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「ちょっと顔貸せや」
突然泣き出したイノシシ女が今度はキレて、俺は家の外に強制連行。玄関に背を預けた俺は目の前のイノシシ女を見下ろした。
泣いて目を真っ赤に腫らして、俺を睨みつけてくるそいつは、新入生の中でもピカイチに可愛いと評判の女子生徒。まぁ、うん、可愛い顔はしているんじゃないか、俺のタイプでは全くないが。
「――よくもやってくれたわね……」
「なんの話?」
罵られたときはなんのことだかさっぱりわからなかったが、大体予想がついた。どうせ、尊につけたキスマークにでも気づいたんだろう。
早くもマーキングの効果が発揮されたってわけだ。
「すっとぼけないでよ……うッ、うぅ~っ」
「お、おい、泣くなよ」
感情の起伏が激しいやつだな……。
「イケメン先輩でしょ、みっくんのココにキスマークつけたの」
ココ、とイノシシ女は自分のうなじを指さした。
「だったらなんだよ」
「――みっくんと、付き合ってるの?」
おい、敬語が完全に消えてるぞー。
これでも先輩なんだけど。
と、そんなことはどうでもいいんだが。
あまり聞かれたくない所をつつかれて、俺は「お前に関係ないだろ」と投げやりに返す。
「――ふーん、付き合ってないんだぁ」
ニヤリと笑うイノシシ女に、俺はイラつきを顔に出さないように平静を装った。
「付き合ってないなら私にだってまだチャンスはあるわよね」
イノシシ女め……。
調子に乗りやがって。
そっちがそうくるなら、こっちだって手加減してやんねぇ。
「お前さ、キスマークつけただけで終わると思ってる?」
「なっ……」
今度は俺が笑う番。
「悪いけど、尊のハジメテ(のキス)は俺がもらったから」
「は、は、はぁぁぁ⁉」
俺の言葉をどうとったのかは知らないが、顔を真っ赤にさせて絶句するイノシシ女に畳み掛ける。
「ま、せいぜい頑張れよ、幼馴染さん」
もうこれ以上こいつに付き合う必要もないと思い、俺は玄関を開けて家の中に入った。
ドアが閉まった後、外で「むきーーーー!」と負け犬の遠吠えならぬメス猿の雄叫びが響き渡った。
近所迷惑だっつーの。
*
「――な、なにがどうなったの……」
突然泣き出したひよりが中条を引っ張るようにして部屋から出ていくのを見送った俺と姉ちゃんは、しばらく唖然とした後二人で顔を見合わせ首をかしげた。
「なにがなんだかさっぱり……」
「ひよりん大丈夫かしら」
え、そっち心配すんの⁉
どっちかっていうと、中条の方が俺は心配だけど……。
あのひよりのどすの効いた声を思い出して背筋が震えた。
女子って怖い。
「まぁ、好き合ってるんだから大丈夫じゃないか」
「え? 好き合ってる……? あの二人が?」
「うん、そう」
あの二人以外に誰がいるんだよ、と姉ちゃんに内心突っ込むが、姉ちゃんは目を丸くさせ口をぽかんと開けて俺を見る。せっかくの美人が台無しだよ、姉ちゃん。
「えっとー……、それ、誰情報?」
「俺情報」
「……うん、そっかそっか。尊には、あの二人が両想いに見えてるってことね?」
「そうだよ」
「どうしてそう思ったの?」
さっきまで中条の衣装合わせで立っていた姉ちゃんは、俺の隣に座り興味津々に体を寄せてきた。
どうしてって……。
「だって、俺とどっちかが二人で居るとすごい文句言ってくるし、全力で阻もうとしてくるんだよ、それはもうすごい勢いで」
俺の観察力を舐めないでほしい。
姉ちゃんは、納得したのか、「な、なるほど……なるほどね……、そうなるのか」と一人でなにやら繰り返し呟いている。
「でもさ、顔を合わせれば口喧嘩ばっかで、ツンツンが過ぎるんだよあの二人。どうしたらデレると思う?」
「う、うーん……、そうねぇ……デレないのは好きじゃないから、っていう可能性もない?」
「いやいや、それはないだろ。だって、じゃないと説明がつかないじゃん、二人の行動の」
「じゃぁ聞くけど……、この跡の説明はつく?」
つん、と姉ちゃんの指先が俺の首筋に置かれた。
このあとの説明?
何のことだ。
「あ……、もしかして気づいてなかった?」
「なに? なんの話?」
「ここ、鏡で見てみなさいよ」
言われて俺は、クローゼットのドアについている姿見を覗く。ここ、とつつかれた感覚を頼りに首をひねって見ると、身に覚えのない虫刺されの跡があった。
「あれ、いつ刺されたんだろう?」
でもかゆくないな。
そこをさすってみるも、膨れてる様子もない。なんかしたかな、こんなとこ。
なんて思ってると、姉ちゃんが盛大にため息を吐くから、俺は「なんだよ」と睨みつけた。
「……それさ、虫刺されじゃなくて、キスマーク」
「きすまーく……? ……あぁっ!」
その意味を理解して、更にさっきのあれを思い出した俺は羞恥で体温が急上昇。
嘘だろ……。
誰か嘘だと言ってくれ。
そしてキスマークを姉に見つかった俺の今の気持ちを誰かわかってくれ!
しかもその相手が男だということまで鑑みて、だぞ。
「いやぁ、まさか、可愛い弟がキスマークつける日がくるなんてねぇ……
お姉ちゃん、なんだか感慨深いわぁ」
「うわわわ! 姉ちゃん、違うんだよ。中条は俺じゃなくてmiccoを」
「――やっぱり相手は佑太朗くんかぁ~」
墓穴掘ったぁー!
もう全部が恥ずかしすぎて姉ちゃんと目を合わせられない。
突然泣き出したイノシシ女が今度はキレて、俺は家の外に強制連行。玄関に背を預けた俺は目の前のイノシシ女を見下ろした。
泣いて目を真っ赤に腫らして、俺を睨みつけてくるそいつは、新入生の中でもピカイチに可愛いと評判の女子生徒。まぁ、うん、可愛い顔はしているんじゃないか、俺のタイプでは全くないが。
「――よくもやってくれたわね……」
「なんの話?」
罵られたときはなんのことだかさっぱりわからなかったが、大体予想がついた。どうせ、尊につけたキスマークにでも気づいたんだろう。
早くもマーキングの効果が発揮されたってわけだ。
「すっとぼけないでよ……うッ、うぅ~っ」
「お、おい、泣くなよ」
感情の起伏が激しいやつだな……。
「イケメン先輩でしょ、みっくんのココにキスマークつけたの」
ココ、とイノシシ女は自分のうなじを指さした。
「だったらなんだよ」
「――みっくんと、付き合ってるの?」
おい、敬語が完全に消えてるぞー。
これでも先輩なんだけど。
と、そんなことはどうでもいいんだが。
あまり聞かれたくない所をつつかれて、俺は「お前に関係ないだろ」と投げやりに返す。
「――ふーん、付き合ってないんだぁ」
ニヤリと笑うイノシシ女に、俺はイラつきを顔に出さないように平静を装った。
「付き合ってないなら私にだってまだチャンスはあるわよね」
イノシシ女め……。
調子に乗りやがって。
そっちがそうくるなら、こっちだって手加減してやんねぇ。
「お前さ、キスマークつけただけで終わると思ってる?」
「なっ……」
今度は俺が笑う番。
「悪いけど、尊のハジメテ(のキス)は俺がもらったから」
「は、は、はぁぁぁ⁉」
俺の言葉をどうとったのかは知らないが、顔を真っ赤にさせて絶句するイノシシ女に畳み掛ける。
「ま、せいぜい頑張れよ、幼馴染さん」
もうこれ以上こいつに付き合う必要もないと思い、俺は玄関を開けて家の中に入った。
ドアが閉まった後、外で「むきーーーー!」と負け犬の遠吠えならぬメス猿の雄叫びが響き渡った。
近所迷惑だっつーの。
*
「――な、なにがどうなったの……」
突然泣き出したひよりが中条を引っ張るようにして部屋から出ていくのを見送った俺と姉ちゃんは、しばらく唖然とした後二人で顔を見合わせ首をかしげた。
「なにがなんだかさっぱり……」
「ひよりん大丈夫かしら」
え、そっち心配すんの⁉
どっちかっていうと、中条の方が俺は心配だけど……。
あのひよりのどすの効いた声を思い出して背筋が震えた。
女子って怖い。
「まぁ、好き合ってるんだから大丈夫じゃないか」
「え? 好き合ってる……? あの二人が?」
「うん、そう」
あの二人以外に誰がいるんだよ、と姉ちゃんに内心突っ込むが、姉ちゃんは目を丸くさせ口をぽかんと開けて俺を見る。せっかくの美人が台無しだよ、姉ちゃん。
「えっとー……、それ、誰情報?」
「俺情報」
「……うん、そっかそっか。尊には、あの二人が両想いに見えてるってことね?」
「そうだよ」
「どうしてそう思ったの?」
さっきまで中条の衣装合わせで立っていた姉ちゃんは、俺の隣に座り興味津々に体を寄せてきた。
どうしてって……。
「だって、俺とどっちかが二人で居るとすごい文句言ってくるし、全力で阻もうとしてくるんだよ、それはもうすごい勢いで」
俺の観察力を舐めないでほしい。
姉ちゃんは、納得したのか、「な、なるほど……なるほどね……、そうなるのか」と一人でなにやら繰り返し呟いている。
「でもさ、顔を合わせれば口喧嘩ばっかで、ツンツンが過ぎるんだよあの二人。どうしたらデレると思う?」
「う、うーん……、そうねぇ……デレないのは好きじゃないから、っていう可能性もない?」
「いやいや、それはないだろ。だって、じゃないと説明がつかないじゃん、二人の行動の」
「じゃぁ聞くけど……、この跡の説明はつく?」
つん、と姉ちゃんの指先が俺の首筋に置かれた。
このあとの説明?
何のことだ。
「あ……、もしかして気づいてなかった?」
「なに? なんの話?」
「ここ、鏡で見てみなさいよ」
言われて俺は、クローゼットのドアについている姿見を覗く。ここ、とつつかれた感覚を頼りに首をひねって見ると、身に覚えのない虫刺されの跡があった。
「あれ、いつ刺されたんだろう?」
でもかゆくないな。
そこをさすってみるも、膨れてる様子もない。なんかしたかな、こんなとこ。
なんて思ってると、姉ちゃんが盛大にため息を吐くから、俺は「なんだよ」と睨みつけた。
「……それさ、虫刺されじゃなくて、キスマーク」
「きすまーく……? ……あぁっ!」
その意味を理解して、更にさっきのあれを思い出した俺は羞恥で体温が急上昇。
嘘だろ……。
誰か嘘だと言ってくれ。
そしてキスマークを姉に見つかった俺の今の気持ちを誰かわかってくれ!
しかもその相手が男だということまで鑑みて、だぞ。
「いやぁ、まさか、可愛い弟がキスマークつける日がくるなんてねぇ……
お姉ちゃん、なんだか感慨深いわぁ」
「うわわわ! 姉ちゃん、違うんだよ。中条は俺じゃなくてmiccoを」
「――やっぱり相手は佑太朗くんかぁ~」
墓穴掘ったぁー!
もう全部が恥ずかしすぎて姉ちゃんと目を合わせられない。
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