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chapter two

20.はじめての *エリスside

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閉じた瞼をゆっくりと開く

随分と考え込んでいた気もするし

一瞬だった気もする

日の沈み具合をみて大分時間が経っていたと気づく

「はは、俺らしくもない」

過去に想いを寄せ過ぎていいことなどないのに

「なあ、ミリア」

親愛など持ったことのない俺だが

楽しいかたり嬉しかったり

少しは人間らしい感情を感じられた気がする

「お前は、化け物か?」

「…はい」

その声はっと振り返る

そこには、はっきりと目を開けているミリアがいた

「私は、化け物ですよ…エリス様」

もう一度肯定する

「体調はもう大丈夫なのか」

「はい、完治致しました」

はは、本当に化け物みてぇ

「お前には、俺が何に見える?」

この本物には俺が何にみえてるんだろな

「それを聞ける間は、人間ですよ」

どういうことかは、さっぱりだがこいつには、俺が人間にみえてるらしい

「…そうか」

それでもきっと人間なのだろう

本物が言うのだから

「なあ、もう少し話しててもいいか」

俺にしては、珍しく弱気だ

知りたいのだ

本物がなにを思うのか

やはり俺は、科学者だなと思う

「勿論です」


それから数刻

たわいもない会話から

最近作った薬について

時には、あの薬はもっとこうしたほうがいいとか

あれがあればもっといいとか

科学談義をした

「あははは、楽しいな
こんなに話を理解して貰えたのははじめてだぜ」

前までの歪んだ笑みでない純粋な笑顔だった

「エリス様が望まれるのでしたらいつでもお付き合いしますよ」

仕事中は駄目ですがと笑いたがら付け加える

本当に不思議だ

会ったばかりだと言うのに何処か懐かしい

「そういえば、お前ずっとここに居るけど仕事平気なのか」

ミリアを呼び出してから数時間は経過している

普段そんなことあまり気にしない俺ではあるがミリアには色々と迷惑をかけている

そこらの何処の誰とも知らない奴がどうなろうと知ったことではないが彼女なら話は別だ

「実は、今日非番でして 
むしろ、私のほうが楽しかったですよ」

「はは、なら良かったぜ」

そこでふと思う

俺はこいつのことをその他大勢としてとは違う認識をしている

ならば、その感情はなんだろう

敬愛とも恋慕でもない

恩愛は近しいものがあるが違う

ん~と唸っているとどうかしたのかとミリアが声をかけた

もういっそ俺らしく聞いてみた

「そうですね、わからないのでしたら
とりあえず『友愛』などいかがでしょう
私としては、少しおこがましい気もしますが」

友愛か

生まれてこのかた友など作ったことも作りたいと思ったこともないが

「そうだな、お前がどうしてもってんならいいぜ」

「はい、どうしてもです」

俺がからかって、こいつが笑って

そんな日常も悪くないと思えた

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