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転校うさぎ〜初登校
しおりを挟む暑さがまだまだ続いてる十月一日。
「ひゃぁあああーーーー!!」
私は餅月うさぎ。両親の都合でど田舎の辺境島から東京に出てきたのです。何が嬉しくてこんな人混みゴミしてるところに仕事しに行くんですかぁー!
もぉー!電車とかこっち来るまで使ったこともなかったし、テレビで見る摩訶不思議なでっかい箱だと思ってたのに、めっちゃ混んでるし立ってる人みんな懸垂してるし怖いんですけどー!?
学校がある近くの駅に着いたみたいで、集団に流されて無事にホームを抜けて改札まで流された。
仕組みは訳わかめだけど皆やってるようにカードをかざせば扉が開いたから急いで同じ制服の流れに乗る。
これなら余裕っ
と思ったら、皆自転車乗って行っちゃったよー!?はぁぁ?まだ行くの!?遠くねぇ??
あらやだ心の中でも口調乱れちゃうわ。
とりま走って追いかけるしかないよね!
島一番の自慢の走りで自転車集団を追いかける。すると何番目かの曲がり角で誰かが急に出てきてぶつかりそうになる。
「あっ、んっ!??」
とりま跳躍で三メートルくらい跳び上がってクルクル二回前回りで着地する。
フランスパンを加えた筋肉だるまとぶつかりそうになったけど、ぶつかってないしセーフだよねっ!
自転車集団から遅れかけたので「ごめんねっ」と振り向きザマに言って、また追いかけ始めた。
ぶつかってないがビックリして、フランスパンを加えたまま尻餅をついた筋肉だるまは暫くうさぎの走っていった方を見つめていた。
「水色と白のシマシマ(ブフォアッッ)←鼻血」
校門が見えてきた。
「ヤバイよヤバイよ遅刻遅刻ぅうっ!」
ギリギリ門をくぐり抜けると後から先生が急げーと声をかけるのが聞こえた。
跳躍で玄関の階段を跳び越え、二歩走り、跳躍しながら下足を脱いで着地して内履きに履き替える。
院照めがね(いんてりめがね)の静止を振り切り、職員室までダッシュすると、ちょうど職員室から花弁舞男(はなびらまうお)が出てきてこちらもぶつかりそうになるが、うさぎは後方宙返りで難を逃れる。
「君は、転校生の餅月うさぎさんかい?」
「はい、そうです!遅くなってすみません!」
無駄にキラキラシャララーンという効果音がつきそうな仕草の男性が、うさぎのクラス担任らしい。
「もうすぐホームルームが始まるから、私に付いて来たまえ!」
バッと指先まで力を入れて腕を振るう花弁の後ろをうさぎは(四十後半の王子様気取りかっ!)と内心ツッコんで恥ずかしそうに付いていった。
茂部もぶこ「今日転校生来るってさー!」
和木わきこ「男子かなー?女子かなー?」
法螺ほらお「知ってるしー。女の子だって」
宇和雨わさお「女子、是非ともお友達からお願いしたいでござる」
「おはよう諸君、席に着きたまえ。今日からこのクラスに入った餅月うさぎさんだ。皆仲良くしたまえ。餅月さん、自己紹介をお願いする」
「はい!ど田舎の辺境島から転校してきました。餅月うさぎです!今日からよろしくお願いします!」
「餅月さんの席は、クラス委員長の隣が空いてるね。そこに掛けてくれ」
うさぎは空いていた席にかける。左隣はなんか見たことがあった。
「俺は筋肉だるまと言う。クラス委員長をしているから、何でも聞いてくれ」
まさかのパンきんにくんキターー!!
「もしかして、今朝ぶつかりそうになった方ですか?」
「あ、あぁ、そうだな(赤面)」
「大丈夫だと思って行っちゃったんですけど、怪我とかなかったです?」
「大丈夫だった。(俺が逝っちゃったんですけど!)」
「良かった~」
「ところで⸺」
「話中悪いが、一、二時限目が体育だから、みんな着替えて体育館に集合だぞ」
「そうだった。女子は隣のクラスの女子と一緒にこの教室で、男子は隣のクラスの男子と一緒に隣の教室で着替えるのが(暗黙の)ルールでな。じゃあ後で」
はぇーーー!朝から体育とかハードだしー!
登校であんなに動いたのにこの学校鬼畜だよー!
「餅月さんも着替えよう!」
「体操服持ってきてる?」
「持ってきたよ!心配してくれてありがと!」
「私茂部もぶこって言うの!」
「私は和木わきこよ。よろしくね」
「よろしくねー!着替えたら一緒に体育館行ってもいい?」
「もちろんよ」
「やったー!」
島じゃ小中一貫校だから、同級生なんて居なかったし、同い年の友達やったね!
体育館についたら、他のクラスの生徒もいた。四クラス合同でやるらしい。
今日はクラス対抗バスケで、準備体操をしたら、体育館の横半々に別れて試合するようだ。
私たちのクラスの対戦相手は印照めがねくんがクラス委員長らしい。始めはお互い委員長率いる真面目チームでの試合のようだ。
ブザーが鳴り、試合スタート。筋肉だるまくん率いる真面目マッスル集団が余裕でゴールを決めていく。終了間際には筋肉だるまが片腕でロングシュートを決めてスリーポイント獲得した。パンゴリラにキュンときちゃった。
次は女子チーム。私も交ぜてもらっての小柄っ子チーム対、今にも折れちゃいそうなひょろ長いっ子チームだ。
ブザーが鳴りひょろ長チームがボールを持つ。シュートを決められそうになったので、跳躍で空中でボールを奪うと、茂部さんに一旦パスしてまた受け取る。あとは一気にドリブルしながら持ってってダンクシュートーーー!
こんな感じで私がコートを走り回って点を稼いで次のチームへ交代となった。
最終的に私のクラスが圧勝勝ちして終わった。島じゃもうちょっと張り合いのある試合ができてたから、都会っ子はもやしっ子かな?大変だなと思ってしまった。
三時限目の国語、四時限目の数学を受ける。筋肉だるまくんに分からないところを聞きながら板書する。途中、消しゴムを落としてしまい、右隣の宇和雨わさおが拾おうとする。瞬間、ブンッという音と強い風が巻き起こり、消しゴムはうさぎの右手に握られていた。凄まじい身体能力を駆使し音速で拾ったようだ。もちろん誰にも見えておらず、軽くざわざわしただけに終わった。
「話しかける隙がないでござる。これがモブ系男子の性でござるか……」
昼休み、この中学校は給食じゃないのでみんなお弁当やパンを持ってきていた。
給食があると思って持ってきてなかったので、生徒玄関近くに購買があると教えてもらい、急いで買いに行く。階段を跳び越え、空中で身体をひねって後ろ向きで着地し、また階段を跳び越えて廊下を走る。
「危ないよ!待ちなさい!」
前から隣のクラスの院照めがねが立ち塞がっていたので、壁側に避けて立ち止まる。すると院照めがねはドンっと左手を壁につきうさぎと向かいあう。
「あなたは隣のクラスの委員長さん?何か用ですか?」
「今朝廊下を走っていたのは君だよね?それに今もまた走っていて危ないじゃないか!ご飯を食べ始める時間だからといって、誰も歩いていないわけじゃないんだ。ぶつかったりしたらどうするんだ!」
「ごめんなさい……。島じゃいつもこんな感じでも何か言われたことなかったから、当たり前なのかと思ってた」
「いや、謝ってほしいんじゃないんだ。君に怪我をされたら悲しいからな…(赤面)。引き止めてすまなかった。これからは走らずに移動してくれ」
「はい!気を使ってくれてありがとう!」
そうしてうさぎは走らずに、スキップで購買へと向かって行った。それでいいのか??!
院照めがねは今朝うさぎとすれ違った際に、ちらりと翻ったスカートの隙間から下着が見えたことを考えていた。
「水色と白のシマシマ(タラリ……)←鼻血」
その後はお昼を食べて午後の授業も受け終わり、帰ろうかなぁと仕度していると、和木わきこが話しかけてきた。
「餅月さんは部活とか興味あるの?」
「部活?何それ?」
「えっ!餅月さん部活知らない!?野球部とかサッカー部とか、皆で集まって活動する事だよ!私たちは吹奏楽部で楽器を吹いてるの!」
「島にはそういうの無かったから、皆で集まるってやるとしたら運動会とか海へ遠足に行ったりとか、あとはお父さん達が仕事終わって帰ってくるまで適当にグラウンドでキャッチボールしたり追いかけっこしたりするくらいだったよ~!」
「そうなのね。それじゃあ体験入部でもした方がいいわね。けど今の時期ほとんど活動を控えてるからムズかしいわね」
「えぇ?何かあるの?」
「二週間後、学園祭があるから、みんなクラスで準備したり、ステージ発表や展示発表する部活は忙しそうにしてるのよ」
「因みにうちのクラスはコスプレ喫茶をやるの!コスプレ衣装は各自で準備して、当日は来た人から注文を受けて、飲み物やクッキーを提供するの!」
「餅月さんも衣装の準備をしなきゃね。それでも食べ物は既製品でいいからもう準備が終わってて、飾り付けは来週の放課後で十分間に合うからやることって特にないのよね。餅月さんのコスプレ衣装買いにいく?」
「いいの!!?コスプレ?衣装着たことないからやってみたい!」
「それじゃあ私が買ったとこのお店連れてくね!三人で行こう!」
そうして三人は茂部もぶこ案内のもと、秋葉原にあるアニマルメイド喫茶御用達の服屋へ向かった。
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