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反抗期

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勇者一行が帰還した日の夜。

釈放されたはずの勇者は牢屋にいた。
「おいだせよー!!おれはゆうしゃしゃまだぞー?うぃー」
1人のなんか悲しい人が牢屋で叫んでいた。
「あの、あれどうしましょうか…」
「勇者があんなやつだったとは…。いや、待て。もしやあれは偽物なのではないか…?」
ヒゲを生やしたエラそうな人が、心底がっかりした後、思いついたように言うが
「いえ、あの人が身につけているものは勇者にしか装備できないと言われた伝説の飾り。
それに勇者の証もあります。残念ながら間違いないかと…」
近くにいた青年が即否定した。
「そんな、私の憧れが…」
その年で勇者様に憧れるなよと心の中で思いながら、青年は色々なことに溜息を吐きつつも
再度上司を見上げると、
「…あれは勇者じゃない。ただの罪人だ…うん」
なんか悲しそうにボソボソ言っていた。
「おーい!!!早く出せよ!!!!俺が誰かわかってんのか!!???パパとママに言いつけんぞ!!!俺のパパとママは強いんだからナーーー!!!!!!」
その一言でおじさんも踏ん切りがついたようで。
「黙れ!!貴様のせいでどれだけの人に迷惑がかかりそうになったか!!わかっているのか!?」
近くに潜んでいたネズミがビックリしてひっくり返るくらいの大声で怒鳴りだした。
「うるせー!!俺はゆーしゃだぞー??ちょっと闇金に手を出したくらいいーじゃねーか!!!!」
なんか、プチっと言う音がした。
「フィール」
彼はそう言うと、青年はどこからかファイルを取り出し紙に書いてあることを読み上げた。
「はい。一度非正規の金貸業者とのやり取りを目撃され、事情聴取を受けた結果、私的な趣味に費やした金と発覚。その後大賢者グレイ様により軟禁《・・》されましたが、反省せずに脱走。今度は別の業者と接触しているのを目撃され、その時口止めのために軽い暴行を行いました。因みに彼が関わった通称『闇金』は反社会勢力であり彼の巨額な返済によって活動が活発化する恐れがあるため、
彼は反社会勢力に加担したと見ても誤りではないでしょう」
「大丈夫?長文疲れたろ?作者がまとめるの下手でごめんよ。水飲むかい?」
エラそうなオジサマは右ポッケに突っ込んでいたボトルをフィールに渡すと、再びギッ!とそれだけで人を殺せそうなくらいベレスを睨む。
「で、これのどこか正義の行いなのかね?」
マンガだったら背景にゴゴゴゴゴ…と出てきそう。
「うるせー!死人が出てないんだからいーだろー!」
フィールくんはもう一度ファイルに目をやり、
「たしかに暴行を受けた人も軽症ですが、もし取引があのまま成立してしまった場合、予想される被害総額は、白金貨10万枚分はゆうに超えます。10年かけて魔王を倒した勇者様ですらもらえたのは白金貨100枚のようですし、勇者様が旅路で稼いだ額は合計で白金貨が30枚と伺いました。
まぁ、つまりかんたんに言うと単純計算約7700年かけて770回魔王を討伐すれば借金は完済と…あー。でも、膨れ上がる分を考えると1万年くらいかなー」
「お前計算早いな」
なんかドンドン性格が酷くなってる気がするけどスルーします。
「けっ。それをどうやって返せっつーんだよー。そんなことより酒もってこいさけー。おりゃあ…なぁー…zzz」
「ちっ。寝たか。…自由気ままな奴め。本当に此奴が勇者なのか…?違う気がするのだが…」
「…僕も信じたくないです…」

2人で仲良く溜息をつくと、彼らは控え室へ戻った。
その場に残ったのは気持ち良さそうに寝る
ボンクラ勇者の寝顔のみである。
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