分析能力で旅をする ~転生した理由を探すためにレインは世界を回る

しき

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第四章

第41話『魔王の気配』

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肌を刺激しそうなほどに暑く、風邪をひきそうなほどに湿気が高い中、青空の下で活発に開かれている商店街の通りを歩いている。左右からはがなる声が聞こえ、ときどき耳が痛くなる。

今日は街を探索する日だ。このヨプト街にはどんな施設があるのかを調べつつ、必要に応じて買い物もする予定である。幸い時間には追われていない。詳細は後々にするとしても、どこに何があるかだけ把握できれば、今日はそれで満足しようと思っていた。

魚屋。氷漬けで新鮮度を保たれた大きな魚が並んでいる。小さい魚はたらいのような生簀いけすや、ガラス張りの水槽で泳いでいるのが分かる。やはり港街だから、魚屋は見える範囲だけでも五軒ほどある。進めばまた別の店が現れるに違いない。

八百屋。魚屋と同様に、新鮮度を保つために野菜類は氷が当てられ、果物類は氷水の入った入れ物で冷やされている。果物は特に見ているだけで美味しそうだった。ただ魚と比べると随分と高値である。潮の近い港では駄目になりやすいのかもしれない

雑貨屋。一口に雑貨屋といっても、販売している商品の種類は、店によって異なる。ある店ではブレスレットやイヤリングなど、装飾品ばかり売って、またある店では壺や花瓶などの入れ物ばかり売っている。土産品にはちょうどいいかもしれないが、私には土産を渡す相手がいない。

服飾店。あった。今日の目当てのお店だ。

さっそく中に入り、狭い店内を探索する。街行く人の着ている通り、半袖で風通しの良いものや、遮熱性の高そうな肌を覆うものばかりだ。どれも中々奇抜なデザインが多い。もっとシンプルに単色のものはないかと一つ一つ吟味する。すると本当に隅っこの方に、単色で茶色の地味なものがあった。…これは昨日見た奴隷服だ。

目当ての店に眼鏡に適うものが見つからないでいると、店の人に声をかけられた。細めの男で、店に陳列されているのと同じような、派手な服を着ている。

「お嬢さん、何か欲しいものでもあるのかね?」

「えっと…あんまり派手すぎない、袖が長い、動きやすいものが欲しいかな」

そう言うと店の男は辺りの商品を見渡した後に、随分と悩ましい表情のまま返事をした。

「ここにゃ売ってないけど、あるにはあるけど、うーん」

「あるんだ。一回見せてもらってもいい?」

「あぁ、まぁ、見せるだけね」

歯切れの悪い受け答えで、私を手招きして、店の奥へと消えていった。そのままついていき、暖簾をくぐると、もっと服があるのがわかった。店頭で並んでいたものよりも、見た目は私好みである。しかし値段がついていない。一体どういうことだろうか。

「これらはね、冒険する人から安く買い取った品物なんだけど、その人らによると、曰く付きの服なんだよね」

「曰く付き?」

「んあぁ。なんでも着ると、体が痺れる感覚になったり、軽いはずなのに岩石を持っているかのように重く感じたり、あとは魔物を呼び寄せているっていう噂のものも」

にわかには信じられない話だけど…俗に言う呪いの服、というものに近いのだろうか。



【名称】マリオネットケープ
【成分】ホワイトキルト/ブラックゾンビの皮膚
【属性】地
【破損】-
【効果】硬直

【名称】トランスパーレントドレス
【成分】レース/マッドハンド
【属性】地
【破損】-
【効果】水属性軽減/諸刃

【名称】ブラッドローブ
【成分】グリーンシルク/ドラゴンの血
【属性】闇
【破損】-
【効果】火属性軽減/魔物接近



…間違いない。これは呪われた服だ。単色でなんの害もなさそうではあるが、確実に効果がある代物だ。

「実際にさ、ウチが確かめたわけじゃあないんだけど、けど本当にそうなら闇雲に売り渡すことはできないからさ。これでもお客さんから信頼を得て商売をしているつもりだから」

流石にこんなものを買うような真似はしないかな…。私の場合はこの分析スキルで判るからいいものの、これが無い人にとっては石橋を叩くことすらできないはずだ。道理で店の男も勧めるのを渋るわけだ。

とはいいつつ、滅多に見られる機会もないから、一通り見るだけ見ようかな。赤、青、黄…色々あるな。これ、全部人間が作ったものなのかな?こんな危険なものを作るなんて考えられないけれど。それともたまたまできちゃったとか?だとしたらどうして処分しなかったんだ。いや、できなかったとか?呪われている物ならそういうのもありえる。



【名称】ルインズローブ
【成分】ブラックシープ/魔王の血
【属性】闇
【破損】-
【効果】全属性軽減/[種族:人間限定]魔王憑依



なんだこれ…人間限定の効果?そもそも服を着るなんて人間以外いない気がするけど。いや、それよりも、魔王憑依ってなんだ?とてもおどろおどろしい効果だ。それに見合うようなメリットもある。憑依っていうのがどういったものを指すのかによるけれど…。

…待てよ。

これ、私が着たらどうなるんだ?

一応見た目上私は人間だけど…。私は[転生者]だ。はじめの頃は気にしていなかったけど、転生者って果たして種族として認知できるのか?いやまぁ、分析スキルがそう言ってんだから間違いはないんだろうけど。でもじゃあ、この服を着ても、この効果は私には適用外、ということになるのか?

「まぁ、だからオススメはしないよ。よけりゃ店頭のものを買ってくれない?」

店の男の言葉を半分に聞いて、目の前のルインズローブなるものをじっと見つめる。正直実際に着るとなると怖いけれど…元より失うものがない身だ。試さずに今後危険に陥るより、試して危険に陥ってしまったほうがいいのかもしれない。

「これ、買ってもいい?」

「っはあぁ!?嬢ちゃん、買うのかい!?」

まさか買うとは思わなかったのか、店の男の目は飛び出そうなくらいに開いていた。じっと疑いの目を向けてくるから、私は黙って頷き、指さして改めて購入の意思を示した。

「そこまで言うなら止めないけど…ウチも責任負いたくないから、小銀貨1枚でいいよ」

「え、本当?」

「その代わり、やっぱり返すってのはナシだからね。手放したくなったら、別の所で売るか捨てるかして頂戴」

こくりと頷いて小銀貨を店の男に渡し、飾られていたルインズローブを手に取った。触り心地はなんら変ではない。匂いを嗅いでも…特別厭な匂いもしない。本当に呪いの効果がある服なのかと段々疑念が膨らんでいく。

いや、でもここで試着するのは危険だ。下手したら周りに危害が及ぶ可能性だってある。もっと誰もいない草原とか、洞窟の中で試したほうが絶対にいい。

購入したルインズローブは見せないものによって丁寧に畳まれて、私の両手の上に乗った。ありがとう、と言って、そのローブを一旦マジックバッグの中に仕舞ってから、店から出た。

購入したはいいものの、使い物にならない可能性も視野に入れなければいけない。ただここの店じゃあまり買いたくなるようなものは売っていなかった。魚屋が至るところにあるのだから、服飾店だって至るところにあってもおかしくない。

それでまた通りを歩き、キョロキョロと店を探していた。すると前方の方に見覚えのある姿があり、それは通りから外れ、港の方へと姿を消していった。

あれは…リンネ?
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