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第三十五話『ダンジョンに寄り道』
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フラン支部長の報酬の件が片付いてから4日が経ち、チェックアウトの日が来た。
つまり、今日は王都を発つ日という事だ――。
「よし、忘れ物無し」
片付けた部屋を見渡して確認、大丈夫だな。
この4日間は殆どこの部屋で過ごした。
外に出るのは食事の時くらい……それ以外は完全に引き篭もった。
もうあの忌々しい顎髭兵士みたいな輩に会いたくないし、面倒事も御免だったからだ。
キャスにはその旨をちゃんと事前に話した。
理解はされたが同時に呆れられもした……。
「ホント、妙なところで神経細いわね、ジロウって……」
そんなキャスには「放っとけ」と返しておいた。
そして、宿をチェックアウトしたら、すぐに港湾都市ウエストバリーを目指す事も話してある。
勿論、色々とお世話になったフラン支部長にも。
アニータにも、フラン支部長のツテで一応目的地と出発日を伝えてもらった。
何しろ相手は王女様、俺みたいな庶民が気軽に会える相手ではないからな。
返事は来ていないが、まあ、伝わっていると信じよう。
「行くか」
確認が終わったので、荷物を背負って部屋を出る。
ロビーまで降りるとキャスが待っていた。
「遅かったわね」
「悪い悪い、ちょっと確認に手間取ってな」
軽く言葉を交わすと、キャスも傍に置いていた荷物を背負う。
「んじゃ、行きますかっ」
「おう」
キャスと合流し、受付で部屋の鍵を返す。
「お世話様」
「ご利用ありがとうございました。またの起こしをお待ちしております」
この10日の宿泊で見慣れたホテルマンのお辞儀に見送られ、俺達は宿を出た。
道中の食料などは昨日までに買ってある。
装備類は元々大体揃っていたから問題なし。
街道を行けば、途中に幾つか村や町がある様だから、補給・休憩も大丈夫――さて、どういうルートで行こうか。
「ねえジロウ、途中で寄りたい町があるんだけど」
購入した地図を見ながら歩いていると、キャスがそう言ってきた。
「構わんが、どこだ?」
「地図でいうと……あ、ここよ、ここ」
キャスは地図の一点、町のマークを指差す。
王都とウエストバリーの間、ウエストバリー寄りに大体3分の2ぐらいの位置にある町――名前は『ビクスビー』。
「この町に何かあるのか?」
「ダンジョンよ、ダンジョン」
「ダンジョン?」
「そう!」
キャスが言うには、ビクスビーはダンジョン探索の拠点としてその筋では結構有名な町で、一度行ってみたかったんだそうだ。
ビクスビーはダンジョンの探索、産出物の取引、冒険者と商売人のやり取り、商売人同士の駆け引き……そういうので発展した町――つまりは、ダンジョン都市マーセンと同じ系統の町という事だ。
ただマーセンのダンジョンとは異なり、ビクスビーのダンジョンは『洞窟型』らしい。
なんでも大昔は鉱山だったとかで、採掘の途中で元々ダンジョン化していた魔物が湧き出す洞窟と繋がってしまい、鉱山は閉鎖――後にダンジョンとして探索される様になったという経緯らしい。
名前は『地竜の巣穴』――後の調査で地竜の鱗や爪などの化石が発見された事から、地竜の巣穴だったのではないかと仮説が立てられ、そのまま名付けられたそうだ。
「やっぱり冒険者はダンジョンでしょ!」
キャスの目が光っている。
確かに、元日本人、そしてファンタジー好きの俺にも『冒険者といえばダンジョン!』という感覚はある。
だから、キャスの提案に否はない。
「よし、行くか。ビクスビー」
「そうこなくっちゃ!」
寄り道だが、どの道ウエストバリーへ行く途中で立ち寄る町なのだ。
そこでダンジョン探索というのも悪くない。
という訳で、ウエストバリーの前にビクスビーを目指して王都を出発――と、そこでふと思いつく。
「なあ、キャス。折角だから飛竜便で行かないか?」
俺はキャスに提案した。
フッとフラン支部長と一緒に乗った飛竜の事を思い出したのだ。
俺1人なら自分で空を飛んでいく手もあったが、キャスがいる以上、抱えるにしろ魔法で浮かせて運ぶにしろ手間がかかる。
その点、飛竜なら金さえ出せば目的地まで運んでもらえる。
そして金は余っている。
なら、キャスさえ良ければ飛竜便を使わない理由はない訳だ。
「えっ!?マジで!?高いわよ飛竜便!?」
「金は余ってるから大丈夫だ」
「おおー!じゃあ行く行く!いや~いっぺん乗ってみたかったのよねえ飛竜!」
キャスがメチャクチャウキウキしている。
ここまで喜ばれるのは、誘った側として悪い気はしない。
「ねえ!早く行こ行こ!」
「ああ、分かったよ」
はしゃいでるなぁ、まるで遊園地のアトラクションを前にした子供みたいだ。
まあ、言ったら怒って騒ぎそうだから言わないでおくが。
さておき、飛竜便を使う事が決まったので、王都の端の発着所に向かう。
フラン支部長と行った道を思い出し、賑わう通りを抜けて発着所に到着――空いている飛竜を見つけてそこの騎手に声をかけた。
「2人、いいですか?」
「はい、お2人様ですね」
若い男の騎手が笑顔で応対してくる。
前に会った騎手とは別の騎手だ。
前の彼は、今日は見る限りいない様だ。
まあ、いいか。
「どちらまで行かれますか?」
「ビクスビーまでお願い」
「ビクスビーですね、畏まりました」
キャスが行き先を告げると、騎手は飛竜を伏せさせ、俺達に乗る様に促す。
「どうぞ、お乗りください」
「お先!よっと」
素早く縄梯子を登るキャス。
相変わらず身軽な奴、不安定なはずの縄梯子をああもスルスル登るとは……。
さて、俺も――
「ほっ」
「うお!?」
キャス、お前、驚き方それでいいのか……?
俺がやったのは、前に見たフラン支部長の真似――ジャンプしてダイレクトに席に乗り込むアレだ。
ちゃんと風魔法で着地の直前に衝撃を緩和したが、フラン支部長ほど自然には出来なかった。
「アンタ、凄いことするわねぇ……!」
「そうか?フラン支部長もやってたぞ?」
「軽く言うな!王都のギルド支部長と同じなんて凄いことに決まってんでしょっ!」
それもそうか。
「え、ええっと……あ、安全の為、命綱はしっかりと結んでくださいっ」
御者席に登った若い騎手が、気を取り直すようにそう言った。
あれ?
既視感?
「そ、それでは出発します!」
まあいいか。
騎手の手綱の合図で、飛竜が羽ばたき、空に飛び上がる。
すぐにスピードが上がり、高く昇っていく。
相変わらずの風圧、今回は風魔法による相殺で目を守る。
「うお~~!速~~い!!」
周りや下を見ながら、キャスがはしゃぐ。
「キャスは飛竜便初めてなのかぁっ?」
「そりゃあそうよっ!(元)Dランク冒険者程度じゃあ、飛竜便なんて高くて使えないわよっ!」
確かに普通の馬車の10倍以上の運賃じゃあ、稼ぎが少ない内は乗ろうとは思わないか……。
「飛竜なんてそれこそ一生縁がないかとも思ってたけど、人生って分からないものよねぇ~!ジロウと組んでからホント退屈しないわぁ~!」
組んだというか、無理矢理組んできたというか……まあ、細かい事は置いておくか。
なんのかんの、俺もキャスと組んでいる認識はあるし、今の状況を悪くないとも思っているしな。
一人旅が1番だと思っていたが、やっぱり少しずつ変わっているな、俺……。
そうして暫く空の旅を楽しんでいると――
「間もなくビクスビーに到着しまーす!」
騎手が声を掛けてきた。
前を見ると、それなりに高い山とその麓に広がる町が見えた。
あれがビクスビーの町、という事はダンジョンはあの山の地下か。
「これより着陸体勢に入ります。着陸の際は衝撃がありますので、しっかりとお掴まりくださーい!」
そう言うと、騎手は手綱をクイと引く。
次いで飛竜が高度を緩やかに下げ始めた。
体、というか内臓が浮く様な不思議な感覚が、過去に数回乗った飛行機を思い出す。
フラン支部長と乗った時は、状況も状況だったし、一定緊張感があってこういう感覚をここまでじっくり味わう余裕はなかった。
「う、ぉ、ぉぉ~……!なんか、お腹の中が浮き上がってるみたいで、なんか、ムズムズするぅ……!」
キャスも初めての感覚を楽しんでいる様だ。
そのまま飛竜は、やはり町の端の開けた場所に着陸する。
少ないが他の飛竜と騎手もいるので、どうやらここが発着所になっている様だ。
「到着でーす!」
「着いた~!よっと!」
完全に止まった飛竜からキャスが飛び降りる。
俺もそれに続いた。
「はぁ~面白かった~!」
キャスは初めての飛竜に満足した様だ。
「じゃあ、お代はこれで」
「えっ!?あっ、は、はい!ご利用ありがとうございましたっ!」
正規料金に騎手へのチップを加えた枚数金貨を渡すと、騎手は俺と金貨を二度見した後、満面の笑みで腰を90度曲げてきた。
さて、支払いも済んだところで――。
「先ずどうする?冒険者ギルドか?」
「そうね、早く着いたし、先にダンジョンの情報も仕入れらとしますか」
という訳で、先ずは冒険者ギルドに行く事に決まった。
発着所から町中へ移動する。
空から見えた限りでは、都市という程大きくはない町だと思ったが、やはり降りて入ってみると結構大きい町だと思える。
道を歩く人もまあまあ多いし、露店や店舗もチラホラ出ている。
歩く中で多く見るのが武器・防具を身に付けた冒険者らしき老若男女、流石はダンジョン探索の拠点というところか。
さて、適当に人にギルドの場所を――
「ねえ、おじさん。冒険者ギルドどこ?」
早いな、キャス。
気付けば、簡素な作りの露店のおっさんに声を掛けている。
「おう、お嬢ちゃん他所から来た冒険者かい?」
「そうよ。ダンジョンに潜りたくてね」
「ああ、やっぱりな。教えてやってもいいが、1つでも買ってくれよ。そしたら教えてやるよ」
商売人らしいおっさんの言葉だが、表情や声色や仕草に嫌味が感じられないので、情報料代わりに売り上げに貢献するのも悪くないだろう。
「え~、しょうがないわねぇ」
キャスも同じ様に感じたからか、商品を眺め始める。
店に並んでいるのは、乾物ってやつか。
魚や肉、それにドライフルーツ、こっちは野菜を干したものか……むっ、あれは!?
「おっさん!そこの黒緑色の奴は、もしかして海藻か!?」
そこにあったのは、籠の中に入れられた、細かくて、黒緑色で、縮れている海藻の乾物ーー乾燥ワカメによく似た代物だった。
「おっ、あんちゃん知ってるのか」
「何?何なのこれ?」
キャスは知らないらしい。
おっさんは乾燥ワカメ(仮)の籠を手前に引っ張ってくる。
「こいつは海に生える水草の一種で『シーウィード』っていうんだ。そいつを適当な大きさに切って干した物さ」
「水草?そんなの美味しいの?」
「俺が食った事があるヤツは、それ自体にはあんまり味は無い。だがツルッと舌触りが良くて、癖がないからスープやサラダに入れるとイケるぞ」
一人暮らしの時はよく味噌汁に入れて食ったものだ。
水で戻してインスタントラーメンに入れたりもしたな。
「おおっ、あんちゃん、やっぱ知ってるな!その通りさ!」
「へぇ、こんなのがねぇ。黒っぽくてパサパサで、あんまり美味しそうには見えないけど……」
「今はカラカラだからな。水や湯で戻せば濃い緑色に変わるんだ。日持ちもするし、食べ方も簡単な上に栄養も豊富だから、重宝するぜ」
「ふ~ん」
どうもキャスは興味が薄い様だ。
「何より、こいつは昔から肌や髪を美しくするって言われていて「買ったぁ!」――うお!?」
メッチャ食いついたな、キャス……。
現金なヤツ……。
結局、キャスは2袋、俺も1袋乾燥シーウィードを買い、冒険者ギルドの場所を聞いてそちらに向かった。
危うく当初の目的を忘れるところだった……。
つまり、今日は王都を発つ日という事だ――。
「よし、忘れ物無し」
片付けた部屋を見渡して確認、大丈夫だな。
この4日間は殆どこの部屋で過ごした。
外に出るのは食事の時くらい……それ以外は完全に引き篭もった。
もうあの忌々しい顎髭兵士みたいな輩に会いたくないし、面倒事も御免だったからだ。
キャスにはその旨をちゃんと事前に話した。
理解はされたが同時に呆れられもした……。
「ホント、妙なところで神経細いわね、ジロウって……」
そんなキャスには「放っとけ」と返しておいた。
そして、宿をチェックアウトしたら、すぐに港湾都市ウエストバリーを目指す事も話してある。
勿論、色々とお世話になったフラン支部長にも。
アニータにも、フラン支部長のツテで一応目的地と出発日を伝えてもらった。
何しろ相手は王女様、俺みたいな庶民が気軽に会える相手ではないからな。
返事は来ていないが、まあ、伝わっていると信じよう。
「行くか」
確認が終わったので、荷物を背負って部屋を出る。
ロビーまで降りるとキャスが待っていた。
「遅かったわね」
「悪い悪い、ちょっと確認に手間取ってな」
軽く言葉を交わすと、キャスも傍に置いていた荷物を背負う。
「んじゃ、行きますかっ」
「おう」
キャスと合流し、受付で部屋の鍵を返す。
「お世話様」
「ご利用ありがとうございました。またの起こしをお待ちしております」
この10日の宿泊で見慣れたホテルマンのお辞儀に見送られ、俺達は宿を出た。
道中の食料などは昨日までに買ってある。
装備類は元々大体揃っていたから問題なし。
街道を行けば、途中に幾つか村や町がある様だから、補給・休憩も大丈夫――さて、どういうルートで行こうか。
「ねえジロウ、途中で寄りたい町があるんだけど」
購入した地図を見ながら歩いていると、キャスがそう言ってきた。
「構わんが、どこだ?」
「地図でいうと……あ、ここよ、ここ」
キャスは地図の一点、町のマークを指差す。
王都とウエストバリーの間、ウエストバリー寄りに大体3分の2ぐらいの位置にある町――名前は『ビクスビー』。
「この町に何かあるのか?」
「ダンジョンよ、ダンジョン」
「ダンジョン?」
「そう!」
キャスが言うには、ビクスビーはダンジョン探索の拠点としてその筋では結構有名な町で、一度行ってみたかったんだそうだ。
ビクスビーはダンジョンの探索、産出物の取引、冒険者と商売人のやり取り、商売人同士の駆け引き……そういうので発展した町――つまりは、ダンジョン都市マーセンと同じ系統の町という事だ。
ただマーセンのダンジョンとは異なり、ビクスビーのダンジョンは『洞窟型』らしい。
なんでも大昔は鉱山だったとかで、採掘の途中で元々ダンジョン化していた魔物が湧き出す洞窟と繋がってしまい、鉱山は閉鎖――後にダンジョンとして探索される様になったという経緯らしい。
名前は『地竜の巣穴』――後の調査で地竜の鱗や爪などの化石が発見された事から、地竜の巣穴だったのではないかと仮説が立てられ、そのまま名付けられたそうだ。
「やっぱり冒険者はダンジョンでしょ!」
キャスの目が光っている。
確かに、元日本人、そしてファンタジー好きの俺にも『冒険者といえばダンジョン!』という感覚はある。
だから、キャスの提案に否はない。
「よし、行くか。ビクスビー」
「そうこなくっちゃ!」
寄り道だが、どの道ウエストバリーへ行く途中で立ち寄る町なのだ。
そこでダンジョン探索というのも悪くない。
という訳で、ウエストバリーの前にビクスビーを目指して王都を出発――と、そこでふと思いつく。
「なあ、キャス。折角だから飛竜便で行かないか?」
俺はキャスに提案した。
フッとフラン支部長と一緒に乗った飛竜の事を思い出したのだ。
俺1人なら自分で空を飛んでいく手もあったが、キャスがいる以上、抱えるにしろ魔法で浮かせて運ぶにしろ手間がかかる。
その点、飛竜なら金さえ出せば目的地まで運んでもらえる。
そして金は余っている。
なら、キャスさえ良ければ飛竜便を使わない理由はない訳だ。
「えっ!?マジで!?高いわよ飛竜便!?」
「金は余ってるから大丈夫だ」
「おおー!じゃあ行く行く!いや~いっぺん乗ってみたかったのよねえ飛竜!」
キャスがメチャクチャウキウキしている。
ここまで喜ばれるのは、誘った側として悪い気はしない。
「ねえ!早く行こ行こ!」
「ああ、分かったよ」
はしゃいでるなぁ、まるで遊園地のアトラクションを前にした子供みたいだ。
まあ、言ったら怒って騒ぎそうだから言わないでおくが。
さておき、飛竜便を使う事が決まったので、王都の端の発着所に向かう。
フラン支部長と行った道を思い出し、賑わう通りを抜けて発着所に到着――空いている飛竜を見つけてそこの騎手に声をかけた。
「2人、いいですか?」
「はい、お2人様ですね」
若い男の騎手が笑顔で応対してくる。
前に会った騎手とは別の騎手だ。
前の彼は、今日は見る限りいない様だ。
まあ、いいか。
「どちらまで行かれますか?」
「ビクスビーまでお願い」
「ビクスビーですね、畏まりました」
キャスが行き先を告げると、騎手は飛竜を伏せさせ、俺達に乗る様に促す。
「どうぞ、お乗りください」
「お先!よっと」
素早く縄梯子を登るキャス。
相変わらず身軽な奴、不安定なはずの縄梯子をああもスルスル登るとは……。
さて、俺も――
「ほっ」
「うお!?」
キャス、お前、驚き方それでいいのか……?
俺がやったのは、前に見たフラン支部長の真似――ジャンプしてダイレクトに席に乗り込むアレだ。
ちゃんと風魔法で着地の直前に衝撃を緩和したが、フラン支部長ほど自然には出来なかった。
「アンタ、凄いことするわねぇ……!」
「そうか?フラン支部長もやってたぞ?」
「軽く言うな!王都のギルド支部長と同じなんて凄いことに決まってんでしょっ!」
それもそうか。
「え、ええっと……あ、安全の為、命綱はしっかりと結んでくださいっ」
御者席に登った若い騎手が、気を取り直すようにそう言った。
あれ?
既視感?
「そ、それでは出発します!」
まあいいか。
騎手の手綱の合図で、飛竜が羽ばたき、空に飛び上がる。
すぐにスピードが上がり、高く昇っていく。
相変わらずの風圧、今回は風魔法による相殺で目を守る。
「うお~~!速~~い!!」
周りや下を見ながら、キャスがはしゃぐ。
「キャスは飛竜便初めてなのかぁっ?」
「そりゃあそうよっ!(元)Dランク冒険者程度じゃあ、飛竜便なんて高くて使えないわよっ!」
確かに普通の馬車の10倍以上の運賃じゃあ、稼ぎが少ない内は乗ろうとは思わないか……。
「飛竜なんてそれこそ一生縁がないかとも思ってたけど、人生って分からないものよねぇ~!ジロウと組んでからホント退屈しないわぁ~!」
組んだというか、無理矢理組んできたというか……まあ、細かい事は置いておくか。
なんのかんの、俺もキャスと組んでいる認識はあるし、今の状況を悪くないとも思っているしな。
一人旅が1番だと思っていたが、やっぱり少しずつ変わっているな、俺……。
そうして暫く空の旅を楽しんでいると――
「間もなくビクスビーに到着しまーす!」
騎手が声を掛けてきた。
前を見ると、それなりに高い山とその麓に広がる町が見えた。
あれがビクスビーの町、という事はダンジョンはあの山の地下か。
「これより着陸体勢に入ります。着陸の際は衝撃がありますので、しっかりとお掴まりくださーい!」
そう言うと、騎手は手綱をクイと引く。
次いで飛竜が高度を緩やかに下げ始めた。
体、というか内臓が浮く様な不思議な感覚が、過去に数回乗った飛行機を思い出す。
フラン支部長と乗った時は、状況も状況だったし、一定緊張感があってこういう感覚をここまでじっくり味わう余裕はなかった。
「う、ぉ、ぉぉ~……!なんか、お腹の中が浮き上がってるみたいで、なんか、ムズムズするぅ……!」
キャスも初めての感覚を楽しんでいる様だ。
そのまま飛竜は、やはり町の端の開けた場所に着陸する。
少ないが他の飛竜と騎手もいるので、どうやらここが発着所になっている様だ。
「到着でーす!」
「着いた~!よっと!」
完全に止まった飛竜からキャスが飛び降りる。
俺もそれに続いた。
「はぁ~面白かった~!」
キャスは初めての飛竜に満足した様だ。
「じゃあ、お代はこれで」
「えっ!?あっ、は、はい!ご利用ありがとうございましたっ!」
正規料金に騎手へのチップを加えた枚数金貨を渡すと、騎手は俺と金貨を二度見した後、満面の笑みで腰を90度曲げてきた。
さて、支払いも済んだところで――。
「先ずどうする?冒険者ギルドか?」
「そうね、早く着いたし、先にダンジョンの情報も仕入れらとしますか」
という訳で、先ずは冒険者ギルドに行く事に決まった。
発着所から町中へ移動する。
空から見えた限りでは、都市という程大きくはない町だと思ったが、やはり降りて入ってみると結構大きい町だと思える。
道を歩く人もまあまあ多いし、露店や店舗もチラホラ出ている。
歩く中で多く見るのが武器・防具を身に付けた冒険者らしき老若男女、流石はダンジョン探索の拠点というところか。
さて、適当に人にギルドの場所を――
「ねえ、おじさん。冒険者ギルドどこ?」
早いな、キャス。
気付けば、簡素な作りの露店のおっさんに声を掛けている。
「おう、お嬢ちゃん他所から来た冒険者かい?」
「そうよ。ダンジョンに潜りたくてね」
「ああ、やっぱりな。教えてやってもいいが、1つでも買ってくれよ。そしたら教えてやるよ」
商売人らしいおっさんの言葉だが、表情や声色や仕草に嫌味が感じられないので、情報料代わりに売り上げに貢献するのも悪くないだろう。
「え~、しょうがないわねぇ」
キャスも同じ様に感じたからか、商品を眺め始める。
店に並んでいるのは、乾物ってやつか。
魚や肉、それにドライフルーツ、こっちは野菜を干したものか……むっ、あれは!?
「おっさん!そこの黒緑色の奴は、もしかして海藻か!?」
そこにあったのは、籠の中に入れられた、細かくて、黒緑色で、縮れている海藻の乾物ーー乾燥ワカメによく似た代物だった。
「おっ、あんちゃん知ってるのか」
「何?何なのこれ?」
キャスは知らないらしい。
おっさんは乾燥ワカメ(仮)の籠を手前に引っ張ってくる。
「こいつは海に生える水草の一種で『シーウィード』っていうんだ。そいつを適当な大きさに切って干した物さ」
「水草?そんなの美味しいの?」
「俺が食った事があるヤツは、それ自体にはあんまり味は無い。だがツルッと舌触りが良くて、癖がないからスープやサラダに入れるとイケるぞ」
一人暮らしの時はよく味噌汁に入れて食ったものだ。
水で戻してインスタントラーメンに入れたりもしたな。
「おおっ、あんちゃん、やっぱ知ってるな!その通りさ!」
「へぇ、こんなのがねぇ。黒っぽくてパサパサで、あんまり美味しそうには見えないけど……」
「今はカラカラだからな。水や湯で戻せば濃い緑色に変わるんだ。日持ちもするし、食べ方も簡単な上に栄養も豊富だから、重宝するぜ」
「ふ~ん」
どうもキャスは興味が薄い様だ。
「何より、こいつは昔から肌や髪を美しくするって言われていて「買ったぁ!」――うお!?」
メッチャ食いついたな、キャス……。
現金なヤツ……。
結局、キャスは2袋、俺も1袋乾燥シーウィードを買い、冒険者ギルドの場所を聞いてそちらに向かった。
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