう」
総師団長が何事もなかったように話をまとめにかかった。
「第六師団が赤の樹林に突入し標的を確保、大神殿へ移送。
第五師団は第六師団移動後に現場を探索し浄化。
第七師団は緊急事態に備え後方待機。各師団の現況把握と連絡の中継。
大神殿は標的受け入れの準備。
以上。何か質問はあるか?」
「総師団長、官舎を独身者用から妻帯者用に変更したいんだが」
「それ、今聞くこと?」
赤種のチビがすかさず口を挟んできた。
重要だろ。
今、俺の官舎は俺ひとり分でいっぱい。彼女が快適に暮らす空間が必要だ。
それに、ベッドも風呂も一人用。彼女といっしょに過ごせない。
「許可する」
「こっちで手配しておくよ、ラウゼルト」
「風呂は二人で入りたいから広めで」
「それも許可する」
「こっちで改装しておくよ、ラウゼルト」
「何この連携プレー」
総師団長と第一塔長があうんの呼吸で処理してくれる。さすがにトップ。竜種の扱いをよく分かってる。
「では、さっそく動いてくれ」
俺はカーシェイを連れて会議室を後にした。
「ラウゼルト・ドラグニールとクロスフィア・クロエルの婚約許可書と婚姻許可書だよ。国王と大神殿の署名入り。あとは本人が署名をすれば即オッケー」
「ァア?」
おい、クロスフィアって誰だよ。
勝手に俺と婚姻させるなよ。俺の伴侶は彼女だけだろう。
チビに向けて威圧するが、チビはびくともしない。ニタリと笑っている。
「これ、君にあげるからさ、クロスフィアを保護して大神殿に連れてきてほしいんだ」
「おい」
だから、クロスフィアって誰だよ。
「話がサッパリ分からねぇぞ」
金竜が割って入り、銀竜もそうそう、と加勢する。
だいたい、このチビはなんだよ。という目で竜種三人が睨むがやはりチビはびくともしない。
「ああ、自己紹介か。僕はリングテラ・クロエル。一番目の赤種さ」
チビがサラッとヤバいことを言った。
総師団長、第一塔長、神官長の方にギギギッと首を向けて見ると、三人とも無言で大きく頷いている。
そうか。最初から赤種のチビが主導権を握ってたのか。
「ネージュ・グランフレイムは四番目の赤種だよ。デュク様から戴いた名前がクロスフィア。だから、クロスフィア・クロエル」
チビがサラッとヤバいことを話し続ける。
彼女が赤種だって?
それも四番目っていったら…………。
うん、そう言われてみれば、思い当たることしかないな。
隣にいるカーシェイが「なるほど、そういうことですか」と、すごくすごく納得している。
金竜と銀竜は完全に黙りこくった。
「魔物襲撃で、グランフレイム次期当主のバカが、マリージュ・グランフレイムを助けるため、ネージュ・グランフレイムを見殺しにした」
赤種のチビが淡々と説明しだした。怒りとも侮蔑ともとれる暗い光が、赤い目に宿っている。
「そもそも樹林の中を通りたい、樹林の中で休憩したい、なんてバカなことを言い出したのはマリージュ・グランフレイムだ。バカの妹もやっぱりバカだよね」
チビの赤目がどんどん暗くなる。小さな拳は最初から握りしめたままだった。その拳が小刻みに震えている。
視線は宙の一点に固定され、過去に起きたことを今、目の前で見ているようだ。
赤種は創造と終焉の神、時間と空間の神、運命と宿命の神の権能を持つ。過去を見る力もあるのかもしれない。
ん? ちょっと待て。
「樹林の中で休憩したい、だと? そんな話は聞いてないぞ。だいたい、そんなバカな話、あるか?」
赤の樹林の中を通った上に、中で休憩したって? バカか? バカすぎるだろ?
「だから、バカだって言ってるんだよ。次代がバカ二人だなんて、グランフレイムも終わりだね」
暗い目でニタリと笑うと、チビはふっと力を抜いた。
「でも、バカにしては良い判断だった。おかげで、無事、ネージュが死んで、四番目が覚醒したから」
これで、彼女の死亡届と受理が早かった理由が分かった。さっさとグランフレイムから切り離したかったんだな。
「現在、覚醒した四番目が赤の樹林で暴走してる。想定を上回る火力でね、こっちでも手が着けられない」
握った拳を開き、伸びをしながら、首をぐりぐり回す。
「は?」
今、さり気なくとんでもないことを言わなかったか? 言ったよな? 聞き間違いじゃないよな?
「破壊の赤種があそこまで凄いとは思わなかったんだよ」
と、他人事のように話す。
「おい、他人事かよ」
「そんなわけないだろ。僕らだってやることはやってるさ。
僕、二番目、三番目と、三人がかりで結界を張って、それでも四番目の力を樹林内だけに留めるのが精一杯なんだよ」
赤種のチビはヤレヤレとばかりにため息を付く。
「おいおい。魔物用の結界だろ?」と怯む金竜。
「今は四番目を抑えるのに使ってる」
「その結界で、そのまま抑えることはできないの?」と銀竜。
「覚醒したばかりで暴走状態なんだ。気を抜くと、結界が中から破壊される」
銀竜は質問を続けた。
「破壊の赤種は神をも壊す、って言うけどね。それは本当なの?」
「ああ、そうさ。だから四番目には精霊も近寄らない。壊されるからね。精霊も分かってる。僕ら、赤種だって壊されかねない」
「うわ、マジか」と絶句する銀竜。
「魔物より彼女の方が危険だと? ぽわんとしていて、あんなにかわいいのに?」
彼女を思い浮かべる。記憶の中の彼女は、ちょっとぽわんとしているところもあって、とてもかわいい。聞き間違いであってほしい。
「見た目はぽわんとしているけど、どうやら歴代最強でさ。火力だけなら、竜種魔種合わせても勝てるやつがいないくらいなんだ」
「…………………………………………。」
竜種全員が黙り込んだ。
「でも。伴侶の君なら可能だろ、黒竜」
伴侶という言葉に反応する俺以外の竜種たち。
「そうか、伴侶の契約か! 仮だけどな、そこそこいけるだろ、黒竜!」
「黒竜のことだから、執着の鎖で雁字搦めにしていそうだしね」
「それに、お相手様から痛めつけられても、今の師団長なら嬉しがりますよ」
金竜も銀竜もカーシェイも、俺に対して好き勝手なことばかり言う。が、図星なので言い返せない。
「四番目の暴走を鎮め、身柄を大神殿に運んでほしい。赤種の教育が終わって、力がコントロールできるようになったら、君のとこに連れていって構わないから」
チビも勝手なことばかり言う。
ご褒美ぶらさげてお願いすれば、言うことを聞くとでも思っているだろ。偉そうで癪に障る。
「黒竜だって、早く新婚生活を始め「よし、すぐ行こう」
前言撤回。俺は即座に引き受けた。
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「許可する」
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「風呂は二人で入りたいから広めで」
「それも許可する」
「こっちで改装しておくよ、ラウゼルト」
「何この連携プレー」
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