世界最強の俺は正体を明かさない ~眠れる獅子のもがれた牙が生えるまで~

ケムケム

文字の大きさ
49 / 55
初仕事

48 反対派

しおりを挟む
 「ハッ!」

 「来『ストーーーップ』い………」

 2人はいきなりのストップにキョトンとして、声の発生源を見ると、それはレベッカ先生であった。

 「ちょっと2人とも! 朝言いましたよね? 今日は初めてだから軽くって。何で本気でやってるんですか。周りにも迷惑でしょ」

 レベッカ先生に言われ周りを見ると、2人は周りに迷惑をかけていたことに気づく。いつの間にか2人は中央で組み手をしており、6ペア分位の広さを使っていた。

 2人はお互いを見て、やってしまったと反省をした。

 「あははは、つい集中しちゃって。でもまだ本気じゃないぜ先生」

 「これはほんの準備運動だから」

 (これでまだ全力じゃないというの? 今の戦いで既に1年首席クラスの実力位あるというのに)

 レベッカはこの2人に、可能性を感じ内心嬉しかった。だかレベッカは先生である。

 「全く……… 今日のところは2人とも見学です。端で大人しくしていなさい」

 「「はーい」」

 珍しく聞き分けのいい2人だ。

 (あら? 今日はやけに素直ね)
 
 何故なら、今日からまともにクラブ活動が始まる。下手に逆らって放課後に雑用を押し付けられては、堪ったものでないからだ。

 「ったく。お前が遠慮しないからだ」

 「ファーゼンがそれを言うか? 今日はお前の胸を借りるぜ、とか言ってたくせに」

 またそこで喧嘩のような取っ組み合いが始まり、闘技場の端に行くのに時間がかかるのだった。

 「さっさと行きなさい!」

 「「はーい」」

 (本当にどうにかなんないのかしら……… でも凄いわ。今年の学院祭はうちのクラスが優勝できるかもしれないわ。そしたら優勝クラス担任のお祝いとして、またドミニクさんとお食事でも………)

 「また始まったな」
 
 「あぁ、レベッカ先生のくねくねダンス」

 レベッカのくねくねダンスはいいとして、ここで重要なのは学院祭である。クラブ対抗戦とは違い、学院祭はクラス同士で競い合う。各学年の優勝クラスには、学年代表として学年対抗戦への出場権が得られる。そこで優勝すると、最優秀クラスに選ばれ、クラス旅行に行けるらいしのだ。修学旅行がないこの世界では、一大イベントなのである。

 
 「暇だな~」

 「何すっかな~」

 闘技場の端で2人は、暇そうにクラスメイトを眺めていた。特に目ぼしい者は見つからず、欠伸をしていた。そこに

 「あら? 私たちの戦いからは学ぶものがないとでも言うのかしら?」

 想い人に見てもらえないことが癪だったのか、アイリーンはエリックに声をかける。カマをかけたとも言う。

 「別にそういうわけじゃないけど、だってアイリはどっちかっていうと魔法系だろ? どうせ魔法ならゴッ『バカー』………ん?」

 アイリーンが大声を上げたためもあるが、珍しく声を荒らげているアイリーンに驚き、クラス中の視線が集まる。

 「い、いえ何でもありません。皆さんは続けて下さい」

 そう言われれば、ずっと見ている訳にもいかず、それぞれに訓練を開始する。

 「あのねエリック。ゴッドジャベリンも一応秘匿軍事魔術の1つよ。そう易々と口に出されると困るのよ」

 アイリーンが以前ヒュドラ選で使ったゴッドジャベリン。ヒュドラに大したダメージは与えられなかったものの、Aランクモンスターをも瞬殺する破壊力有することから、秘匿軍事魔術に登録されていた。となると、何でアイリーンはその魔法を使えるのかという疑問になるが………

 「何でアイリーンはそんな魔法を使えるんだ? 公爵家令嬢と言えど、簡単に教えてもらえるもんでも無いだろ?」

 「ええそうね。でも、女性は秘密が多いほど魅力的なものでしょ?」

 違う? とアイリーンは少し挑発するように尋ねるが、エリックには伝わらない。頭の上にクエッションマークが浮かんでいた。

 (このお子様め……)

 「はーい。皆ちゅーもーく」

 授業時間が少なくなってきた頃に、レベッカはクラスに号令をかける。

 「最後に皆には、ひとまず目指してもらう目標として、エリックとファーゼンの模擬戦を見てもらいます。それで今日の授業は終わりにしたいと思います。それじゃあエリック君、ファ『待って下さい!』ゼン君……… ギール君どうしたの?」

 そう声をあげたのは、冒険者クラブでファーゼンに負けたギールだ。ファーゼンは再戦を挑まれるのかと思い、笑を浮かべる。だがそうでは無かったようで

 「どうやら2人のデモンストレーションに反対の者がいるようですよ」

 ファーゼンが指を指したのは、さっきエリックたちを睨んでいた男だ。

 (何でこっちに振るんだよ、クソが!)

 決まりが悪くなったのか、ウルザードが前に出てきた。
 
 「だって普通誰もが思いますよ。何でそいつらなんですか? 入学試験の成績も分からないし、それに遅れて入ってきたんですよ。それなのに何でコイツらが手本なんですか?」

 誰から見ても、ウルザードはエリックたちを僻んでいるようにしか見えない。さっきの一戦を見れば、エリックとファーゼンは手練だということは、誰だって一目でわかる。

 傍から見ても、この男が2人を僻んでいるようにしか見えない。故にクラス内のウルザードの評価はダダ下がりだった。

しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜

舞桜
ファンタジー
「初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎」  突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、 手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、 だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎  神々から貰った加護とスキルで“転生チート無双“  瞳は希少なオッドアイで顔は超絶美人、でも性格は・・・  転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?  だが、死亡する原因には不可解な点が…  数々の事件が巻き起こる中、神様に貰った加護と前世での知識で乗り越えて、 神々と家族からの溺愛され前世での心の傷を癒していくハートフルなストーリー?  様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、 目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“  そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪ *神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのか?のんびりできるといいね!(希望的観測っw) *投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい *この作品は“小説家になろう“にも掲載しています

不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる

六志麻あさ
ファンタジー
異世界に召喚され、魔王を倒して世界を救った少年、夏瀬彼方(なつせ・かなた)。 強大な力を持つ彼方を恐れた異世界の人々は、彼を追い立てる。彼方は不遇のうちに数十年を過ごし、老人となって死のうとしていた。 死の直前、現れた女神によって、彼方は二度目の人生を与えられる。異世界で得たチートはそのままに、現実世界の高校生として人生をやり直す彼方。 再び魔王に襲われる異世界を見捨て、彼方は勇者としてのチート能力を存分に使い、快適な生活を始める──。 ※小説家になろうからの転載です。なろう版の方が先行しています。 ※HOTランキング最高4位まで上がりました。ありがとうございます!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

処理中です...