精霊魔法は使えないけど、私の火力は最強だった

SA

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2 新人研修編

3-2

 甲高い声を上げて、なぜか、高笑いまでし始めたエレバウトさん。

 すぐさま、見張りの上司らしき人に口を塞がれ、隅に引きずられていった。

 うん、上司らしき人、お疲れさま。

 その後、今度は私の上司の人である、第一塔長が簡単に私を紹介してくれた。

「クロスフィア・クロエル・ドラグニール特級補佐官だ。現在、研修のため、塔長室に仮配属されている」

 私は皆に向かって、ペコリと頭を下げる。

 皆、揺れは止まったが、今度は固まったままだ。誰もピクリとも動かない。

「見て分かるように、クロエル補佐官は赤種だ」

 皆、弾かれたように動き出す。ざわつき出す。
 まぁ、赤種ってそうそう目にしないからね。どうだ、珍しいだろう。

「このことは絶対に他言しないこと。いいな」

 上司の人がピシャリと言うと、皆、シーンと静まり返った。

「赤種の一番目である師匠以外で、我が国を見守る大事な存在だ。皆、心するように」

 静まり返る中、フィールズ補佐官が口を開く。

「名前からも分かるように、クロエル補佐官はドラグニール第六師団長の伴侶です。
 塔長室では区別のため、ドラグニール補佐官ではなく、クロエル補佐官と呼んでいます」

 続いて、ナルフェブル補佐官が補足する。

「絶対に名前呼びするな。とくに男は近寄るな。第六師団長、本気でヤバい。消されるぞ」

 うん? この補足、必要?

 ナルフェブル補佐官を見たら、なぜか、大きく頷かれた。
 意味が分からない。首を傾げる。

「あら、あなたのお相手って、第六師団長でしたのね!」

 あれ? エレバウトさん、さっき、隅に引きずられていったはずでは?
 いつの間にか最前列に来てるんだけど?

 エレバウトさんの声は甲高い。

 シーンと静まり返っている中では、余計に甲高く聞こえ、回りの人がギョッとした顔をしている。

「平凡なあなたには、ちょうどよろしいわね! 第六師団長と言えば、全師団で最も、ンゴンゴ」

 いいところで、エレバウトさんの口が塞がれた。ラウが最も何?

「最も何?」

「すみません! 仕事が溜まっているので、鑑定室はこれで戻ります!」

 口を塞いだのは、もちろん、エレバウトさんの上司らしき人。どうやら鑑定室の室長さんらしい。

「さぁ、皆、エレバウトを連れて帰るぞ!」

 上司の人の返事も待たず、鑑定室の人たちはエレバウトさんを取り囲んで、大急ぎで帰っていった。

 けっきょく、最も何なのかは答えてもらえなかった。

「エレバウトさん、ラウは私にちょうど良いって。誉めてくれたのかな」

「どうだろうな」

「ラウが聞いたら、喜びそうだな」

「そうだろうな。君も嬉しそうだな」

「嬉しそう?」

「ああ、いつもより表情が柔らかいし、ニコニコしてたぞ」

 うん、言われた内容も嬉しいけど。
 何より、そう言ってくれる人がいたってことが嬉しい、かな。

 いろいろあったが、鑑定会議は無事に終了した。

 そして、鑑定成功者に与えられるはずの塔長室勤務の権利は、なんと、私が手に入れた。

 はずなのに!

 この事実を知り、私以外の塔長室全員がこの世の終わりのような顔をしている。

 喜んでくれないの?

「同じ職場で働ける喜びと、第六師団長が暴走する恐怖とを天秤にかけた場合、こうなるのは当然だと思います」

 あー ラウは文句を言いそうだな。

「ひぃぃ。文句だけで済むものか。きっと次は第一塔が壊される。職場がなくなれば配属できないからな」

 いや、そこまではしないと思うけど。

「いや、あいつならやりかねないな。第一塔が壊されたら困るから、クロエル補佐官は『権利なし』だ!」

 えー

 こうして私の権利は、周囲の大反対と上司の人の一声で跡形もなく消滅した。

 おかしい。一番、頑張ったはずなのに。




 さらにその後。

 念のためと他の三枚のメダルも《鑑定眼》で視ることになった。
 中まで視てみたが、こちらは何もない、ただのメダルだった。

 フィールズ補佐官の推測通り、魔法陣を刻む前のもののようだ。

 塔長室で私たちは考え込んでいた。

「いつ、誰が、何の目的でこんなものを作ったのか」

 上司の人が問う。 

「魔法陣が刻まれたのは、ここ数ヶ月以内ってところ。古いものじゃない」

 私は答える。

「クロエル補佐官しか鑑定できなかったんだから、作ったのは、神級かそれに近い存在だな」

 ナルフェブル補佐官が推測する。
 おそらく、そうだろう。

「となると、該当するのは、赤種、魔種。あと、超級以上神級未満で、詠唱魔法技能持ち、魔導具製作技能持ち、でしょうか」

 フィールズ補佐官が細かく考察を加える。
 赤種には私やテラも含まれる。

「赤種が《混沌獣の召喚》なんてするの? だいたい何の目的で?」

「師匠と君はしないだろうが、他は分からない。
 取り急ぎ、他にもメダルがないか捜索する必要があるな」

 そうだ。メダルは四枚だけとは限らないし、完成品がないとも言えない。

「これまで四枚とも自然公園で見つかっています。
 もうすぐ、氷雪祭が開かれますね。祭で人が集まるのを狙ってのものでしょうか」

 氷雪祭! ラウに連れて行ってもらうんだから、無事に開催してもらわないと!

「それは可能性の一つだろう。まだ推測に過ぎないものが多すぎる」

「そうだな。これから本部との緊急会議、明日、朝一で、全師団長を集めて対策会議だ。
 鑑定結果の報告と、今後について話し合ってくるから」

 上司の人がそうまとめて、今日の業務は終了となった。




 その日の夜は、ラウがいつも以上にくっついてきた。

 どうやら、上司の人の言っていた緊急会議にラウも呼び出されていたらしい。

 帰りの迎えはメモリアだったし、ラウは少し遅くにヨレヨレになって帰ってきた。

 竜種は人の温もりで疲れが取れると、ラウから聞いた。
 だから、ラウは、疲れているときほどくっついてくる。

 まぁ、くっつくのは良いけど、力を入れ過ぎるとリアルに窒息するので、ほどほどにしてほしい。

「それで、メダル鑑定成功のご褒美は、お休みにしてもらおうと思って」

「フィア、休みたい日はあるのか?」

「ラウと氷雪祭に行きたいの。行ったことないから」

「フィアの初めてを俺と?!」

「ラウは忙しいよね」

「大丈夫だ、フィア。氷雪祭の日はちょうど休みだ」

 氷雪祭で私が無茶なことをするとでも思っているんだろうか。

 ラウが、嬉しそうな、でも悲しそうな、なんだか複雑な顔で私を見つめていた。
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