精霊魔法は使えないけど、私の火力は最強だった

SA

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3 武道大会編

1-7

「それでですわ! 最近、組み紐のお守りが流行ってるんですって! クロエルさん、ご存知?」

 私の目の前で、にこやかに甲高い声をあげて、クリンとした金髪の女性が話を始めた。

 言わずと知れた、エレバウトさんである。お茶を片手にいつもの調子全開。

 ところで、組み紐のお守りって何? また、私の知らない流行物?

「組み紐のお守り? 組み紐飾りと何か違うんですか?」

「まぁ、やはり、ご存知ないのね?」

 エレバウトさんが、予想通りといった顔で、うんうん頷く。
 なんでこの人、いろいろ知ってるのかな?

「あたくしが懇切丁寧に教えて差し上げましてよ!」

「あ、お願いします」

 食いつくような返答に、思わずお願いしてしまった。




 この日は週一度の塔長室勤務の日。

 先月のお茶会が好評だったので、月に一度は空いた時間にお茶会でもしよう、と話していたんだけど。

 ちょうど上手い具合に午後の時間がまるまる空いて。
 午前中に第八師団に行っていたフィールズ補佐官もやってきて。
 マル姉さんも出張から帰ってきて。

 アスター補佐官(弟)は泊まりで出張中。
 ナルフェブル補佐官は部屋の片隅、自分の机でデータと格闘中。

 視界に入ると面倒臭い塔長&金短髪男は会議で不在。

 ラウにアップルパイも焼いてもらって持参して。
 フィールズ補佐官がオススメだというお茶を入れてくれて。

 さぁ、お茶会!

 と始まってみたら、なぜか、エレバウトさんが混じってる。

「エレバウトさん、いつから混じってました?」と聞いても、

「あら! あたくし、最初からいましたわよ!」と返ってくるだけ。

 エレバウトさんて、隠密技能持ち立ったっけ?と思って視ても、うん、ないよな隠密技能。

 エレバウトさんは不思議が尽きない。




 で、けっきょく、組み紐のお守りの話を一通り聞き終わる。

 エレバウトさんは語り口調も有無を言わせない迫力があった。

 話によると、組み紐のお守りとは、キレイな模様が描かれた札と組み紐を合わせて作った、何の効力もない物だという。

 自作するものではなく、売り物だそうだ。
 どこで売ってるかまでは、詳しく教えてくれなかった。
 どうやら、王都にある市場のどこかに、露店が出るらしい。

 見た目のキレイさと華やかな感じが話題になって、服飾品やちょっとした贈答品として、人気を集めているんだとか。

「けっきょく、あの偽造の護符はいつの間にか消え失せましたわね。流行が去ったという感じで」

 そう。この前、鑑定したあの護符。

 何の効力もないのに、いかにも効力があるかのように騙って売られていたらしい。いわゆるインチキ商売だ。

 見た目もかわいらしいものではなかったからね。

 それでいて何の効果もなしなら、買う人はいなくなる。

「護符って何かしらの効力があるものなんですよ。効力がないただの紙切れは護符とは言いません」

「あれは、ただの紙切れでしたのでしょ? だから『偽造』なんですわ!」

 鑑定室では、こういった偽物の鑑定もよく持ち込まれるそうだ。

「ただの紙切れかどうか、何もないかどうかの鑑定が、一番難しいなんてねぇ」

「それが鑑定の奥深さですわよ!」

「へー」

 マル姉さんの言葉ももっともだけど、偽物だということを鑑定するのは、確かに難しい。

 私は鑑定眼があるから、比較的たやすく見抜ける。

 普通の《鑑定》だけだと、あれもこれもと確認しないといけない。
 手間がかかるうえ、分かったところで偽物なので、ガッカリ感もある。

 私はお茶を飲みながら、皆の会話に相づちを打った。

「そういえば、クロエルさん! 第六師団で補佐を募集しているんですってね!」

「あー、そうですね。師団長付き副官さんの補佐をする人を探しています」

 ラウの予想通り、補佐探しは難航していた。

「総師団長の副官を首になった人ですわね!」

「まぁ、そうなんですけれど」

「カーシェイ副官、元は総師団長付き副官だったからぁ。入れ替わる形になっちゃったのねぇ」

「補佐の募集はしてるんですけど、第六師団、あまり人気がないみたいで」

 募集はしてみたものの応募者ゼロ。

 師団長付き副官の補佐という好ポジションであるにも関わらず、応募はない。

「「……………………。」」

 無言の反応が辛い。

「あら! でしたら、あたくしに良い考えがありますわ!」

「え?! 本当ですか!」

 さすが、一筋縄ではいかないエレバウトさん!
 こんな状況で良い考えがあるなんて!

「ええ! あたくしが応募して差し上げますわ!」

 はい?? どこから出てきた、その発想?

「え?! いや、エレバウトさん。鑑定室勤務ですよね?」

「ええ! ですから、補佐もできますのよ!」

「え?! 塔長室勤務希望でしたよね?」

「ええ! ですけど、あたくしの技能では無理だと断られましたの!」

 はい?? 初耳ですけど??

「え?? どなたに?」

「レクシルド様にですわ!」

「「……………………。」」

 あの人、本人に直接お断りをいれたんだ。かける言葉がない。

「では、さっそく応募しに行きますわね! 皆様、ごきげんよう!」

「「……………………。」」

「行きましたね」

「第六師団は実力主義だからぁ、応募しても採用されないかもねぇ」

「彼女、性格と行動が塔長室向きでないだけで、実力は十分ですよ」

「あらまぁ。クロエルさん、退屈しないで良かったわねぇ」

「そうですね。お茶会も毎日できますね」

「ええーーーーー」

 皆の中で、エレバウトさんの第六師団異動が確定となった。

 て、冗談でしょ?!




「そ、そういえば、メダルはどうなったんですか? 進展、ありましたか?」

 エレバウトさんがいなくなったところで、気になっていたことを聞いてみた。

 あの自然公園での騒動のあと、舎弟(=塔長)が調べているとテラから教えてもらっている。

 自然公園で見つかったメダルは、魔物を召喚する代物だった。
 いったい、誰が、何のためにそんなものを作ったのか。

「責任者に訊いてみたらぁ?」

 マル姉さんの指差す先には塔長室の扉。
 ちょうどタイミングよく、塔長と金短髪男が戻ってきた。
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